北野坂パレット

うにおいくら

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夏休み

お嬢

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 僕はしばらくはオヤジの横で大人しくご飯を食べていたが、同じ年頃の親戚と一緒に遊ぶ方が楽しそうだったので途中からはオヤジとは別行動をとっていた。
 義雄のおっちゃんの語る祖父や曽祖父の昔話を聞くのも面白かったが、同じ話が何度も出てくるので飽きたというのが本音だった。

それにしても本家の近くにはやはり親戚が多い。

 僕に従兄弟や再従兄弟(はとこ)とかがいる事を今日初めて知った。
裕也という僕と同い年の親戚と二歳下の佳祐、そして一つ歳上の真由美ちゃんの四人とで、大人達が飲んで騒いでいる部屋の襖一枚隔てた部屋でたわいも無い話をしていた。
 真由美ちゃんは長い髪の毛が印象的なお姉さんだった。前髪を見事におかっぱに揃えて田舎のお嬢さんという気がしたが、案外僕はその座敷童のような髪型が気に入っていた。

 この街からは神戸はとってもおしゃれな街に見えるらしい。神戸はどんな街かと聞かれたが、改めて聞かれると答えようがなかった。無難に海と山と異人館がある街だと答えておいたが、阪神大震災の話は思いついたが敢えてしなかった。

 
 裕也が思い出したように
「お前の父さん守人(もりと)やのぉ?」
と聞いてきた。

「もりと?……って何?」
初めて聞く言葉だった。
「この家を災難から守る人よ」
と真由美ちゃんが教えてくれた。

「守る人?」
 災難から守るってなんだそれは? うちのオヤジは何者なんだ? 怪しい霊媒師か? 疑問が沸々と湧き起こる。

「そう、守る人と書いて『もりと』。亮平君は知らんのけ?。お父さんから聞いてないかぁ?」
真由美ちゃんは優しく、そして当たり前の事実ように説明してくれた。
本家ではそんなに普通の事なのか? 知らない僕がおかしいのか? 訳が分からん。

「聞いてないなぁ」
と僕がそう答えると
「そうかぁ。明日でもお父さんから聞いたら良いわ」
と真由美ちゃんは笑って言った。

「うん、そうする」
僕はそう答えたが中途半端な状況で放り出されたような気がして、何かモヤモヤとしたのもが残った。




「お~い。亮平。そろそろ寝るぞぉ」
というオヤジの声で宴会場に呼び戻され、オヤジと一緒に離(はな)れの一軒家に向かった。
田舎の夜は早い。神戸ならこれからまだまだ宴会は続くだろう……。


「本当はここの離(はな)れを建売にして売るつもりやったんやけど、親族一同の反対があって止めたらしい」
 オヤジがほろ酔い気分でそんな話をし出した。

「まあ、土地だけは余っているからな。ここは……」
オヤジはそう呟くと離れに着くまで何も話をしなかった。

 オヤジに『守人』の事を聞きたかったが、たらふくお酒を飲んでいてそうなオヤジにこのタイミングで聞くのは止めた。日を改めて聞いた方が無難なような気がした。

やかましい程の虫の声をオヤジと僕の下駄の音がかき分けている。


 離れに着くと、それこそ温泉旅館の離れのような平屋の建物で、玄関を上がるとそこは四畳半ほどの板間だった。
「この家は書院造風に造ったなかなかいい感じの家やねん。まあ、あの叔父さんにしては良い趣味だと言える」
と言いながら襖を開けて奥へと入っていった。

 十畳ぐらいの和室に布団が二組敷かれていた。
僕たちの荷物は既に布団の枕元に置かれてあった。真澄さんの奥さんが布団を敷いてくれたのだろうか?
床の間には誰が書いたのかは知らないが掛け軸が掛けてあった。

「ホンマに温泉みたいやなぁ」
というと、
「そうやろ。実はなあ、ここに露天風呂があんねん。入るか?」
とオヤジが嬉しそうに言った。

 オヤジと初めて一緒に湯船に浸かる。


 内風呂はそれでも下手な温泉宿ぐらいの広さもあったが、その先にある露天風呂は檜のテラスの真ん中に酒樽のような湯船がはめ込まれていた。まさに温泉宿の露天風呂だった。
その酒樽は大人が4~5人同時に浸かれそうな大きさだった。
勿論、内風呂には目もくれずにオヤジはスタスタと露天風呂へ向かった。

「一体全体この露天風呂付の家を建売り住宅として売り出そうという発想はどこから来たんだろう?
これは建売りというレベルではないな」
などと考えながら僕もオヤジの後について露天風呂に向かった。


 初めて見るオヤジの体は中年とは思えないがっちりした体つきだった。
お腹も腹筋が綺麗に分かれているとは言えないが、うっすらと筋肉の形が分かるぐらいにはなっていたし、上半身も結構筋肉質だった。痩せマッチョだな。うちのオヤジはと思った。
背中の逆三角形はちょっと羨ましかった。


 そのオヤジは掛かり湯を済ませると湯船に浸かるなり
「え~湯やぁ。天国やぁ」
と幸せそうな声を上げていた。

 オッサン臭いセリフだと心の中で馬鹿にしていたが、いざ自分が湯船に浸かると
「あ~ええ湯やわ~」
と唸っていた……やっぱり僕はオヤジの息子だ。

「やっぱり檜の露天風呂はええなぁ……」
オヤジはまだ感激している。

「かたおかぁ~」
とオヤジは声を上げた。

「なんなんや?それ」

「あほ、阪神ファンはヒノキの風呂に入ったらこう叫ぶのが習わしや」
とオヤジは言った。
取りあえず阪神ファンを自称する僕にはその意味はすぐに判ったが、習わしにはなってないと思う。

そんな事はお構いなくオヤジは檜の風呂のヘリに頭を乗せて気持ち良さげに空を見ていた。


「なあ、亮平。空を見てみ。星が綺麗やぞぉ」
オヤジは空を見上げたまま僕に言った。

「あぁ?」
僕も同じように風呂のヘリに頭を乗せて星を見た。

「ホンマやな。綺麗やな」

空は満天の星空だった。

「やろう?……やっぱり田舎は違うな。空気が違うんやな。ぎょうさん星が見えるわ」

虫の声もうるさいぐらいに聞こえる。

「うん」
 僕も本当にそう思った。
星なんかこうやって見上げるのなんか、何年振りだろうか?
空ってやっぱり広いな……。


 僕たち二人は暫く黙って虫の声をBGMに満天の夜空を見上げていた。
本当に吸い込まれそうな空だった。星がとても綺麗に見える。


「夏の大三角がよう見えるわ。どれか分かるか? 亮平」

「どれ?」

「ほれ! 南の空の上の方に光っている星があるやろ。天の川んとこや」
オヤジは湯船から腕を出して空を指さした。

「ああ、あれか?」
ここは天の川が良く見える。こんなにはっきりと綺麗な天の川を見たのは初めてかも知れない。

「そうそう、あれが織姫星。こと座のベガや。それでそのしたちょっと左南東に下がってなんか光ってんのが彦星。わし座のアルタイル。ほんでそのまま上に上がっていくとお邪魔虫の白鳥座のデネブや。分かるか?」

「これで夏の大三角”関係”や」

「父さん……”関係”は余計やろ」

「まあな」
オヤジはにやっと笑いながら
「亮平と冴ちゃんと宏美ちゃんみたいなもんか……」
等とふざけた事を言った。

「そんな関係とちゃうわ」

「そうかぁ……」
オヤジはそういいながら微妙な笑いを口元に浮かべた。


 僕はそれを無視して
「さそり座は見えるの?」
と聞いた。

オヤジは身体を少し起こして空を見ていたが
「さそり座かぁ…あれは南の低いとこにおるからなぁ……ちょっと見えへんな。山に隠れとうわ」
残念そうに首を横に振った。

「そうかぁ。父さん星座に詳しいんやな」
意外だった。オヤジが星座ついてすらすらと語るのを聞いて僕は少なからず驚いていた。

「まあな」
オヤジはまた湯船のへりに頭を載せてそう応えた。

そして
「昔な。こうやって俺もオヤジに……そう、お前のお爺ちゃんとここで星を眺めていたわ」
と懐かしそうな表情で言った。

「え? 爺ちゃんもこの風呂に入ったん?」

「うんにゃ。その当時はここはなかった。見たのは近所の川べりやったかな」
オヤジは空を見上げたままそう言った。

少し間が開いてから
「でも、こうやって息子と見る夏の夜空もええもんやな。爺さんの気持ちが初めて分かったわ」
とオヤジはシミジミとそう言った。


僕たち二人は暫く黙って夜空を眺めていた。

 突然
「「あ!」」

とオヤジと僕は同時に声を上げた。
この夜空に白い光の筋がスーと流れていった。

流れ星を見た。

「願い事はちゃんと間に合ったか?」
とオヤジが聞いてきた。

「ううん。ダメやった」
と僕は首を振った。

「そっかぁ……次に期待やな」
と言って笑った。

 僕は願い事をするのを忘れて見入ってしまった。
それほど綺麗で見事な流れ星だった。

「父さんはなんか願い事したん?」

「うんにゃ。父さんも間に合わんかったわ」
と言ってオヤジは笑って首を振った。

 そしてオヤジは空を見たまま
「なぁ、亮平、たまに夜空を見上げて『綺麗な星だなぁ』と言えるぐらいの感性は、幾つになっても残しておけよ」
と言った。

「うん」
オヤジにしては珍しい台詞だっと思った。
しかしこの星空の中で言われたら、素直に本当にそう思った。








 翌朝、7時前には起こされた。
田舎の朝は早い。

「いつもならまだ寝ている時間なのにな……」と思いながら顔を洗ってからオヤジと一緒に母屋の方へ向かった。
田舎なので土地だけは余っているとオヤジは言っていたが、本当にその通りだと思った。
昨日は気が付かなかったが、離れと言われる一軒家が五軒も建っていた。

 このままオヤジの言うとおり建売りで売りに出してもおかしくないなと思ったが、離れ付きの温泉旅館の方が絶対に儲かると思った。しかし、あの露天風呂が五つもあるのかと思うと凄いもんだと感心してしまった。他にお金の使い道はなかったのか? とも思うが……。

 朝食はご飯と焼き鮭とみそ汁、卵焼きあともずくとか小鉢が三つぐらい……ああ、日本の朝食だ。
うちの家ではめったに出ない和の朝食。
美味しい……。

温泉旅館に泊まったみたいな気持ちがしてちょっと嬉しい。


 朝食を取った後は義雄のおっちゃんと真澄さんとオヤジと四人で、先祖代々の墓がある裏山に登った。
家の裏に先祖の墓があるなんて凄い。

「昔この道を歩いていたら火の玉を見たって婆さんが腰を抜かしとったわ」
と義雄のおっちゃんが笑いながら話しをしていた。

「その話、俺も聞いたことあるわ」
とオヤジも一緒に笑っていた。

 裏山には沢山の墓石が二列に並んでいた。
その内のいくつかはほとんど砕けて、言われなければ墓石とは分からないほどになっていた。

「うちの家系は飛鳥時代から続く家やからなぁ。出(で)は京都や。ここに来たのが南北朝の頃。お墓はその時代からやから前の方は砕けてしまってるんや」
オヤジはそう言って藤崎家の歴史を簡単に教えてくれた。

「へ~。そんなに古い家やったんやぁ」
初めて自分の先祖についての話しを聞いた。
僕たちはその並んだお墓の真ん中あたりでご先祖様へ手を合わせた。


 墓石に名前とは別に「勘兵衛」と書いてあったので義雄のおっちゃんに聞いてみた。
するとおっちゃんは
「この家はのぉ、先祖代々勘兵衛の名を継ぐんじゃ。だから第何代勘兵衛って書くんじゃ」
と教えてくれた。

「へぇ」
と感心していると義雄のおっちゃんは
「本当はお前たちがこの名を継いでいるはずなんやがなぁ」
と言った。

「え?」
と振り向いてオヤジを見ると
「本当はお前の曾祖父(ひいじい)さんが継ぐはずやったんや。でもな継がずにとっとと逃げたんや。で、おっちゃんが継いでくれたんや」
と笑いながら教えてくれた。

「そうやったんや」

「だから、うちの家は守人(もりと)になったんか?」
とオヤジに聞いた。思いがけずに昨日聞きそびれた事を、やっと聞く機会がやってきた。

「それを誰に聞いたんや?」
とちょっと驚いたような顔をして聞いてきた。

「え、真由美ちゃんに聞いたんやけど……」

「ふ~ん。そうかぁ」
とオヤジは応えたが守人については何も説明してくれなかった。
結局モヤモヤしたこの気持ちは解消される事は無かった。

 墓参りも済んで、ご先祖様に挨拶したら午前中はする事が無くなった。
オヤジは義雄のおっちゃんと真澄さんと話し込んでいるし、暇だったんでこの家の近所をぶらつく事にした。

 さっき先祖のお墓に行く途中で、小径(こみち)が分かれているのを見つけて気になっていた。誰かに呼ばれているようなそんな感じさえしていた。なのでその小径を散歩がてらに歩いてみることにした。

 軽く坂道にはなっているが、疲れるほどの急勾配ではない。
木漏れ日が気持ちいい。
そんなにこの小径は人が通らないのか、雑草も小径の所々から生えていた。

 少し歩くとちょっとした広場になっていた。
森の中の広場。そこは朝の陽の光が一筋の光となって斜めに走っていた。

 まるでステージのように輝いて見えた。
その景色に誘われるまま、広場の中央へと進んでいった。
歩くと踏みしめた足のふわふわとした感触が不思議な感じだった。

 まるでここだけ綺麗に芝生が手入れされて生えているような感じだった。
しばらくその景色に見とれていると、その光の奥から女の子がこちらに歩いてくるのが見えた。

「あれ? この家に関係ある子供かな?」
と思ってい見ていたら、その子は僕の前まで無表情にまっすぐ歩いてきた。

「亮平……待っていた」
 見た感じとは全然違う大人びた話し方、そして明らかにこの地方の言葉でないイントネーション。
感じたのは違和感だった。

「待っていた?……僕の事?」
僕は恐る恐る聞いた。

「そう、お前じゃ」
抑揚のない声だった。

「あんた誰……」

「昔からオジョウと呼ばれている」

「お嬢?……」

「そうだ」

「座敷わらしみたいなもん?」
もう、この子は人ではないと直感で感じた。
しかし何故か怖いとか恐怖感はわかなかった。どちらかといえば身内に感じる近しい距離感と言うか安心感みたいなモノを感じた。

「そんなもんだ。お前らは親子は三代同じことを言う」
しかし、その無表情さはちょっと不気味だった。

「え? 父さんにも爺ちゃんにも会ったん?」

「会っている……その前も会っている」
それを聞いてホッとした。
オヤジや爺ちゃんが会っているならやっぱり安心だと思ったが、それ以前に
「一体お前は幾つだ?」
と突っ込みたくなった。

 いや、ここは突っ込むべきだろう……。
でも口から出た言葉は

「こんなところで何をしてんの?」
だった。

僕は肝心な時に肝心な事を聞けない体質かも知れない。

「お前を待っていた」

「え? うそ? 何のために?」
僕は驚きながら聞き返した。

「本来、この家を継ぐのはお前の曾祖父(ひいじい)さんだった。それをあやつは逃げおった。お前の爺さんも父親も皆逃げおった。お前も逃げるのか?」
と抑揚のない声で詰めるように聞いてきた。
逃げるってどういうことだ? 家を継がなかった事を言っているのか? 現に義雄のおっちゃんが本家は継いでくれている。何故僕に言う? 疑問だらけだ。

「逃げも隠れもしいひんけど、勘兵衛を継いでいるのは義雄のおっちゃんで次は真澄のおじさんや。俺が継ぐんやない」
訳が分からないまま、僕はそう応えた。



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