連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

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天使のホワイトデー 後編

寝て起きてもホワイトデー! ⑨

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♢24♢

 俺が見たかったチンアナゴを含む、サンゴ礁の海エリアを制覇。クリオネのいた親潮アイスボックスエリアも制覇。
 これで残すは潮目の大水槽。こいつがルシアさんを連れてこようと思った一番の理由であり、この水族館最大にして最強のエリアだ。

 その大水槽の辺りに無数にいたバカップルも今は数を減らし、2階に人はちらほらとしかいなくなった。
 理由は12時を過ぎ、昼時になったからだと思われる。混む前にみんな、レストランに行ったのだと思われる。

「すごい。本当に海の中にいるみたい」

 これを見越していた俺の勘は見事的中し、俺たちは貸切に近い状態で大水槽を満喫している。
 そして、ルシアさんが今言った『海の中にいるみたい』と言う発言も、あながち間違いではない。

 潮目の大水槽はその名の通り、黒潮と親潮とが合わさるところを再現している。
 実際の海のように本当に海流が合わさるわけではないが、それを再現した大水槽は左右に水槽が2つ存在している。

「上向いて、魚を下から見れるのはここだけだろう。横から見るのが普通だからな」

「そうね。こんなふうに広いところを泳いでる魚たちを見たのは初めて。海の中ってこんなふうになってるのね」

 大水槽は全長で8メートル。一番上は4階まで到達している水槽なので、見上げることが普通になる。
 魚たちも思い思いに水槽内を泳いでいるもんだから、かなり海の中が再現されている。
 マジで本物の海に近いと言っておこう。

 もちろん、それだけではデカイだけの水槽になってしまう。スゴイのはここからだ。
 左右にある大水槽には三角トンネルというのが採用されていて、なんと2つの水槽の中を通ることができるんだ。
 そのトンネルからは右を見ても左を見ても視界全部が水槽。全部が海だ。

「これは何度見ても圧巻だな。マグロが泳いでる姿なんて俺は初めて見たよ。 ……マグロ食いたいな」

 マグロといえば寿司かな。
 いいなー、昼は寿司食いたいなー。
 レストランが混んでるのは分かりきってるし、寿司かな。高いけど。

「ねぇ、あの平べったいのはなんて魚?」

 1人水槽内の魚を美味しそうだなと思っていると、まじめに水槽を観察していたらしいルシアさんから質問がきた。

「エイだな。何エイかは分からないけどエイだ。あいつ、あのまま来ると上通るな。泳いでるエイを下から見る機会なんてないだろうから見ておくべきだな」

 なかなか見れないレアな姿なはずだ。
 ダイビングでもしないと見れないだろうからな。
 それが見れてしまうのも、ここのいいところだ。

「……」

「……笑ってたわね」

「いや、笑ってたわけではないと思うよ? ああいう顔なんだよ。エイは」

 俺たちの真上を右から左にエイが通っていったんだが、口部分がどう見ても笑っているように見えた。
 ああいう顔なんだろうとは思うけどね?
 もし行ったり来たりしたら、『人間共がまた見てやがるぜ? へっへっへ』って言ってるんじゃないかと思われるよ。やめたほうがいいぞ。

「あっ、戻ってきた」

 左に行ったはずのエイが旋回し……仲間を連れて戻ってきた。1匹が3匹になって帰ってきた。で、再び俺たちを見下すようにニヤケながら泳いでいった。
 その顔はやはり全員が笑っていたな。これさ、仲間を呼んで笑いにきたと受け取っていいのかな?

「あいつ。わざとやっているのかな……」

「今、あたしたちしか下にいないしね。わざとなんだとしたら、少しイラッとするわね」

 まあ、考え過ぎだとは思うけどさ。
 あの顔がムカつくのはムカつくな。

「エイ以外にも魚はいるからな。他のやつを見よう」

「そうね、そうしましょう。 ──?!」

 アザラシくんもだが、ムカつく奴が多い水族館だ。
 海獣や魚にムカついても仕方ないんだけどね。

「──ちょ、ちょっと?!」

 思ったよりエイにムカついているのか、ルシアさんが水槽から目を離さずに、俺の肩を掴みゆすってきた。

「どうした、エイなら向こうに行ったぞ?」

「あれはもういいから! 今、大きいやつに小さい魚が食べられたんだけど?!」

 エイではなかったようだ。命びろいしたなエイよ。
 食べられた小さい魚というのはイワシか何かだな。パクっといかれたのが衝撃的だったようだが、俺からすると今更だ。これまでもちょこちょこ見かけたし。

「そりゃあ食べられるだろう。食物連鎖の再現ってのもこの水槽の売りだからな。大きいカツオとかマグロは小さいイワシを食べ、小さいイワシは更に小さいプランクトンを食べしているわけだ」

「──大丈夫なのそれ?!」

「とはいえ餌は貰っているから大丈夫だろう。しかし、中には腹ペコキャラなやつがいて、餌の時間まで我慢できずにパクっとしただけだろう。割とよくあることだと思うぞ?」

「……」

「本当の海もそうやって成り立ってるわだから! 腹ペコなやつも、いなくなるほど食べやしないって! 気にすんな!」

 この後、必死に食物連鎖について説明した。
 何故ならランチに関わる重要な案件だからだ!
 水族館内のレストランとかは魚がメイン。この程度のことで引っかかって、昼抜きは辛いからだ!


 ※


「ハァハァ……食物連鎖は納得したな?」

「認めたくはないけどね。それが世界の仕組みだというならそうなんでしょう。そうして私たちは生かされているのね」

「そうだ。感謝して美味しくいただけばいいんだ」

「人は食べなければ生きられないなんて……」

 1人世界観が違うことを言っているが、これなら大丈夫だろうか?
 箱入りの姫に、人のエゴは理解されたのだろうか……。

「ところでルシアさんや。さっきの、なんか買ってくれるってやつ。あれ、決めたんだけどいいかい?」

「何もお店を見てないけど? それともこれからお土産屋さんにいく?」

「違う違う。お昼ご飯を奢ってくれればいいんだ。俺たちも、そろそろお昼にしよう」

「ああ、そういうことね。レストランは1階の海が見えるところって言ってたわよね。素敵だと思ってたの。早速行きましょうか」

 確かに。あの海が見えるレストランは、デートには外せない場所だ。
 メニューも豊富だし美味しいし。
 初めは俺もレストランでと思っていた……──しかし、今の俺は寿司が食いたんだ! 昼は寿司と決めたんで!

「いや、1階にはいかない」

「……はぁ?」

「実は大水槽の近くにも一軒、お食事できるところがあるんだ。そこに行きたい。大水槽見ながらお寿司食べたい」

 このトンネルの向こう側。そこに大水槽を一望できるお寿司屋さんがあるんだ。
 時価とかではなく値段が付いている寿司屋だが、1回しか行ったことがない。
 何かを奢ってもらえるというなら、間違いなくこれが最善の選択だと思われる!

「お寿司って確か……」

 先ほどの観光物産センターで寿司屋の前を通った際に、ルシアさんに聞かれ、寿司とは何かを説明していたのだ。物覚えのいい彼女なら覚えているだろう。

「──そう、魚の切り身がのったご飯だ!」

「──あんた正気?!」

「正気も正気だ! レストランに行ったとしても魚介のメニューがほぼ全部だぞ? 寿司とどう違う! 加工されているかいないかほどの違いしかないではないか! というわけで寿司食べたい」

「無理、絶対無理! 生きてる魚を見ながら魚を食べるとか正気を疑うわ!」

「そんなこと言い出したら、水槽から出して捌いてする寿司屋も山ほどあるぞ? 慣れろ、美味しいから」

「──絶対にイヤ!」

「回らない寿司屋なんてなかなか来れないし、奢ってもらえるなんて機会はないんだ。俺は譲らん! それとも。何でも買ってくれるって言ったのは嘘だったのかな? まさか、一国のお姫様が嘘ついたりはしないよねーー」

「ぐぬぬぬぬっ……」
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