腐女子の俺が逝く! ゲームから出られなくなった俺は趣味を堪能するはずが……あれあれ?

冬生羚那

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危機感

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「ではこちらへどうぞ」

 店員さんに促されて奥の仕切りの中へと移動する。
 下は……いっか。
 こっちはボクサーだし、大して違いはない。
 マントを外しシャツを脱ぐ。
 そうして店員さんの選んでくれたブラを見比べる。
 違いはあるが、その中でもフルカップの白のやつを選んでさっさと身に着ける。
 ちょいと屈んで横に流れている肉を引き寄せてカップに収めたら終わりだ。
 うん、ブラすると更に盛り上がってる。
 これはちょっと自慢出来るんじゃないか?

「如何でしょうか」
「うん、ちょうどいい。ありがとう」
「少々失礼して宜しいですか?」
「え? あ、うん」

 仕切りを超えてきた店員さんが失礼します、と俺の後ろに立った。
 色々確認したらしく、そうして結局もう一度身を屈め、店員さんに肉をカップに収められた。
 そこまでしなくても、とも思うが、崩れるのもちょっと嫌なので、されるがままだ。
 店員さんも頷いてくれたので、シャツを羽織りボタンを留める。
 マントを羽織り仕切りを超えて戻れば店員さんが残りの下着を袋に詰めてくれた。

 そうして支払ったのは三万ゴル
 ワンセット一万円ぐらいだ。
 数枚の硬貨がお釣りとして返され、袋を受け取る。

 この世界の通貨はゴル
 一Gが一円に等しい。
 計算が楽でいい。
 硬貨しかないので、持ち運びするには重いが、インベントリやアイテムバッグがあるので問題ない。
 スリもたまに居るけどな。
 銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨と種類があって十進法で計算する、現実との違いはそこまでない。
 紙幣がないのと、十万以上でも対応する硬貨があるだけだ。

 袋は数枚のセットのはずが、もっと嵩張るし、重量がある。
 不思議に思って顔を上げれば店員さんはにんまりと微笑んでいるし、ジュリエーヌさんは俺の方を見ない。

「あの……」
「お買い上げありがとうございます!」
「いや、あの……」

 店員さんとジュリエーヌさんの顔を交互に見遣るけど、答えてくれない。
 じゃあ、と袋を開けて中身を取り出そうとしたら、大きくてしなやかな手が俺の手を止めた。
 顔を上げればジュリエーヌさんがじっと俺を見下ろしている。

「あの」
「アタシからのプレゼントよ」
「いやでも……」
「いいから。気にしないの」
「気にするよ」

 そう言うとジュリエーヌさんは困ったように眉尻を下げ、そうして俺の耳元に顔を寄せてきた。

「元に戻ったお祝いよ」

 なんのことだ、と思ったが、そうだ、さっきそうやって説明したんだった。と思い当たった。
 これは固辞したらあれかな。
 まあ、着る機会があるかどうかはわかんないけど、あって困るものでもあるまい、とへらりと笑みを浮かべる。

「ありがとうございます」
「いいのよぉ」
「でも、結構ある気が、しなくもないんですけど。着る機会が……」
「ふふ。じゃあ今度デートしましょ。その時にでも着てちょうだい」

 デートに誘われた!
 なーんて、ここで勘違いすることはないが、それでこの話が終わるならいいか。
 こくん、と頷いて袋の口を畳み直し腕に抱える。

「あ、服は普段はなるべく今までと同じ格好してなさいね? 危ないから」
「え? 危ない?」
「そうよぉ。アンタそっちの危機感もなさそうだからねぇ。心配だわぁ」

 頬に手を当てて悩ましげに溜め息を吐くジュエリーヌさんだが……何の話をしているのか。
 冒険者ならば危険に足を踏み込むものだろう。
 服を新調するつもりもないし。
 防具は……この先いいのドロップしたりしないかなぁ?
 いやでも、俺は今までよりももう少し安全に生きて行くつもりだから、今の装備でも問題ないだろう。
 そこまで心配しなくても大丈夫……の、はず。

「まあ、気を付けるよ」
「……わかってないんでしょうねぇ……。まったくもう……」
「え? なんだよ、わかってるって。気を付けるし!」

 そうしてニヤニヤする店員さんに見送られながら、俺達は店を後にした。
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