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伴奏
宏美との電話
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その夜、宏美に電話して冴子に伴奏を頼まれた事を話した。
すると
「あ、それね。最初は私に声を掛けて来たん」
と宏美があっけらかんと教えてくれた。
「え、そうなん?」
僕は驚いて声を上げた。
「うん。でも、冴ちゃんが本当に伴奏して欲しいのは亮ちゃんやって分かってたん」
「なんでそんなん分かんの?」
「だってヴァイオリン教室の時も冴ちゃんはいつも亮ちゃんに伴奏頼んでいたやん。絶対に他の人に頼む事無かったし、私も滅多に頼まれなかったもん」
「そうやったけ?」
「そうやったよ。ホンマそういうところは亮ちゃんは鈍感やからね」
と宏美に笑いながら言われたが、『そういうところ』に関してはほとんど諦められている事がよく伝わってきた。
――これって間違いなく勘トロ認定されとるよなぁ――
「すまん……」
と僕は素直に謝った。
宏美にそう指摘されると返す言葉がなかった。
「だから私の方から『亮ちゃんに頼んだら?』って言(ゆ)うてあげたん」
「えぇ?!……そうなんやぁ……」
――宏美は当て馬か? お前はそれでええんかぁ?――
と聞きたくなったが、それを聞くと更に墓穴を深々と掘りそうな気がしたので止めた。
「だって目の前に冴ちゃんのヴァイオリンも良く知っていて、今まで何回も伴奏した事があって、全国大会で優勝するような凄いピアニストが目の前におったら推薦せえへん訳にはいかへんやん?」
と宏美もどこかの誰かと同じような事を言った。
僕は唖然としながらそれを聞いていたが
「なんかアカンかった?」
とあっけらかんと宏美に聞き返されると
「いや別に……」
と応えて沈黙するしかなかった。
暫く僕が黙っていると宏美が
「あのね、亮ちゃん。冴子の事……本当によろしくね。冴子のヴァイオリンをちゃんと受けてあげてね」
と頼んできた。
「ああ、何とか冴子の期待に沿える演奏をするわ」
と僕は応えた。
勿論、僕は冴子の期待以上の演奏をしようと思っている。ただ今の時点では、それがどんな演奏になるか、どんな演奏をすれば良いのかはまだ漠然としていた。
「うん。亮ちゃんと冴ちゃんが結果を出して帰ってくるのを待ってるから……ちゃんと帰ってきてね」
と宏美は言った。
――問題はこの二人の期待にどうやって応えるかやな――
「うん。待っといて」
と僕は応えたが、なんとなく宏美にも軽くあしらわれてしまった感がその時は拭えなかった。
すると
「あ、それね。最初は私に声を掛けて来たん」
と宏美があっけらかんと教えてくれた。
「え、そうなん?」
僕は驚いて声を上げた。
「うん。でも、冴ちゃんが本当に伴奏して欲しいのは亮ちゃんやって分かってたん」
「なんでそんなん分かんの?」
「だってヴァイオリン教室の時も冴ちゃんはいつも亮ちゃんに伴奏頼んでいたやん。絶対に他の人に頼む事無かったし、私も滅多に頼まれなかったもん」
「そうやったけ?」
「そうやったよ。ホンマそういうところは亮ちゃんは鈍感やからね」
と宏美に笑いながら言われたが、『そういうところ』に関してはほとんど諦められている事がよく伝わってきた。
――これって間違いなく勘トロ認定されとるよなぁ――
「すまん……」
と僕は素直に謝った。
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「だから私の方から『亮ちゃんに頼んだら?』って言(ゆ)うてあげたん」
「えぇ?!……そうなんやぁ……」
――宏美は当て馬か? お前はそれでええんかぁ?――
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「なんかアカンかった?」
とあっけらかんと宏美に聞き返されると
「いや別に……」
と応えて沈黙するしかなかった。
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「あのね、亮ちゃん。冴子の事……本当によろしくね。冴子のヴァイオリンをちゃんと受けてあげてね」
と頼んできた。
「ああ、何とか冴子の期待に沿える演奏をするわ」
と僕は応えた。
勿論、僕は冴子の期待以上の演奏をしようと思っている。ただ今の時点では、それがどんな演奏になるか、どんな演奏をすれば良いのかはまだ漠然としていた。
「うん。亮ちゃんと冴ちゃんが結果を出して帰ってくるのを待ってるから……ちゃんと帰ってきてね」
と宏美は言った。
――問題はこの二人の期待にどうやって応えるかやな――
「うん。待っといて」
と僕は応えたが、なんとなく宏美にも軽くあしらわれてしまった感がその時は拭えなかった。
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※この物語はフィクションです。
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