アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

585 備える

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 会議はそのまま隣の部屋に移ったんだ。
 この部屋も完璧に防音がされているな。それと‥‥空気も澄んでる気がする。多分聖魔法で空間を満たしてるんだろうな。

 会議室には14,5人が座っていたよ。
 見知った顔もいたよ。冒険者ギルドの顧問テーラーさん、前騎士団長のペイズリーさん、海軍のイーゼルさん。あとは‥‥うん、みんな間違いなく強いや。

 「会議に先だって2人の若者を紹介しよう」

 「「おっ!」」

 目が合って互いに軽く手を上げたんだ。

 「北の辺境コート、コート学園のカラス君だ。知ってる者もいると思うが若手の魔法士では帝国内指折りの実力者、そしてティムの使い手じゃ」

 「カラスです。よろしくお願いします」

 部屋中の強者たちに既に認知されてるんだろうね、きっと。カラスも大人たちも普通にしてたから。

 「もう1人を紹介しよう。王国からの帝都学園留学生、ああ帝都では話題の狂犬団の団長でもあるの。さらには昨日の未成年者武闘祭優勝者でもある、アレク君じゃ」

 「「「‥‥」」」

 あ~大人の刺すような目線が痛いよ。どうせ俺はチビのモブ代表だよ……。あっ、チビじゃなくなったかな。今は170セルテくらいになったよ。まだ伸び続けてるし。
 だからただのモブ。

 「強者ばかりがおるこの席でなぜ未成年者がおるのかとの声も当然あろうの」

 コクコク 
 こくこく
 コクコク

 「じゃが我が国は強者が歴史を紡いできた国じゃからの。そうじゃの皆の衆」

 コクコク
 こくこく
 コクコク

 「アレク君、魔力を解放して挨拶してくれるかの。ああ、ここにおる者たちには契約魔法を交わしてあるからの。今日この場にあることは秘されるでの」

 「は、はい。ア、アレクです」

 あー緊張するよ。俺知らん人前で話すの苦手なんだよ!

 「チッ」

 あーオヤジが舌打ちしてやがる。くそっ!やりゃいいんだろ、やりゃ。

 「帝都学園3年のアレクです。よろしくお願いします!」

 ゴオオオォォォォォ!

 制御してた魔力を解放する。全身から湯気のように白い煙が上がったよ。体内魔力を半分くらい解放したんだ。だって全部じゃ喧嘩売ってるように思われるかもしんないからね。

 「「「ほぉ~」」」

 「「「クックック」」」

 「「「なるほどな」」」

 「良いの皆の衆?」

 「「「おおっ!」」」

 部屋にいる強者さんたちも納得してくれたみたい。
 
 「して‥‥今日集まってもらったのは我が帝都で紛うことない強者のお主らにこの先起こることを心得てほしいからなんじゃよ」

 ジンさんの言うとおり、集まった14,5人は確実な強者だった。
 帝都内の騎士団長、副騎士団長、陸軍大将、海軍提督、魔法軍軍団長などなど。
 間違いなく一騎当千。個の武勇優れた人ばかりだ。

 「強者の主らも聞いておろうの。帝都に悪魔の息のかかった者が現れた」

 「「「!!」」」

 強者ばかりなのに。いや、強者ばかりだからなのか。重い空気に包まれる会議。

 「昨日までの帝都の未成年者武闘祭。
 ここに辺境ティティカカのティティカカ学園メヒコ君が闇落ちとなって出場した」

 「「「‥‥」」」

 「剣、魔法、体術。そのすべてで対戦相手を秒で瞬殺しておる。そうじゃのカラス君」

 「はい。俺は魔法で心臓を1握り。瞬殺されました。今生きているのはエリクサーのおかげです」

 「「「‥‥」」」

 「お主らも知ってのとおり、闇落ちは悪魔が仕込んだものじゃな」

 「「「‥‥」」」

 「此度の闇落ち。卵が植えつけられるという最悪の形となった」

 「「「卵?」」」

 「知らん者が大半じゃろうな。
 闇落ちした者の身体を宿主にもう1人植え付ける。この場合が卵じゃの‥‥‥‥ここだけの話とするが、メヒコ君の身体に植えつけられた卵は帝都騎士団員のものじゃった」

 「「「‥‥」」」

 もう卵の名前も判明してるんだな。

 「憂うべき最悪の形じゃの。宿主に卵。単純に倍以上の力となり魔力だけでいえば10倍以上のものとなる。

 例えばじゃぞ、ここにおるお主らが宿主となり、さらに卵となればどうなる?」

 「ど、どうなるんです老師?」

 「国が滅ぶぞ‥‥」

 「「「‥‥」」」

 「此度のメヒコ君はアレク君の活躍により、奇跡的に卵も生まれることなくメヒコ君も闇落ちから元に戻ることができた」

 「そりゃなぜですかい老師?」

 「アレク君の強さが闇落ちしたメヒコ君を上回ったのはもちろんじゃが、おそらく‥‥単純に準備不足、或いはまだ実験段階じゃったからじゃの」

 「「「‥‥」」」












 「この件、無駄に恐怖を煽ることになるからの。民に知らせるのはまかりならん」

 「そりゃどうしてですか老師?」

 「悪魔の好物は人の恐怖じゃからじゃよ」

 「「「‥‥」」」

 「ただの。慎重に慎重を重ねることを旨とする悪魔が此度の件、一部とはいえ我らに周知となった。
 ということはじゃ。わかるの。次に事が起こるには10年とないじゃろうの」

 「「「‥‥」」」

 「よいかな皆の衆」

 ジンさんが俺の知らないことを話し始めた。

 「なぜ人は獣人を嫌う?獣人はなぜ人を嫌う?

 なぜ人はドワーフを嫌う?なぜドワーフは人を嫌う?

 なぜ人はエルフを嫌う?なぜエルフは人を嫌う?

 わかるかの?」

 「「「??」」」

 「太古の昔、人族、獣人族、ドワーフ族、エルフ族の4氏族は協力して悪魔と闘ったんじゃよ。
 じゃが、やがて劣勢となった悪魔は甘言を以って各氏族の分断を図るわけじゃな。
 そして、いずれかの氏族がその他の氏族を裏切ることになる……。

 それが現在に繋がり他氏族への不信、侮蔑となったのじゃよ」

 「「「‥‥」」」

 「幸い、我ら帝国は他氏族への差別は少ない。なぜなら実力主義だからの」







 「よいの。悪魔との闘いに負ければ国が滅びる。中原最強の帝国が滅びれば‥‥もうわかるの。中原そのものが滅びることになろう」

 「「「‥‥」」」

 「お主らに頼みたいこと。それはひとえに己が武をさらに磨いてもらいたいことじゃ。
 それと騎士団、陸軍、海軍、魔法軍、さらには冒険者との交流を図ってもらいたいの。いざ有事となれば共闘せざるを得ん。国が生き延びるためには皆が仲良くじゃ。よいの」

 「「「はい!(おお!)」」」

 「それとな。カラス君には‥‥」

 カラス(人)の任務が明かされたんだ。悪魔への逆襲……。


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