連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

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天使のホワイトデー 後編

後日談にはやっぱりラスボスが潜んでいる! ②

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 ハラハラしながらテストに臨み、気が気でない時間を過ごし、学校が終わるなり速攻で帰宅。
 今日はかつてないほどの緊張感でテストに取り組んだ。かえって集中力は高まり、点数は高くなった気がする。

「──アマテラス、余計なことはしてないな!」

 部屋を見渡しても朝から変化はない。タブレットの位置も変わりない。
 下にミカが今日もいて一愛いちかとゲームしていたが、アマテラスのことは知らないのか何も言わなかった。

『おかえりなさい。何もしてないよ? というか、何もしたくないよ?』

 そういうところは変わらないのかと安堵したが、ならば善は急がなくてはいけない。
 爆弾は爆発する前に返却しないと。

「ならいい。早速だがどっちかのラスボスに繋げ! お前を返却したい。クーリングオフ期間があるはずだ!」

『そんなのないよ。まず買ってないしね。それにアマテラスは売り物じゃないよ!』

「──いいからやれ!」

『むーーっ、マスターは忙しいって。例のあの人が出るって。珍しい。繋がるよー』

 ラスボスだろうと言うことは言わないといけない。デスらない程度に。
 直接会わないならバトルには発展しないだろうし。

『そっちから連絡してくるとは思わなかったよ。何の用だ。プロデューサー殿』

 女の人。それも今ので分かるくらいにキツそうな感じ。
 これは下手なことは言えないな……デスる。

「アマテラスを返却したいんですが。あとタブレット返して」

『──何? わざわざ時間を使ってタブレットを改造したのにか? 何が気に入らない。10文字にまとめて言え』

「全部だ! 3文字ですんだな!」

 下手なことは言えないが、犯人が判明したからには言わなくては! どういうつもりでこんなふざけた真似を!

『……めんどくさいからヤダ。タブレットなら新しいのを買え。アマテラスの返却は認められない。私からは以上だ』

「──勝手なことを言ってんなよ! こんな爆弾いらない! 返却できないならぶっ壊すぞ!」

『そんなことしてみろ。ブッ殺すぞ、小僧……』

 ラスボスは息を飲むくらいにおっかないです。タブレットの画面上でもアマテラスの顔が怖いです。
 そんな2人の反応を見て、やっぱり意味もなく物を壊してはいけないと思いました。

「すいませんでした。でも、なんとかならないっすかね?」

『ダメだ。それは褒美だ。返されては面子が潰れる。可愛くしてやったんだから可愛がってやれよ』

「しかし、爆発したら……」

『そんな機能は付いてない。何の心配だ』

 物理的な爆発ではなく、社会的な爆発だと伝えるにはどうしたらいい。
 アマテラスの口がもう爆弾なんだと言ってもいいのか? アマテラスを娘くらいに思ってそうでこわいんだけど。

「アマテラスは口が悪いじゃないすっか。うっかり変なことを口走られと困るというかなんというか」

『それは小僧の影響だろう。主人がそうだからアマテラスもそうなんだ。貴様が改めれば済む話だ』

「あんたじゃなくて?」

『──なんだと?』

 うっかり軽口も言えない! デス率が上昇する。
 あと、画面の中のアマテラスがむくれてる。
 頬を膨らませすげー睨みつけてきている。

「じゃあ聞き方を変えますけど、敵に塩送っていいんですか? 聞いてますよ。あんたは世界が変わるのを快く思ってないって。そんな人が世界を変えようってヤツに力を与えて、足元すくわれないですか」

『敵に塩を送るか。言葉としてはその通りだが、それが単に親切心からだと思うか? 私にも利はある。その言葉の元になった逸話もそうさ。建前だけでなく本音が存在したはずだ。でなければ、敵を助けるような真似をしやしない』

「敵ですか。そう思ってんのにアマテラスを俺に?」

『敵は敵だが利用できる敵だ。実際、こないだの茶番は見事だったぞ。あれでは進まなくてはならないからな。停滞は楽だがいつまでもは続かん。どこかで前か後ろに進まなくてはならない。後ろに進むのは簡単だ。来た道を戻るだけだからな。しかし、前に進むには道が必要だ。しかし、その道を作るのは手間なんだ。それを勝手にしてくれるヤツに、王たる私が力を貸すのは当然だろ』

 停滞が今なら、後退は過去。つまりは戦。
 そして前進が俺が目指すところ。
 この人は前に行くなら行くで構わないってことか。
 舐めやがってー、王だと? 王様だって言うなら自分でやりやがれってんだ! ……んっ?

「つかぬことをお伺いしますが、そちらはルシアママですよね?」

『ああ、娘が世話になっている。すでに分かっているものと思っていたが、今更だな。誰も教えてくれなかったのか?』

「ママが王様? パパじゃなくて?」

『どちらでも構うまい。今のは言葉のあやだ。かつては私が王だったのは確かだがな』

 構うよ。すっげー、重要なことだと思う。
 ルシアママはママになる前は女王様だったと。王様と結婚して今の王様が王様になったと。

 ──ここまではいいな?

 で、天使と悪魔の戦いをなんやかんや治めたのが今の王様でしょ。そうなると、ルシアママは天使か悪魔どちらかの王様だったわけでしょ。

「ルシアママのお名前は……」

『ルシファー。かつては天使であったが頭のおかしい神によって追放され、地に堕ち、奈落の底の悪魔と手を組み世界を変革せんとした、いわば小僧の先駆者というわけだ』

「……聞かなかったことにしていいですか? マジでラスボスじゃん」

『なんだ。予想できてなかったのか? 意外と大したことないな。分かりやすいヒントがいたろうに。っと……長話し過ぎだな。じゃあな、プロデューサー殿』

 わかるわけねー。そして分かりたくもなかったね。
 こっからどうするのよ。ミカエルのおっさんが本物というなら、ルシファーも本物だよね。

 自称とか偽とか付かない? つかない? 本当に?
 んーーっ、帰りたいな。どこにかって?

 ──平和な日常にだよ!

 なんでアマテラスという爆弾を抱え、ルシファーなんて言うラスボスと戦わなきゃなんねーんだよ!
 そういうのは異世界転生して勇者とかになった人にやらしてよー。パンピーには無理だって。

『ご主人様、アマテラスに謝って! でないと、いらやしいことされたってお姉様とかみんなに言ってやるんだから! マスターにも言うし!』

 ほらー、爆弾がもう爆発しそうなんだけど。こいつはシャレにならないんだって。
 真偽以前にそんな発言がもうダメなんだってー。

「──ちょっと、これは何!? どっからホワイトデーのこんな映像が出てんのよ! 責任者。説明しなさい!」

 何故だか、とっても怒っておられるお姫様がクローゼットから現れた。手にはアマテラスのビットを持っていて、そこにはアマテラスが勝手に撮影したきわどいホワイトデーの時の映像と、俺が知らないホワイトデーの時の映像とが流れている。

「それはアマテラスが勝手に……」

『お姉様。それはご主人様に言われて仕方なく撮ったの。今流しているのもご主人様の指示。全部、ご主人様がやらせたのーーーー!』

「嘘をつくなーー!」


 ※


 この後、この映像はホワイトデーの時くらい異世界中に流れていて、プロデューサーの許可が正式に出ていると知った。
 お分かりだと思うが、きわどい映像を撮られていた2人の姫からは折檻され、ガブリエルさんには呼び出されて長々と説教された。

 この惨状をもたらした爆弾とは、この先も付き合っていかなくてはならず大変なのに。
 きわどい映像に惹かれて、いやらしい野郎たちが城下に大量発生したりして、プロデューサーとしても大変になる。

 先は見えないが、前へは進んでいく世界。
 その舵取りをしなくてはならない責任者である俺。もう名前を出したくもないラスボス。例のあの人。
 この先を考えると、誰か代わってくれるなら代わってほしいと思う今日この頃です。
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