鮭とかえる

かえるまる

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旅立ち

待ち合わせ場所

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ヘビが大きな口を開けてかえるくんを飲み込もうとします。

ぎゅっと身を縮めるかえるくん。

そこに。

長い鋭い爪を伸ばした白い手が振り下ろされました。

まさか自分が攻撃されるとは思ってもいなかったヘビです。
振り下ろされた白い手に吹き飛ばされていきます。
飛ばされた先が水田であったヘビ。

フー!!
ニャー!!
水が嫌いな白い手の持ち主が、ここで少しの躊躇を。
これぞ、チャンスとばかり慌てて逃げていくヘビです。

危機一髪。

またも大きな動物に助けられたかえるくんです。

「ありがとう!
またねこさんに助けてもらったよ!」

「えっ?」

物おじもせずにお礼を言うかえるくんです。

「どんなねこだい?」

思わずシロもこう応えてしまいます。

「それはね・・・」

ここよりも川の上流で。
とかげに襲われたとき、ネコのキナコに救われたこと。
とても優しいねこだったこと。
川下に住む兄弟ねこのシロを気遣っていたこと。

「そうか、、キナコは元気だったんだ」

「おれがその兄弟ネコのシロさ」

ニッと牙をみせて笑う姿はどことなくキナコの面影がありました。


シロは兄弟ねこのキナコの元気な様子を知り、たいそうよろこびました。

メダカと遊んだり、ほかのかえると遊んだりして楽しく過ごす毎日。
たまにはシロと話もします。
いつしか田んぼの稲も大きくなり。
朝晩、めっきり寒くなってきました。
たんぼの水嵩(みずかさ)も減ってきたようです。
めだかたちは流れのあるほうへ下っていきました。
かえるたちも土の中に潜って冬眠の準備を始めています。

「また春に会おうね」
ともだちになったメダカやかえるとお別れします。
風に冷たさを感じ始めたころ。
田んぼの水も完全になくなりました。
夕陽が稲穂を赤々と染めていきます。

秋です。

「そろそろ川へ向かわなきゃ」

「行くのか?」

「送っていくよ」

「そうだ、かえるくん。
お願いがある。
この鈴をキナコに渡してくれよ」

「俺は元気だよ。お前も元気だとうれしいと伝えてくれないか」

「うん、わかった!
ちゃんとキナコさんに伝えるね!」

シロから鈴をあずかります。
あずかった鈴を首からかけるかえるくん。
その鈴と変わらない大きさは、かえるくんの頭。
かえるくんが笑うと、鈴もコロコロと鳴きました。
まるでいっしょに笑っているようです。
シロはそんなかえるくんを頭にのせて
、河口まで連れていってくれました。

「また会おう」

シロはこう言って去っていきました。

「うん、ちゃんとこの鈴をキナコさんに渡すからね」



すぐ近くに大きな鉄塔も見える、橋の下。
朝晩、めっきり涼しくなりました。

ますます秋を感じます。

2日、3日と待ち続けるかえるくん。
かえるくんが鮭くんを待ち続けて何日めか。
ウトウト眠りかけているかえるくんです。


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