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初詣
言い訳
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「オー、ユノ! この前のクリスマスでの演奏会、あなたは見に来ていなかったのですか?」
とヴァレンタインはオフクロに話しかけた。
「行ったわよ!! たん子にも会うたわ。それが?」
とオフクロはヴァレンタインを睨めつけて言った。
巨匠の一言も火に油を注ぐ結果にしかならなかった。
「いえ……それなら良いんです……」
とオフクロの剣幕に押されて、世界の巨匠もそれ以上は何も言えなくなった。
たん子ちゃんもオフクロに会ったんなら、その時にオフクロに言っておいてくれれば良かったのに……。
何気にオヤジの顔を見ると目が合った。オヤジも僕と同じことを思っているような気がした。
「まあ、確かに亮平が伝えているもんだとは思っていたが、まさか、まだ言っていなかったとは……意外だった。別にお前に隠していた訳ではない。俺は言う機会が無かっただけだ。隠していたのは亮平だけであって俺ではない」
とオヤジはまさに逃げの姿勢だ。
ここにきてすべての責任を僕に擦り付けようとしている。
まだ自分の保身だけを考えている。なんてオヤジだ。第一、言葉遣いがおかしい。日頃の神戸弁はどこにいった!!
確かに、今日までオフクロに何の報告も相談もしなかった僕が悪いのだが、こんなにあからさまに擦り付けなくてもいいじゃないか!! 少しぐらい助け舟を出してくれてもいいだろう? 父親なんだから……。
そんな事を考えていたら、宏美が
「『母さんを放ってフランスには行けない』って亮ちゃん悩んでいましたよ」
とオフクロに言ってオフクロのグラスにビールを注いだ。
ナイスだ! 宏美。このタイミングで物怖じもせずに話に割って入れるのは、天然のお前しかいない。
僕は初めて宏美の周りの空気を読まない性格に感謝した。いや、宏美は案外、天性の社交性の持ち主かもしれない。ここでビールを注ぎながら話に割って入れる女子高生はそんなにいないと思う。
「そうなん?」
オフクロはビールが注がれたグラスをもって僕に聞いた。
目は相変わらず座っているが、怒りのボルテージは少し下がった様だ。
「うん」
ここは頷く一手しかないだろう。
頷きながら家で三人で食事をている時からオフクロは焼酎を飲んでいたことを思い出した。
既にオフクロは酔っている。
「フランスに行くのは反対なん?」
と聞こうとしたその瞬間。
「なにをさっきからからんでんの? ユノ」
と言いながら空いていたオフクロの隣の椅子に座ったのはたん子ちゃんだった。
その後ろに安藤さんと仁美さんが立っていた。
天の助けとはこのことだ。
「なんや? あんた……らか……」
と言ってオフクロはビールを煽った。
僕はすかさず、オフクロとたん子ちゃんにビールを注いだ。
オヤジは珍しく立ち上がって安藤さんと仁美さんにビールを注いでいた。日頃の無精者も今は腰が軽い。
「こういう事はさっさと言わなあかんなぁ」
とたん子ちゃんは僕に諭すように言った。
もっともな意見である。返す言葉もない。
僕もすぐに言うつもりだったが、なんだか言いそびれてしまった。
あの日、冴子の屋敷での僕たちの演奏を見たオフクロは家に帰ってからも上機嫌で
「とってもいい演奏だったわ。ヴァイオリンもまだ十分イケてるし」
と僕よりも嬉しそうだった。
その顔を見たら言えなくなってしまった。日を改めていえば良いか……と思ってしまった。
で、そのまま今日まで言えずにきてしまった。
「はい……」
僕は小さい声で返事をした。
とヴァレンタインはオフクロに話しかけた。
「行ったわよ!! たん子にも会うたわ。それが?」
とオフクロはヴァレンタインを睨めつけて言った。
巨匠の一言も火に油を注ぐ結果にしかならなかった。
「いえ……それなら良いんです……」
とオフクロの剣幕に押されて、世界の巨匠もそれ以上は何も言えなくなった。
たん子ちゃんもオフクロに会ったんなら、その時にオフクロに言っておいてくれれば良かったのに……。
何気にオヤジの顔を見ると目が合った。オヤジも僕と同じことを思っているような気がした。
「まあ、確かに亮平が伝えているもんだとは思っていたが、まさか、まだ言っていなかったとは……意外だった。別にお前に隠していた訳ではない。俺は言う機会が無かっただけだ。隠していたのは亮平だけであって俺ではない」
とオヤジはまさに逃げの姿勢だ。
ここにきてすべての責任を僕に擦り付けようとしている。
まだ自分の保身だけを考えている。なんてオヤジだ。第一、言葉遣いがおかしい。日頃の神戸弁はどこにいった!!
確かに、今日までオフクロに何の報告も相談もしなかった僕が悪いのだが、こんなにあからさまに擦り付けなくてもいいじゃないか!! 少しぐらい助け舟を出してくれてもいいだろう? 父親なんだから……。
そんな事を考えていたら、宏美が
「『母さんを放ってフランスには行けない』って亮ちゃん悩んでいましたよ」
とオフクロに言ってオフクロのグラスにビールを注いだ。
ナイスだ! 宏美。このタイミングで物怖じもせずに話に割って入れるのは、天然のお前しかいない。
僕は初めて宏美の周りの空気を読まない性格に感謝した。いや、宏美は案外、天性の社交性の持ち主かもしれない。ここでビールを注ぎながら話に割って入れる女子高生はそんなにいないと思う。
「そうなん?」
オフクロはビールが注がれたグラスをもって僕に聞いた。
目は相変わらず座っているが、怒りのボルテージは少し下がった様だ。
「うん」
ここは頷く一手しかないだろう。
頷きながら家で三人で食事をている時からオフクロは焼酎を飲んでいたことを思い出した。
既にオフクロは酔っている。
「フランスに行くのは反対なん?」
と聞こうとしたその瞬間。
「なにをさっきからからんでんの? ユノ」
と言いながら空いていたオフクロの隣の椅子に座ったのはたん子ちゃんだった。
その後ろに安藤さんと仁美さんが立っていた。
天の助けとはこのことだ。
「なんや? あんた……らか……」
と言ってオフクロはビールを煽った。
僕はすかさず、オフクロとたん子ちゃんにビールを注いだ。
オヤジは珍しく立ち上がって安藤さんと仁美さんにビールを注いでいた。日頃の無精者も今は腰が軽い。
「こういう事はさっさと言わなあかんなぁ」
とたん子ちゃんは僕に諭すように言った。
もっともな意見である。返す言葉もない。
僕もすぐに言うつもりだったが、なんだか言いそびれてしまった。
あの日、冴子の屋敷での僕たちの演奏を見たオフクロは家に帰ってからも上機嫌で
「とってもいい演奏だったわ。ヴァイオリンもまだ十分イケてるし」
と僕よりも嬉しそうだった。
その顔を見たら言えなくなってしまった。日を改めていえば良いか……と思ってしまった。
で、そのまま今日まで言えずにきてしまった。
「はい……」
僕は小さい声で返事をした。
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※この物語はフィクションです。
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