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伴奏
全体練習
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「はい。ストップして!」
突然ダニーが演奏を止めた。
今、合同練習で課題曲として練習しているのは、メンデルスゾーン『真夏の夜の夢よりスケルツォ』である。
この曲はメンデルスゾーンが演奏会用序曲として作曲したものである。元々はわずか十七歳のメンデルスゾーンがピアノの連弾用に作曲した曲であるが、オーケストラ用にすぐに編曲し直したものである。
曲名が示す通り、シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』が元になっている。
演奏の手が止まり音楽室が静まり返る。部員は次のダニーの言葉を固唾を飲んで待っていた。
ダニーが楽譜黙って見ている。おもむろに視線を上げると
「……フルート。ここは入る前から意識して呼吸を合わせてください」
と音楽室にダニーの声が響いた。
「はい!」
瀬戸千恵子と松尾萌の二人が声を合わせて返事をした。
「それではフルートだけ今のところを吹いてみてください」
とダニーは続けて指示を出した。
二人は同じように頷くとダニーに指示された箇所を吹いた。
音楽室にフルートの音色が流れる。
「はい。止めて。いい感じで揃っています」
ダニーは満足そうな表情を浮かべてそう言うと続けて
「それと萌サン、拍をとる時に身体で刻まないでくださいね。体が動くのは良いですが、上下運動はダメですね。歌口の位置が変わります。それは音に影響しますね。そこを注意してもう一度吹いていてください」
と言葉を付け足した。
「はい!」
萌ははっきりとした口調で応え、千恵子と一緒に同じ個所を吹き直した。
黙ってそれを聞いていたダニーは二人の演奏が終わると
「はい。いいですね。その感覚を忘れないでください」
と笑顔で言った。そして
「それでは皆さん、もう一度同じところから始めます」
とダニーはまた指揮棒を振り上げた。
僕にとっては久しぶりの器楽部全体での練習である。
何度かは僕も練習には参加していたが毎日ではない分、ある意味心地よい緊張感を感じながら弓を引いていた。
感傷に耽っていた訳ではないが今は冴子の専属ピアニストみたいになってしまっているので、久しぶりに味わう雰囲気を楽しんでいたのかもしれない。
そんな僕の想いとは関係なく、音楽室に美しい旋律が流れていく。いい景色だ。
そして気が付けば部活も終わり、ダニーの作り上げた音の芸術も終焉を迎える。
「ありがとうございました!」
との部員全員の声とともに全体練習が終わった。
突然ダニーが演奏を止めた。
今、合同練習で課題曲として練習しているのは、メンデルスゾーン『真夏の夜の夢よりスケルツォ』である。
この曲はメンデルスゾーンが演奏会用序曲として作曲したものである。元々はわずか十七歳のメンデルスゾーンがピアノの連弾用に作曲した曲であるが、オーケストラ用にすぐに編曲し直したものである。
曲名が示す通り、シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』が元になっている。
演奏の手が止まり音楽室が静まり返る。部員は次のダニーの言葉を固唾を飲んで待っていた。
ダニーが楽譜黙って見ている。おもむろに視線を上げると
「……フルート。ここは入る前から意識して呼吸を合わせてください」
と音楽室にダニーの声が響いた。
「はい!」
瀬戸千恵子と松尾萌の二人が声を合わせて返事をした。
「それではフルートだけ今のところを吹いてみてください」
とダニーは続けて指示を出した。
二人は同じように頷くとダニーに指示された箇所を吹いた。
音楽室にフルートの音色が流れる。
「はい。止めて。いい感じで揃っています」
ダニーは満足そうな表情を浮かべてそう言うと続けて
「それと萌サン、拍をとる時に身体で刻まないでくださいね。体が動くのは良いですが、上下運動はダメですね。歌口の位置が変わります。それは音に影響しますね。そこを注意してもう一度吹いていてください」
と言葉を付け足した。
「はい!」
萌ははっきりとした口調で応え、千恵子と一緒に同じ個所を吹き直した。
黙ってそれを聞いていたダニーは二人の演奏が終わると
「はい。いいですね。その感覚を忘れないでください」
と笑顔で言った。そして
「それでは皆さん、もう一度同じところから始めます」
とダニーはまた指揮棒を振り上げた。
僕にとっては久しぶりの器楽部全体での練習である。
何度かは僕も練習には参加していたが毎日ではない分、ある意味心地よい緊張感を感じながら弓を引いていた。
感傷に耽っていた訳ではないが今は冴子の専属ピアニストみたいになってしまっているので、久しぶりに味わう雰囲気を楽しんでいたのかもしれない。
そんな僕の想いとは関係なく、音楽室に美しい旋律が流れていく。いい景色だ。
そして気が付けば部活も終わり、ダニーの作り上げた音の芸術も終焉を迎える。
「ありがとうございました!」
との部員全員の声とともに全体練習が終わった。
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※この物語はフィクションです。
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