異世界無宿

ゆきねる

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第十四章 運び屋稼業も楽じゃない

第百八十二話 何故か原初魔族が来た

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イズミが馬車置場へ戻ると、カーネリアが誰かと話をしている。
隣にいるベリアの表情が完全に固まっているのが分かる。

「2人とも待たせた」

「あらイズミさん、お久しぶりですわ」

2人の目の前に居たのは魔獣の森にてお世話になった、原初魔族のルノさんだった。

「ご無沙汰しております。本日はどの様なご要件で?」

「私の友人から、大切な卵を人間に盗まれたと相談がありまして…昨日泥棒を連れてきたハーピー達から話を聞きましたら、イズミと名乗る男が助けてくれたと」

どうも泥棒商人を連れたハーピー達は超特急で帰った結果、疲労困憊で暫く動けないらしい。
そこで、報告を受けたルノが様子を見に来たとの事だ。

「そう言う事でしたか」

「私が卵と彼女を連れ帰っても良いのだけれど、それだとこの国との関係が悪化するでしょう?」

全てを魔族側が解決してしまったら、この王国としての対応の遅さが取り騙される。
まだ事の詳細を国王は把握しきれていないのに、魔族から突き上げを喰らう事になる。
それは流石に国王が気の毒ではある。

「流石に危険な時は私が転移させますが、問題が無ければイズミさんが直接運んだ方が良いでしょう」

「勿論、そのつもりです」

ルノがイズミの左手を見る。

「良い宝石を付けた魔道具ですね」

「ありがとうございます、これのお陰でコッチでも会話が出来てます」

「宝石にお酒をお供えすると、良い事があるかもしれませんよ?」

ルノはそう言いつつカーネリアの頭を撫でる。
カーネリアを少し話をした後、帰ろうとしたのでイズミが引き止めた。

「ルノさん、少々お待ちを」

魔獣の森でもお世話になったので、今回も手土産を渡そうと思ったのだ。

マスタングに頼み酒と菓子類を実体化させる。
今回はマスタングのセレクトしたものだ。

トランクを開けると、竹で作られたカゴが入っている。
中身は2種類の酒とクッキーにチョコレート、更にはガラス瓶に入った金平糖まである。

この世界基準ならば、かなり豪華な手土産になるのではないだろうか?

「ルノさんには感謝してもしきれませんからね。これは私からの感謝の印です」

「あら、ありがとうございます。この前戴いたお酒と、新しいのもあるのですね」

カゴごと受け取ったルノは、感謝の言葉を述べ何も無い空間にスッと消えて行った。

「…取り敢えず、魔族側には卵が無事である事は伝わっているようだな」

イズミが両手を腰に当てて呟くと、放心状態だったベリアが復活した。

「イイイイ、イズミ!…さっきの方って」

「原初魔族のルノさん。以前縁があってね、知り合いって程度だけども」

「原初魔族って…信じられねぇ、会った瞬間に死を覚悟したぞ」

ベリアの尻尾はまだブワッと膨らんだままだった。

「そうだ、昼には出発しよう。俺個人が冒険者ギルドとは相性が悪くてな、なるべく早く離れたい」

そう言って2人に出発の準備を促した。
イズミが身に付けているバングルの石が僅かに輝いた事に、誰も気が付かなかった。



「只今戻りましたわ」

魔王が住まう居城の広間に、ルノが出現した。

「…どうだった?」

「昨日から尋問をしている人間族の商人の話と一致してましたわ。後は卵を盗むに至った経緯と目的、関係者の名前を供述してくれれば良いのですが」

ルノは竹カゴから酒瓶を取り出すと、魔王の元へ近付く。
魔王の手元にあるグラスに氷を作り出し、馬と騎手を冠したキャップを外し美しい琥珀色の酒を注いだ。

「ほう…ブラントンか」

「頂き物ですわ…貴男、このお酒を知ってるの?」

「大分昔の話だ、気にするな…」

グラスを手に取り一口飲む。

「うむ。この香りと味わい…懐かしいな」

酒瓶を受け取った魔王は、自らグラスに注ぎもう一杯飲む。

「イズミと言う男に、私も会いたいものだ」

「今度一緒に会いに行きますか?彼は私達が作った魔石を所持してますから、転移魔法で直ぐにでも」

「あの石か…では今度一緒に挨拶にでも伺うとしよう」

魔王の隣にルノが座り、肩に頭を預ける。

「私も戴いて良いですか?」

「勿論だ」

魔王とルノの密かな楽しみとなっている事に、イズミが気付く事は当分無い。
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