教室の悪魔

ひまり

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はじまり

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次の日
朝から教室はざわついていた。


「えー!最悪~!!!」

テストの結果が張り出され、それに伴い主要の委員会、分担クラス表などが発表されていた。

女子の1位は結菜だった。

その隣には、"クラス委員""特進クラス"
と続いていた。


結菜は結果を見てとりあえず胸を撫で下ろした。

この学校では、前期と後期に同じようなテストがあり、その結果で男子女子それぞれクラスで一位の生徒は学費や学食代等が免除されるのだ。


結菜の家は裕福ではない、
この学校に決めた理由はこの制度があるからだった。


幸い勉強は人より少しできたので、結菜にはもってこいだった。


自分の結果だけを見て、満足していた結菜は気が付かなかった。

周りが冷たい目で自分を見ていることを。



「……颯くんかわいそう。」


「ザ、ガリ勉って感じよな!話通じなさそー」

「ってか、颯、頭いいんだな!」


まさか、と思い、
同じく一位で張り出されている男子の欄の名前を見ると颯の名前があった。


ちょうどその時
あの3人が教室に入ってきた。


「あ!そうじゃん!テストの結果!みようよ!」


黒板の前にいたクラスメイトは3人のためにそっと場所を開けた。


「………え、……」


「意味わかんないんだけど。」



キーンコーンカーンコーン…

その音と同時に奥田先生が入ってきた。



その時だった。


「……っ、グス……」


「…ぇ、」

クラスがシン、と静まり返る。
遥が泣き始めたからだ。


「おい、斉藤。どうした」


「…っ、先生……、私、知ってるんです。」


「どうしたどうした。」


「…新川さんが、カンニングしてました」


「…ぇ、、、?」


よく見ると、2位は遥だった。

もし、結菜のカンニングが本当だとしたら1位は遥になる。


「………、ちょ、また後で話聞くから一旦みんな席付け!あと、このこと確定するまでは、口外するなよ!わかったか??」


疑惑の視線が結菜に向けられた。


結菜は俯くことしかできなかった。


朝のHRの内容なんて覚えていなかった。


気がつくと肩を奥田先生に叩かれていた。


「……誤解だろ?どちらにしても、話聞くから」


周りに聞こえないような声で耳元でそう囁かれて、
なぜか涙が出てきた。


どうせ信じてくれないと思っていたからだ。


「泣くな、泣くな、」


周りは奥田先生が何を耳元で行ったかはわからないが、結菜が泣いたことで、
なおさらカンニングの可能性が上がったと、話し声が聞こえた。


結菜は奥田先生に頭を撫でられ、さらに泣いてしまった。


カンニングの疑いをかけられたことよりも、
頭を撫でられ、安心したという気持ちの方が大きかった。

ちらっと
美玖の方を見るとすごい顔で結菜を睨んでいた。


結菜はとりあえずそのまま先生に連れられて教室を出た。


「もう泣くなって、、、とりあえず俺1.2限は授業ないから話聞くからさ」


気がつくともう化学準備室についていた。

昨日はあんなに長く感じたのにあっという間だった。



そこは思ったより広かった。

いろんな薬剤が置いてある棚を通り過ぎると


まるで部屋のようにソファがあり、その前にはローテーブル。
2人がけの丸テーブルと椅子もあった。


角にはデスクもある。


ソファに座るように促された。

「なんか飲むか?」


「…………」


結菜は何も話す気にならなかった。

そもそも泣いたのなんて久しぶりだった。


しばらくして、ソファの前のローテーブルにコトンとココアが置かれた。


奥田先生は少し離れたデスクの椅子に腰掛けた。



「…ありがとうございます」


結菜の言葉を聞いて、
奥田先生は軽く笑うと、
話始めた。


「まぁ、そんな気にすんな。どうせ誤解だろう、証拠もないし、何より入学試験の時と問題の解き方が一緒だからカンニングではないと俺は思ってるけど、、、カンニングなんて、してないんだよな?」


「…してないです。」


「なら良かった。新川の問題の解き方は他の生徒と違って特殊だから、カンニングはありえないだろうと思ってたよ」


「………。そうなんですか」


「まぁ、とりあえず、他のみんなにはうまく言っておくから…。とりあえずゆっくり過ごしな」


「…ありがとうございます。」


奥田先生はデスクに向かった。


結菜はとりあえずホッとしたのか、力が抜けてしまっていた。



キーンコーンカーンコーン

気がつくと1限が終わっていた。



…コンコン


「ぁ、きたきた。新川はここで待ってていいから」


誰かが準備室の扉をノックした。


「先生~!どうしたんですか?」


美玖の声だ。


「実は清水にはお願いがあって呼んだんだ」


結菜は部屋の入り口で話している2人の声に耳を傾けた。


「えーなになに?」


「カンニングの件だけど、証拠もないし、斎藤の勘違いの可能性が大きいんだ。だけどそれをクラスで言ってしまうと斎藤が嘘をついたみたいになっちゃうだろ?」


「……そっか。」


「そうなんだよ、だからさ、清水にお願いがあって、斎藤の口から見間違いだったかもってみんなに言って欲しいんだよな。」


「………うーん。遥からってことだよね?」


「そう。その方がこの先いいと思うんだよ。こんなこと清水にしか相談できなからお願いしてるんだけど、無理かな?」


「………うーん。。。」


「お願い!清水のこと本当に頼りにしてるんだよ」


「………っ、、、わ、わかった!!いいよ!じゃあ教室戻って遥に伝えてくる!」


嬉しそうな声が聞こえて、しばらくすると美玖は、準備室を出て行った。


結菜がいる場所からは、何が起こったかはわからなかった、


ため息をつきながら奥田先生はデスクに戻ってきた


「…ごめんなさい」


結菜は自分のせいでこうなったんだと思い、謝った。


「ん?いやいいよ別に」


何が起こったか気になったが、聞いてはいけない気がして、聞けなかった。


「…私も、教室戻ります」


「戻れるか?3限目の俺の授業で説明するからその時でもいいぞ、ゆっくりしていけ、ココア嫌いか?」


「………好きです、ありがとうございます」


結菜は口を一度もつけないのも悪いと思い、ココアを飲んだ。


入れて貰ったときは湯気が立っていたが今はもうだいぶ緩くなっていた。


「良かった、寝ててもいいから、俺少し仕事するからゆっくりしてけ」


「…はい。」



ホッとしたのかなんなのか、
スッと体の力が抜けるような感覚になっで結菜はソファにもたれかかるとそのまま眠ってしまった。


_____

「お母さん」


いつもの夢だ。


お母さんは優しくて、いつも結菜のことをギュッと抱きしめてくれた。


_____

「……新川、おきろ」


ふと気がつくと、ほおを涙が伝っていた。


「大丈夫か?うなされてたけど」


「大丈夫です」


教室に戻るのは気が重かった。


「大丈夫!気にすんな!うまくいくから」



教室が近づいてくると奥田先生は結菜を元気づけた。



チャイムが鳴る少し前、
教室に2人で入る。


すると教室は、静まり返った

でも、先ほどの疑惑の視線とは違う視線が結菜には向けられていた。



「奥田先生、ごめんなさい、私の勘違いだったみたい。。。」


「……そうか!なら良かった!ちょうど証拠もなかったからどうしようかと思ってたんだ」


「ごめんなさい」


「はい!みんなも、この話は終わりねー!あと、清水俺じゃなくて謝るなら新川に謝れ、」


遥の顔は明らかに引き攣っていた。


「………ごめんね」


「……、…」


遥や美玖たちの視線が怖くて、結菜は頷くことしかできなかった。


「はい!これでおしまい!じゃあ席についてー」


結菜も席に着こうとしたが、腕を掴まれた。


「…ぇ、」


満面の笑みで奥田先生は結菜の頭を撫でた。


「良かったな!誤解が解けて!」



「………はい。」


正直、結菜に向けられている視線は、とても怖いものだった。

なんで先生がみんなの視線が集まっている中でそんなことをしたのか理解ができなかった。


結菜はさっきまで信頼していたのになぜか、奥田先生のことを一気に怖いと感じていた。



「……なにあれ。」


「…キモ。」


美玖や、遥の声じゃない。

何かあったんだ。

私がいない間に。。。


何か、よくないことが広まっている、そんな気がした。


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