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第40話 ごめんなさい
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地に伏す少女目掛けて太い幹が叩き付けられた。
鈍い音が立て続けに響く。
魔獣は幼子のような無邪気さと残酷さを持って、まるでボールを蹴るかのように少女を蹴り上げた。
少女が地面と水平に飛び、岩壁にぶち当たる。
「ゲギャギャギャ!」
魔獣は嗤う。
獰猛に。
無邪気に。
楽しそうに。
「………………」
岩壁にぶつかり自身の血の海に沈む少女の呼吸も浅く、目は虚ろ。
クレハは、もはや呻き声を上げることすら出来なくなっていた。
虚ろな視界に映る少年は、その肩が微かに上下している様子から事切れているわけではないだろうが、目覚める気配もまた一向にない。
そのことに安堵しながらも、クレハの心にはやり切れない思いが募る。
自分はこんなところで終わるわけにはいかない。
まだやらなければならないことがある。
しかし、現実は残酷だ。
クレハの思い全てを踏み砕く足音が、今まさに迫ってくる。
地鳴りを伴い、下卑た笑い声を上げているデビルゴート。
パラパラと土埃がクレハにかかり、美しい顔が土に塗れる。
(ルーイ様……)
いよいよ飽きたか、それとも次の玩具に興味が移ったのか。
デビルゴートは地に伏すクレハの前に立つと、その丸太のような足を上げる。
あとは力任せに踏み下ろすだけで、クレハの頭は落ちたトマトのようにぐしゃぐしゃに潰れるだろう。
「ゲギャギャギャ」
高笑いをし、目の前の矮小な存在を終わらせる一撃が――今。
(ごめんなさい……)
――踏み下ろされる。
間もなく訪れるだろう死を前に、クレハは目を堅く瞑り、最後に自分の愚かさの象徴である、巻き込んでしまった少年のことを強く思った。
(ルーイ様!)
破壊がクレハの頭部に至る。
その寸前。
――業ッ!
突如、風が吹き荒れた。
クレハは一瞬、死とはそういうことなのかと感じた。
世間で言われる走馬灯が駆け巡ったのかと。
痛みなどなく、ただ眩い光と風が吹き荒れたような感覚に支配される。
それが死なのかと錯覚した。
だが、光も風も一向に収まる気配はなく、死の間際に訪れるだろう一瞬の痛みすらも感じない。
そして、自分の五感は今だ健在であることに違和感を覚えた。
「……?」
薄く目を開ける。
目の前に広がるのは天国か地獄か、はたまた三途の川とやらか。
――いや、無関係の少年を巻き込んでしまった時点で自分の行先は地獄で確定だろう。
きっとそこには地獄の閻魔大王がいて、無関係の少年を巻き込んだことを酷く糾弾されるに違いない。
――しかし、実際は閻魔大王どころか自分はまだ死んですらいなかった。
目の前の光景は先ほどと何も変わっておらず、符の明かりが淡く灯された洞窟の一角。
そこで今まさに、自身の頭を砕こうとしていたデビルゴートの足は止まっていた。
そして、デビルゴートの背後。
〝封印の祠〟の前に立つ一人の少年の姿が在った。
少年は祠の前に突き刺さっている木の棒を左手に握り、その場に悠然と立っている。
俯いた顔からその表情は読み取れない。
眩い光は木の棒の天辺、白藍色の鉱物から発せられており、吹き荒れる風は少年を中心に巻き起こっているようだった。
その光景を目の当たりにし、少女は血とともに声を漏らした。
「ルーイ……様……?」
鈍い音が立て続けに響く。
魔獣は幼子のような無邪気さと残酷さを持って、まるでボールを蹴るかのように少女を蹴り上げた。
少女が地面と水平に飛び、岩壁にぶち当たる。
「ゲギャギャギャ!」
魔獣は嗤う。
獰猛に。
無邪気に。
楽しそうに。
「………………」
岩壁にぶつかり自身の血の海に沈む少女の呼吸も浅く、目は虚ろ。
クレハは、もはや呻き声を上げることすら出来なくなっていた。
虚ろな視界に映る少年は、その肩が微かに上下している様子から事切れているわけではないだろうが、目覚める気配もまた一向にない。
そのことに安堵しながらも、クレハの心にはやり切れない思いが募る。
自分はこんなところで終わるわけにはいかない。
まだやらなければならないことがある。
しかし、現実は残酷だ。
クレハの思い全てを踏み砕く足音が、今まさに迫ってくる。
地鳴りを伴い、下卑た笑い声を上げているデビルゴート。
パラパラと土埃がクレハにかかり、美しい顔が土に塗れる。
(ルーイ様……)
いよいよ飽きたか、それとも次の玩具に興味が移ったのか。
デビルゴートは地に伏すクレハの前に立つと、その丸太のような足を上げる。
あとは力任せに踏み下ろすだけで、クレハの頭は落ちたトマトのようにぐしゃぐしゃに潰れるだろう。
「ゲギャギャギャ」
高笑いをし、目の前の矮小な存在を終わらせる一撃が――今。
(ごめんなさい……)
――踏み下ろされる。
間もなく訪れるだろう死を前に、クレハは目を堅く瞑り、最後に自分の愚かさの象徴である、巻き込んでしまった少年のことを強く思った。
(ルーイ様!)
破壊がクレハの頭部に至る。
その寸前。
――業ッ!
突如、風が吹き荒れた。
クレハは一瞬、死とはそういうことなのかと感じた。
世間で言われる走馬灯が駆け巡ったのかと。
痛みなどなく、ただ眩い光と風が吹き荒れたような感覚に支配される。
それが死なのかと錯覚した。
だが、光も風も一向に収まる気配はなく、死の間際に訪れるだろう一瞬の痛みすらも感じない。
そして、自分の五感は今だ健在であることに違和感を覚えた。
「……?」
薄く目を開ける。
目の前に広がるのは天国か地獄か、はたまた三途の川とやらか。
――いや、無関係の少年を巻き込んでしまった時点で自分の行先は地獄で確定だろう。
きっとそこには地獄の閻魔大王がいて、無関係の少年を巻き込んだことを酷く糾弾されるに違いない。
――しかし、実際は閻魔大王どころか自分はまだ死んですらいなかった。
目の前の光景は先ほどと何も変わっておらず、符の明かりが淡く灯された洞窟の一角。
そこで今まさに、自身の頭を砕こうとしていたデビルゴートの足は止まっていた。
そして、デビルゴートの背後。
〝封印の祠〟の前に立つ一人の少年の姿が在った。
少年は祠の前に突き刺さっている木の棒を左手に握り、その場に悠然と立っている。
俯いた顔からその表情は読み取れない。
眩い光は木の棒の天辺、白藍色の鉱物から発せられており、吹き荒れる風は少年を中心に巻き起こっているようだった。
その光景を目の当たりにし、少女は血とともに声を漏らした。
「ルーイ……様……?」
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