異世界無宿

ゆきねる

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第二十四章 暴走を止めろ

第四百三話 打ち合わせ

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翌朝。
イズミが目を覚ますと、何故かしっかりと布団がかけられていた。
ベッドから上半身を起こすと、見慣れた服ではなく寝間着になっている。

寝間着に着替えた覚えも無ければ、布団に入った覚えも無いのだ。
テーブルの上を見ると綺麗に畳まれた衣服が置かれている。

「…誰かに迷惑をかけたみたいだな」

旅路ではあまり剃れておらず伸び始めた髭を軽く撫でると、ベッドから出て何時もの服に着替えるとショルダーバッグから髭剃りセットを取り出した。

部屋を出ると井戸へと向かい水を準備し、馬車置き場で手鏡を使いながら髭を剃ってゆく。
泡立てた石鹸でも剃り方が下手で少し血が滲んでしまったが、髭剃りセットに入っているミョウバン石を傷口に軽く擦り込ませ止血する。
少ししみる。

「よし、これでサッパリだ」

「僅かに剃り残しがあるようですが」

「両刃カミソリ初心者なら十分だろ」

水で顔を洗うと、久しぶりに人間へ戻ったような気分になった。
自分には髭が絶妙に似合わないと思っているのも、理由の1つにはあるのかもしれない。

「イズミ、居るか?ちょっと話しが」

「どうした」

「朝一番で冒険者ギルドから連絡があってさぁ…髭剃ったんだ」

「似合ってなかっただろ?」

「見慣れた」

装備を身に纏ったベリアが、腰に下げたナイフを木箱に置いてため息をつく。

「アタイをSランク冒険者にするか否かで、お上が揉めてるんだとさ」

「Aランクになってそんなに時間も経っていないが、Sランクの魔物を討伐した実績があるからな…」

「そもそもSランク冒険者自体が少ないってのに。登録情報ではソロの冒険者がAランク昇格してから短期間でSランク入りの審議に入っただけでも、色々な所で話題になるんだよ。特に貴族の間では」

馬車置き場の天井を見上げるベリアだったが、どうも複雑な心境のようだ。

「貴族が圧力をかけたとして、そんな簡単にSランクに出来るものなのかね?」

「さぁ…ギルドもかなり慎重になってる。貴族の突き上げが激しい時点で何か目的があるに決まってるし、Sランクにした途端に貴族が冒険者パーティーを抱え込みに動いた実例も多々あるからな」

「仮にベリアがSランクになったとして、抱え込みに動きそうな貴族は誰になる?」

「そんな物好きは居ないだろうけど」

そう言いつつベリアはイズミに視線を向ける。

「イズミと一緒だと話は変わるな」

「またそれか」

イズミはラムネを実体化させると、ベリアに手渡した。
他に10本程ラムネが入っているカゴも実体化されたので、後でアーリアに魔法通信で話をしよう。

「ありがと。そもそもアタイのAランクだって、イズミと旅路を共にしてるからってのも理由にあるようなもんだし」

「ベリアの居る所にイズミなる無宿人ありってか?ギルドや貴族間ではもう、秘密裏に実質Sランクとかって扱いになってたりして」

「ありえそーで怖い」

「別視点の人間からも話を聞いてみるか」

アーリアに魔法通信を繋げたイズミは、早速話を切り出した。

「アーリア、突然で恐縮だが…最近俺達の噂話は入ってきてるか?」

「当然」

「ラムネを用意したのだが、一度コッチで話せないか」

「分かった、直ぐに向かうわね」

程なくして、転移魔法でアーリアがやって来た。

「御足労頂きありがとう御座います」

「そんなに畏まらないでよ…ラムネありがと」

アーリアはラムネを受け取ると、自分のアイテムボックスに収納する。

「キマイラを討伐して、オブリビアの異変を発見した。それと教会関係者の品を発見、近々調査が入るまでは聞いてる。調査は難航しそうだって話よ…後は」

アーリアは木箱でまったりとしているベリアを見つめる。

「ベリアさんがキマイラ討伐の功績として、Sランク冒険者へランクアップをさせるべきではないかと、複数の貴族から声が上がってるくらいかしら」

「やっぱりか~」

「元々Sランク冒険者と言うのは常に政治に利用される存在よ。その抜きん出た実力故に権力者は友好関係を築きたいし、願わくば手元に欲しいと思うものよ。よく聞く話でしょ?実力ある冒険者に爵位と領地を授けて、戦力の国有化をする」

「アタイは獣人なんだけど」

「ハルハンディア共和国なら、なんの問題も無いわね。ジェヴェドール王国も騎士爵を受勲する事は獣人でも有り得る…冒険者としての仕事は受けにくくなるけどね」

ラムネを飲み終えたベリアが空き瓶をイズミに返すと、地面に胡座をかいてナイフを膝の上に置いた。

「そうだ、2人は教会のオブリビア調査に同行依頼を受けてないの?」

「まだ教会の関係者と話は出来てないからな」

「グールが出たとなるとゴースト、リッチが居る可能性もある。並の戦力では調査は困難な場面も出てくるから、調査に同行をしてくれないかって頼まれると思う…ちなみにだけど教会もギルド関係も、有力者とは仲良くしておくと何かと便利よ」

「持つべきものはサツの友、みたいな感じか」

「サツの友?」

「気にしないでくれ、コッチの話しだ」

アンデッド類の魔物を完全無力化する術は持っていないので、頼まれても素直には頷けないが。
そう自己分析をしていると告げると、アーリアは事も無げに言いきった。

「光か聖魔法が有効ね…教会に頼むかマスタングさんに作ってもらえば、解決するんじゃない?」

「成る程ね」

イズミはラムネを飲みきると、マスタングの意見も聞く事にする。
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