婚約者にフラれたので、復讐しようと思います

紗夏

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第6章 追い詰められたネズミとネコ

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日曜日、約束の時間ぴったりに、透はうちに現れた。


通勤に使ってるのより、もうちょっと上質のスーツに身を包んだ透は、少しやつれていた。まあ、血色良かったらおかしいよね。


上がって来るなり、透のご両親は、いきなり土下座でもせんばかりの勢いで、謝り始めた。


「この度はうちの息子がとんだご迷惑を…」
「本当に申し訳ないことをして…」

透のお父さんとお母さんには、何の責任も過失もないのに。うちの親も余りに恐縮されちゃって、逆に困って、「まあまあ、人の心は縛れないですから」なんていう始末。


こんだけお父さんたちが申し訳なさそうにしてるのに、当の本人はしれーっとしてる。どういう神経してるんだろ。


透のお母さんから、白井家とのやりとりも少しだけ聞けた。


白井家では、寧ろ娘のデキ婚を歓迎ムードらしい。子だくさんのおうちで、六男二女の美雪は2人目の女の子。うーん、すごいな。

産めよ増やせよ、って戦後か。


美雪が既に妊娠中なこともあり、また別の女性と婚約してたっていう事実もあるから、結婚式はしない予定らしい。やったとしても、ドレスとタキシード着ての写真撮影くらいって。

うん、その方がいいんじゃないかな、って思う。少なくとも、会社の人間はそんな式行きにくいよ。


「咲良ちゃん…。今回は本当になんて言っていいのか…。私、咲良ちゃんが娘になってくれる日を楽しみにしてたのに」

透のお母さんに手を握られて、涙ながらに訴えられて、却って困ってしまう。何もなければ、あと3か月でその予定だったのに。


「…咲良には悪いとは思ってるよ」

母親の涙を見て、透は今日初めて、謝罪の言葉を口にした。


「悪いじゃないわよ、あんたは! 私たちだけでなく、会社の人にまで迷惑掛けて…」
「それなりの報いは受けてるよ」
「え?」

柏木課長、何か言ったかしたのかな、透の思わせぶりなセリフが気にかかった。
けど、当の本人はいたたまれなくなったらしい。


「後は咲良と話し合いで決めるよ。咲良」
「え」
「ここじゃあれだから、外で話そう」

透に言われてふらふらついて行ってしまったのは、私自身も透との醜いやりとりを見せたくなかったから。

だけど、この時実家を出たことを、後で悔やむことになるんだけれど。



透は迷いのない足取りで、近くの裏通りのレストランに入っていく。予め予約してあったんだろう、奥の個室に通された。

食事をする時間でもないのに、ワインとグラス、それにチーズも出てきた。赤ワインに合いそうな濃いブルーチーズ。苦手なんだけどな。


「せっかくだから、乾杯でもしよっか」

ワインの入ったグラスを傾けて、透が言う。


「…何に乾杯? そういう気分じゃないんだけど」

言いながら、私は冴木さんが作ってくれた書類をテーブルに出した。


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