Sランク狩人の狩り飯事情 エピソード0

KZ

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その9

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 駆け出しのパーティとサポートの先生一行は、昼ではなく夜に獲物を仕留めるべく、街を夕方に出発した。
 昼間では今の彼らには手に余るとサポートが判断したためだ。それは間違っていない。
 だが、ここを田舎と言っていたサポートは侮ったのだ。ゴリアテという怪獣を。

「……ゴリアテ?」

 私はガンナーの女の子を背中のカゴにいれ、割と全速力で移動している。時間が経ち彼女が落ち着いてきたので、何があったのかを聞き始めた。
 なお、移動中に喋ったところで特に問題はない。

「ゴリアテは私たち人間と同じ祖先を持つ。それが進化の過程で枝分かれすることで、生き物はその種類を増やす。我々人間の祖先はサルと呼ばれるものだ。そのサルもかつては相当種が存在していたらしい。その中で環境に適応し、生存競争に打ち勝ち、残るのはわずかな種類だがな。人とは違う進化の過程を得て、今なお存在するサルが怪獣ゴリアテだ。ヒト上科サル目……なんだったか……。気になるなら図書館に行くといい。最も、図書館にはAクラスからしか入れないのだが」

「はぁ……」

「一般的に大きい奴はゴリアテ。小さい奴はゴリラという。覚えたまえ。奴らは発達した腕で掴み握り潰す。パワーという点ではここらではナンバーワンだな。弱点は額。と、そのくらいはサポートは知っていたはずなんだがな……」

 標的の動きの鈍い夜に仕掛けたわけだから、そのくらいのことは知っていたはずだ。
 あの大剣男も先生とサポートを慕っていたようだし、連携ミスや単独プレーが原因とも思えない。

 彼女はゴリアテに弾き飛ばされ真っ先に気を失い、次に気が付いたら誰もいなかったと言った。
 彼女はそうして気を失い目覚めて、辺りを探し回るも誰もいないことにとり乱したが、ふとあることを思い出した。

 行きに遠目から見た採取中の私の位置を思い出して、そこから私がいるだろうところを予測して助けを求めにきた。
 街に連絡をつけるより早く、その方が確かだと彼女は思ったらしい。彼女は私をそう見ていたわけだ。

「そういえば今日は何の仕事だったんだ?」

「ゴライアス。ゴリラの討伐です」

 確かに、ゴリラはゴライアスとも呼ばれるな。
 ゴライアスはゴリアテの別称であると聞いたことがあるが、同じものだし特にこだわりもないが……。

「──何? ゴリアテは討伐に含まれないのか?」

「はい。だから、あれを見たときは腰を抜かしてしまいました。あんな大きな生き物がいるだなんて、この目で見ても信じられないくらいです」

「徒党を組むのは普通なことだが、それならゴリアテこそが討伐の対象になるはずだがな。仕事として出ていたなら下調べはあっただろうし、その辺の協会の体制はちゃんとしている。ゴリアテこそが原因なのか?」

 彼女が顛末を見ていないと聞いた時点で、彼女から手に入る情報には限りがあると思ったが、討伐対象外のゴリアテの出現が事の次第ということでいいのか?
 対象しきれずにパーティが散り散りにだろうか。

「この辺りだな。戦った痕跡がある。大きな生き物がいたのは確かだな。しかし、キミは仲間がどっちに行ったのかが分からず、出来ることをしたわけだ」

「はい……」

 彼女の行動を1人で逃げたと非難する者もいるだろう。パーティメンバーを見捨て、自分だけは逃げようとしたと。
 パーティが全滅でもすれば非難だけでは済まない。
 だが、1人逃げるようなヤツならば私のところにはこない。仲間を見捨てたのならその場所に戻りはしない。

「心配するな。逃げたなどと私は言いはしない。キミの判断は間違っていない。私が保証しよう」

 しかし、ゴリアテは派手に暴れたらしく、平原ではどちらに行ったか判断しにくい。
 私たちが来た方は除外していいが、それでも広い。

 サポートは後衛職。ならば遮蔽物を求めるか。
 弾変えにも立ち回りにも、遮蔽物は有効。なら、岩の多い東側か。

「パーティは前衛2人の後衛2人。盾持ちが抜けて前とは1人変更。そこにサポートのあの男も後衛。そこから後衛が1人抜けて、パーティの配分は変わらず……分からないな」

「──えぇ!? わ、わからないんですか?」

「こう暗くてはな。だが、それならそれでやり方を変えるだけだ」

「何を──」

 私は矢を3本空に向かって放つ。
 放った時点ではただの矢だが、それは途中から姿を変える。

「──えっ、矢が鳥になった?」

 彼女が言うように矢であったものが、赤に鳥に姿を変え3方向に飛んでいく。

「これで少し待とう。反応があるはずだ」

「はい……じゃなくて! 今のなんですか!?」

 背中から今のを見ていた彼女には、タネも仕掛けもないことがバレている。
 驚かれようと普通なら誤魔化すところだが……。

「技能と他には説明しているが、この場でそう偽ってキミが私を不審がるのは下策か。今のは俗に魔法と呼ばれるものだ。かつては多くの人が扱えたものだが、今や使えるのはわずか。私はそのわずかのうちの1人」

「魔法。魔法を使う弓使い……魔弾?」

「必中の魔弾とはよく言ったもので、その実は魔法による弾道操作が必中のわけだ。ああ、勘違いしないでもらいたいが、普通に弓を使う分には普通に撃っている。魔弾は魔弾。弓は弓ということなので──」

「──魔弾の射手!? アナタ、魔弾の射手なんですか!?」

「自ら名乗った覚えはないが、その二つ名で呼ばれる事が多いな。それがなんだ?」

「えぇーーーーーーーーーーっ!?」
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