アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

355 まさかまさかの

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 「加勢します!」

襲われてたのは移民っぽい人たち。すぐに加勢したんだ。高齢の‥‥うん、お爺さんにお婆さんだね……。皇女っぽい女子は‥‥もちろんいなかった。
ゴブリンは6体。中にはゴブリンアーチャーも1体いたから、お爺さんお婆さんたちにはちょっとキツいかな。

 ザンッ!
 ザンッ!
 ザンッ!
 ザンッ!

俺は6体のゴブリンをすべて刀で斬った。

 グギャーッ‥
 グギャーッ‥
 グギャーッ‥
 グギャーッ‥

うん、まったく問題なし。

 「うおおい!?ありがとうな坊!」
 「ありがとう坊や」
 「強いな坊!」
 「よう助けてくれたにゃ坊」
 「あははは‥(坊って言うなよ‥)」

 「みなさんお怪我はありませんか?」
 「ああ、少々斬られたのと矢傷くらいじゃよ」
 「ポーションはお持ちですか?」
 「そげなええもんあるわけにゃーわ。ワシら6人‥生まれ育ったナゴヤ村から追い出されてしもうてにゃ。金なんかもちろんにゃーだわ。なーんもにゃいんじゃよ。だからポーションなんて物もにゃーんじゃよ」

 (せめてすぐに水で洗い流せよな。そこから雑菌が入るっちゅーの!しかし、にゃーにゃーすげぇ訛りだな。どう見ても獣人じゃねぇけど)

 「斬られた人と矢傷のある人はこれを使ってください」

俺は自家製塗り薬を渡す。うん、見たとこ矢傷も刀傷も問題ないな。

 「えーのか坊。ありがてゃーけどワシらお金は払えんぞ?」
 「そんなことは気にせずに。さっ早く早く」






 「あの皆さん。さっき追い出されたって?」
 「ああ。去年から税が上がったにゃ。人頭税って言うやつだにゃ」
 「はあ」
 「去年は僅かながらの蓄えもあってなんとか払えたんじゃ。ほいでも今年の冬は雪も降らなんだろ。だで畑の土も乾き気味なんじゃ」
 「ほうじゃ。だで植える前から麦の豊作は期待できへん」
 「もう蓄えもあらへんしの」
 「そうでしたか‥‥」

シャーリーとミリアからの手紙にもあったな。領都サウザニアの人たちやミリアの親父さんたち騎士団の人たちでさえ税で悩まされてるって。
しかもミリアはあのカーマンと婚約しなきゃならないんだって?!何やってんだよ現ヴィンサンダー領主の3人は!

 「そんだでワシん家は嫁が出てけって言うたんにゃ」
 「うちはワシら夫婦がおったら息子んたちの迷惑になるからの」
 「私らも息子と嫁は口には出さへんが出ていってくれっちゅう雰囲気だにゃ‥」
 「だでワシら年寄りは村におれんくなっての‥」
 「ワシらもう満足に人頭税払える働きはできへんからの」
 「ほいで移民の募集をしちょるデニーホッパー村に行こうとの」
 「じゃがこれじゃあの……。デニーホッパー村にたどり着くまでにゴブリンに殺されてまうわ‥」
 「「ほーだほーだ‥」」
 「まあ闘って死ぬなんてあのまんま村にいたら体験できなんだわ」
 「ほうじゃの」
 「ワシらの出来ることっていえば餓死くらいかの。へっへっへっ」
 「ああ。だで旅の途中に魔物と闘って死ねたら本望じゃ」
 「「「ああ本望じゃ」」」
 「でも‥‥えっ!?さっきからどこに行くって言われましたっけ?」
 「ああ。デニーホッパー村じゃ」
 「あそこは村に活気があると評判じゃからの」
 「わしらの中で1人、この婆だけが手紙を書けての。教会の神父さまに手紙を出したんじゃ」
 「年寄り6人受け入れてくれんかのっての」
 「ほしたら来てくれて構わんと神父様が言うとったとシスターから返事があっての」
 「さすがは神父じゃ」
 「さすがはシスターじゃ」
 「「「ありがたやありがたや」」」
 「でものう……。このままじゃあたどり着けんにゃ‥」
 「闘って死ねたら本望じゃ‥」
 「「「ほうじゃの‥」」」

すっかり意気消沈しているお爺さんお婆さんたち。

 でもさすが師匠とシスターだよ。まだまだ村はいくら人が増えても問題ない。食べものも仕事はいっぱいあるだろうし。もう領内1の寒村じゃないんだ。
 
 「俺も目的地がデニーホッパー村なんです。一緒に行きましょう」
 「ほーか坊!?」
 「それは心強いにゃ」
 「坊やがいれば安心じゃわい」
 「「「ありがたやありがたや」」」
 「じゃあちょっと待っててください。俺、荷物を取ってきますから」

ナゴヤ村か。ヴィンサンダー領西端の寒村だよな。資源も何もないから過去戦乱にも巻き込まれたことがない村のはずだ。でも‥‥爺さんも婆さんも顔がインド人みたいな見た目だったよな。同じ領でもぜんぜん違う顔だちだよ。





待っていたナゴヤ村のお爺さんお婆さんと合流。そこから一緒にデニーホッパー村に向かうことにする。

ゴロゴロゴロゴロ‥

 「坊、おもしろいもんを曳いとるにゃ」
 「馬車みたいだにゃ」
 「ああこれリアカーって言うんですよ」
 「坊は商人かえ?」
 「あはは‥そんなもんです」
 「こんなかわいい坊と一緒の旅はいいねぇ」

 (本当はね、ここで助けた第2か第3王女様が言うんだよ。
 『アレク様あなたはいったい‥‥』   『私ですか、私はしがない越後のちりめん問屋の隠居ですよ。
 ひゃっひゃっひゃ』‥‥ああ、むなしい)




 「そろそろ野営にしましょうか。まだ3日や4日は歩き続けますからね」
 「そうかい。坊やに任せようかの」
 「「「ほうじゃの」」」
 「じゃあみなさんちょっとこっちまで来てください」

予定は狂ったけど仕方ないよね。
俺はお爺さんお婆さんたちを少し街道から離れた森側に集めたんだ。魔獣よりも人間のほうが危ないからね。

 「いでよ野営食堂!」

 ズズズーーッッ!







 「「「‥‥」」」












 「「「ハアーーー!」」」
 「な、な、なんじゃこりゃ?!」
 「どうなっとるんじゃー!」
 
 俺も夜は寝たかったからね。久々に発現したんだ野営食堂。もちろん内堀外堀の二重の空堀付きのやつを。

 「ぼ、坊これはいったい‥‥?」
 「ああ俺、土魔法を使えるんですよ」

 「ああ土魔法かい‥」


 「坊やは土魔法を使えるんだってあんた‥」


 「土魔法だってな婆さん‥」


 「土魔法だってお爺さん‥」





 「「「ほうかほうか‥‥」」」














 「「「そんなことあるかーーい!」」」


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