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新入生
楽器選び
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暫くすると入部希望の一年生と部員全員が集まった。
音楽室が人の熱気であふれていった。一気に部員が増えると空気も変わる。
冴子が指揮台の上に立った。そして音楽室をゆっくりと見渡した。
息を軽く吸うと
「それでは皆さん! こちらに注目してください!」
と声を張り上げた。
音楽室の喧騒が一瞬で静かになった。
「本日、新入部員を二十名も迎え入れる事が出来ました。新入生の皆さんようこそ!」
と冴子が言うと上級生達が拍手で迎えた。
「新入部員の皆さん。私は器楽部の部長の鈴原冴子です。担当はファーストヴァイオリンです。これから一緒に楽しい部活を作っていきましょう。よろしくお願いします」
と言って冴子は頭を下げた。
頭を上げるとまた見まわしてから
「さて、早速ですが本日はこれから皆さんの担当楽器を決めたいと思います……が、その前に未経験の方がほとんどだと思うので楽器の説明をしたいと思います。その後で希望する楽器の振り分けをします。その時に先輩達に色々質問してください。経験が無いからと言って遠慮はしなくて良いですからね。誰でも最初は初心者です。でも、希望者が多いパートは経験を考慮と抽選になります。よろしいですか?」
と音楽室を見渡した。
誰も返事をしなかった。
冴子は首をかしげて
「返事がありませんね。一年生の皆さん! もう一度聞きます。希望者が多いパートは経験を考慮となります。よろしいですか?」
ともう一度同じ事を聞いた。
「はい」
今度は返事が返ってきたが、ちゃんと応えたのは数名のようだった。それらの一年生は経験者か吹奏楽部出身者なんだろう。返事が場慣れしているように聞こえた。
「よろしいですか?」
冴子はまた聞いた。彼女はまだ満足していなかった。
「はい!!]
今度は全員の声が揃った良い返事だった。
「いつもそう言う返事をお願いします。挨拶と返事は大事です。
器楽部は『ユルイですけどぬるくは無い』です。あれこれと決まりは無いですが、自分たちが今何をすべきか? は常に問われます。昨年、入部した未経験者はこの一年で素晴らしく成長しました。『上手くなりたい!』『もっといい演奏をしたい』それを目標に『自分は今何をしなければならないか?』を考えて実行する。それがこの器楽部です」
僕は冴子の話を聞きながら前部長の千龍さんの言葉を思い出していた。
『うちの部はぬるくはないがユルイぞ』
確かシモ・ハヤン・千恵蔵の三人が入部した時に千龍さんが放ったひとことだ。
冴子もちゃんと思えていた。先輩が作った伝統はしっかりと受け継がれているようだ。
「それでは始めましょう。まずはヴァイオリンのリーダー結城瑞穂。彼女はこの部のコンサートマスターです」
そう言うと冴子はニコッと笑って指揮台から降りた。
いつもの様な上から目線で見下されるより、こうやて敢えて笑顔で言われる方が数倍不気味だという事を僕は知った。
冴子は新たな凄みを手に入れたようだ。はっきり言ってボスキャラ感が増した。このまま成長すると間違いなくラスボス級になると思われる。
アカン……そんな事を考えていたら笑いがこみあげて来た。
「はい。ヴァイオリンの結城瑞穂です。副部長とコンマスを兼務しています」
ヴァイオリンを抱えて瑞穂は指揮台に上がると一礼してから話し出した。
「誰もが知っているヴァイオリンは第一バイオリンと第二ヴァイオリンと分かれています。第一……ファーストバイオリンの担当は私ですが、セカンドヴァイオリンは二年生の東雲小百合がリーダーです。
何故二つに分かれているかと言いますと、ヴァイオリンは室内楽やオーケストラで演奏する時は役割分担でパートを分ける必要があるからです。ファーストはメロディを、セカンドは伴奏を担当する事になります。
この器楽部に於いては基本的に未経験の一年生は第二に所属してもらいます。そこで未経験者の基本的な練習をまとめて行います。初心者の方はそこで徹底的に基礎を学んでもらいます。ヴァイオリン希望の方よろしくお願いしますね」
彼女はよどみなくそう言うとまた一礼してから指揮台から降りた。
音楽室が人の熱気であふれていった。一気に部員が増えると空気も変わる。
冴子が指揮台の上に立った。そして音楽室をゆっくりと見渡した。
息を軽く吸うと
「それでは皆さん! こちらに注目してください!」
と声を張り上げた。
音楽室の喧騒が一瞬で静かになった。
「本日、新入部員を二十名も迎え入れる事が出来ました。新入生の皆さんようこそ!」
と冴子が言うと上級生達が拍手で迎えた。
「新入部員の皆さん。私は器楽部の部長の鈴原冴子です。担当はファーストヴァイオリンです。これから一緒に楽しい部活を作っていきましょう。よろしくお願いします」
と言って冴子は頭を下げた。
頭を上げるとまた見まわしてから
「さて、早速ですが本日はこれから皆さんの担当楽器を決めたいと思います……が、その前に未経験の方がほとんどだと思うので楽器の説明をしたいと思います。その後で希望する楽器の振り分けをします。その時に先輩達に色々質問してください。経験が無いからと言って遠慮はしなくて良いですからね。誰でも最初は初心者です。でも、希望者が多いパートは経験を考慮と抽選になります。よろしいですか?」
と音楽室を見渡した。
誰も返事をしなかった。
冴子は首をかしげて
「返事がありませんね。一年生の皆さん! もう一度聞きます。希望者が多いパートは経験を考慮となります。よろしいですか?」
ともう一度同じ事を聞いた。
「はい」
今度は返事が返ってきたが、ちゃんと応えたのは数名のようだった。それらの一年生は経験者か吹奏楽部出身者なんだろう。返事が場慣れしているように聞こえた。
「よろしいですか?」
冴子はまた聞いた。彼女はまだ満足していなかった。
「はい!!]
今度は全員の声が揃った良い返事だった。
「いつもそう言う返事をお願いします。挨拶と返事は大事です。
器楽部は『ユルイですけどぬるくは無い』です。あれこれと決まりは無いですが、自分たちが今何をすべきか? は常に問われます。昨年、入部した未経験者はこの一年で素晴らしく成長しました。『上手くなりたい!』『もっといい演奏をしたい』それを目標に『自分は今何をしなければならないか?』を考えて実行する。それがこの器楽部です」
僕は冴子の話を聞きながら前部長の千龍さんの言葉を思い出していた。
『うちの部はぬるくはないがユルイぞ』
確かシモ・ハヤン・千恵蔵の三人が入部した時に千龍さんが放ったひとことだ。
冴子もちゃんと思えていた。先輩が作った伝統はしっかりと受け継がれているようだ。
「それでは始めましょう。まずはヴァイオリンのリーダー結城瑞穂。彼女はこの部のコンサートマスターです」
そう言うと冴子はニコッと笑って指揮台から降りた。
いつもの様な上から目線で見下されるより、こうやて敢えて笑顔で言われる方が数倍不気味だという事を僕は知った。
冴子は新たな凄みを手に入れたようだ。はっきり言ってボスキャラ感が増した。このまま成長すると間違いなくラスボス級になると思われる。
アカン……そんな事を考えていたら笑いがこみあげて来た。
「はい。ヴァイオリンの結城瑞穂です。副部長とコンマスを兼務しています」
ヴァイオリンを抱えて瑞穂は指揮台に上がると一礼してから話し出した。
「誰もが知っているヴァイオリンは第一バイオリンと第二ヴァイオリンと分かれています。第一……ファーストバイオリンの担当は私ですが、セカンドヴァイオリンは二年生の東雲小百合がリーダーです。
何故二つに分かれているかと言いますと、ヴァイオリンは室内楽やオーケストラで演奏する時は役割分担でパートを分ける必要があるからです。ファーストはメロディを、セカンドは伴奏を担当する事になります。
この器楽部に於いては基本的に未経験の一年生は第二に所属してもらいます。そこで未経験者の基本的な練習をまとめて行います。初心者の方はそこで徹底的に基礎を学んでもらいます。ヴァイオリン希望の方よろしくお願いしますね」
彼女はよどみなくそう言うとまた一礼してから指揮台から降りた。
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※この物語はフィクションです。
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