アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

368 デザートはパンケーキ

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 「「でーらうまいがや」」
 「「「ほうだぎゃ」」」
 「「「こりゃナゴヤの味やけどナゴヤじゃにゃあ」」」
 「「「ほおだぎゃ」」」

シシカバブ一家のみんなが異口同音にカレーライスを賞賛する。


 「これはなんとも‥‥うまいな」
 「ええ‥‥美味しいですわ」

師匠とシスターナターシャの2人がカレーライスを賞賛する言葉がすべてを顕している。

 「アレクお代わりはないのか?」
 「神父様、俺もほしい!」
 「すいません。カレーはまだありますけど米は本当にありません」
 「そうか‥‥」
 「米と一緒が最高なのにな‥」
 「ジャン秋に米が収穫できたら食えるからな」
 「そっか。じゃあ俺も鍛治仕事の合間に一生懸命米を作るよ」
 「親方、俺も頑張ります!」
 「俺もだ」
 「わしもだ」
 「「「米作るぞ!」」」
 「「「おおー!」」」

うんうん。みんなの士気も上がったよ。よしよしカレーライス作戦は大成功だったな。あとは春休み中に田植えから収穫までをみんなに教えとかなきゃな。俺はたぶん今年もダンジョンに行きっ放しだから。


みんながカレーの余韻でまったりとしている中、トテトテとデイジーが寄ってきた。

 「アレクお兄ちゃん甘いのが食べたいにゃ」
 (わわっ!なんてかわゆすデイジーちゃん!)
 「デイジーちゃん甘いのが食べたいのかにゃ?」
 「食べたいにゃ」
 「そうでちゅか。アレクお兄ちゃんはデイジーちゃんを食べたいにゃ。くんかくんかくんか‥」
 「キャッキャくすぐったいにゃ。やめるにゃ」
 「くすぐったいでちゅか?こうかにゃ?こうかにゃ?くんかくんか‥」
 「やめるにゃキャッキャ」
 「こうかにゃ?こうかにゃ?くんかくんか‥」

 「お兄ちゃん‥‥」
 「ア、アレク‥‥」
 「アレクちゃん‥」
 「アレク坊‥‥‥」
 「アレク君‥‥‥」


 「「「変態だよ‥‥」」」



 「食後のデザートはパンケーキです。横の小瓶に入ってるのがメイプルシロップ。たっぷりかけてめしあがれ」

今日のパンケーキはカウカウのミルクとコッケーの卵も入ってるから間違いなく絶品だ。
しかも産地直送のメイプルシロップたっぷりがけだからね。

 「あま~い!」
 「うま~い!」
 「こんな甘いもんは初めて食ったにゃ」
 「アレク坊貴族様の食いもんかや?」
 「メイプルシロップって蜂蜜みたい」
 「アレクちゃん高いのこれ?」
 「蜂蜜より断然安くサンデー商会で買えるはずだよ」
 「アレクちゃんそれほんとう?」
 「ああ母さん。もちろん安くはないと思うけど手がでない値段じゃないはずだよ」
 「それは楽しみね。じゃあ月に1度くらいはわが家もぜいたくをしましょうか」
 「「やった!やった!」」





あちこちで歓談が進む。
ミリアもシャーリーやアンナと女子トークに花を咲かせている。うん、よかったよ。

そんな中、俺も師匠とシスターナターシャと久しぶりにのんびりと話をしたんだ。

 「アレク君これが話題のメイプルシロップよね」
 「はいシスター」
 「たしかに蜂蜜みたいな甘さね。だけど村の人でも買えなくはない値段なのね?」
 「はい。そうなると思います」
 「タイラーが手紙で誉めておったぞ。弟弟子は口は悪いがなと」
 「(口が悪いのあとを聞かせてくれよ。せめて褒めてる内容を少しくらい教えてくれてもいいじゃんか!ああタイラーのおっさんも言ってたもんな、師匠は昔から怖いジジイだったって)」
 「なんじゃアレク、お前ヴィヨルドに行って調子に乗りおったか!」
 「痛い痛い痛い。頭ぐりぐり しないで!」

 わはははは
 ふふふふふ

なんだよ師匠!地獄耳かよ!

 「メイプルシロップ。まあヴィヨルド領としては万々歳じゃろうな」
 「フフフそうですね」
 
俺は学園長にもらった茶葉でお茶を淹れる。

 「あらこのお茶美味しいわねアレク君」
 「学園長が庭で育ててるお茶なんです」
 「へぇーそうなの」
 「師匠、シスター、学園長って強かったんですか」
 「その昔とある戦で共闘したことがあっての。ありゃ強かったぞ。魔法も剣もどっちもいける。当時モンデールとよう張り合うておったわ」
 「モンデール神父様とですか!」
 「ああ。中原中に名が知れ渡りだしたころのモンデールとな」
 「すごっ‥‥」
 「世の中には知られてないだけで知識も充分にすごかったわよ彼は」
 「へぇーそうなんですね」

あーやっぱりな。まあ考えてみれば同じ転生者でも俺以上はるかに才能がある学園長だもんな。


 「師匠、それで時計なんですがこのあとにでも発現しましょうか」
 「そうじゃの。夜間のほうが誰がやったかわからんからの」
 「ふふふ」
 「あと明日からはのんのん村とニールセン村にも建ててきますね」
 「たのんだぞ。ただのアレク‥‥小さいのにしろよ!小さいのじゃぞ!」
 「アレク君絶対に小さいのよ!小さいの!」

なぜか念押しをされたがなぜだろう?


 
 「ノームたち集まってー!」

 「なんじゃなんじゃ」
 「人の子が呼んどるのか!」

地中からわらわらと出てきたノームたち。水の精霊ウンディーネも合わせて、この村には精霊がたくさんいるようになった。

 「アレク、ここはね精霊に愛される地になったのよ」
 「へぇーそうなんだ。それって良いことなの?」
 「精霊に愛される地は災害も少ないのよ」
 「じゃあさ、ディーディーちゃんが言った夏の旱魃って?」
 「ええ。それでも起こるんだから、たぶんこの村はそれほど酷くはならないわ。だけど領全体ではあまり良くないことになるわね」
 「そうなんだね‥」

今後はみんなで対策を考えなきゃな。でも今は時計台を発現しなきゃ。
 
 「今から地下室付き2階建の時計台を発現するからね。ノームたちも手伝ってね」
 「「「おいさ、おいさ」」」
 「楽しみじゃの。人の子と一緒に物を作るのは何百年ぶりかの」
 「「「楽しみじゃ楽しみじゃ」」」
 「いつでも良いぞ人の子」


 「(シスター、アレクが話しておるのは精霊かの)」
 「(ええ。たぶん土の精霊ノームかと)」
 「(人族が精霊に命令をの)」
 「ええ。神話の世界ですね」
 「それをあの変態の子どもがの」
 「「わはは(フフフ)」」

 「じゃあいくよ!」

 しっかりとイメージした。上から時計台、2階の建屋、1階の建屋、地下には地下室。これを順に発現していく。
ダンジョンで毎夜のように野営宿舎を発現したからかなりスムーズに発現してるよ。

だいたい1時間くらい?
うん、結構サクサク発現できた。札幌の時計台みたいだよ。


 「ああシスター、やっぱりの‥」
 「ええ神父様‥」

 なぜか師匠とシスターには呆れられた。なぜだろう?
 結局村の時計塔は札幌の時計台みたいにしたんだ。だって村の人口も増えたし、訪れる人も増えたからね。
だから時計塔じゃなくて2階建の時計台にしたんだ。
1階は子どもたちの教室や事務室、2階はまるっとホールにしたんだ。これで雨天時に運動もできるしね。もちろん式典なんかもできる。大勢の人がくるイベントは元々の教会と連動してできるし。
時計台。
1,000人を超える住民や観光客に対応できる広さにしたんだ。建屋は煉瓦造り。クラシカルで観光客も納得だよね。
実はね、夜に作ったのには理由もあるんだ。内緒だけど時計台の建屋の下に地下室も作った。これは師匠とシスターだけが知っているよ。教会のホールの奥の部屋とこちらの時計台の奥の部屋、2箇所から秘密裏に通れる地下室なんだ。さらに万が一を考えた出口っていうか逃走経路も作った。東門のはるか先。小高い丘にまで通じる回廊を作ったんだ。使うことはないと思うけど、なんかのときの緊急脱出用にね。


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