ウィズウィルス

幽零

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スチール缶?

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人生で初めて、引き金をひいたあの瞬間から数時間は経っただろうか?まあ、もしかしたら数十分なのかもしれないし、それよりもっと短い時間かも知れない。俺は長いこと研究施設に閉じ込められて体内時計は狂ってるだろうし、アイツと数週間過ごしたとはいえ、完全に時間に対する感覚が戻ったわけではない。それに、あたりを見渡しても人類の文明はもう無い。時間を測る時計なんて物は、今やただのオブジェクトと何ら変わりない。

ともあれ、あれから時間が経っていることには変わりがない。俺はあれから歩いては少し休み、手頃な的を見つけては小銃の練習をしていた。初めて小銃を撃った時、たまたま「三連発」の状態になっていたが、練習の時は「単発」に切り替えて練習している。理由としては、弾丸の節約もあるのだが、毎回「三連発」にしていると俺の手が反動に耐えられなくなるようで、すでに血豆のようなものができてしまっていた。とりあえず膿んでしまっては大変なので、施設から出るときにリュックに詰め込んできた包帯を巻いて処理した。

とまあ、文字通り「血の滲むような」練習の成果か、「単発」状態ならそれなりに狙い通りに当てられるようになって来た。


「……にしても、のどかだなあ」


人類がほとんど居なくなった世界なのに随分と呑気なことを言っている自覚はある。だけど、本当にそう言いたくなるぐらい何にもないのだ。

施設を出た当初は「謎の生命体に気をつけよう‼︎」とか意気込んでいたが、よくよく考えたら、人類をここまで絶滅寸前まで追い詰めたのは、『VTIH』という殺人ウイルスであって、宇宙人とかの襲来とかではないのだ。

命の危険が今の所ないのは非常にありがたい。助かった命を無駄にするような事をするほど、俺は病んでいない。


木々が生い茂っている道をトントンと歩き続けると、道端に円柱の形をしたスチール缶のようなものが落ちていた。

「…何だこれ?」

それは自販機とかでたまに見かける、500mlのジュースの缶のようだった。ただ見かけによらず意外と重い……中身が入っているのだろうか?

……まあ入ってたとしても飲まないけど。

缶に生えた苔を落としていくと、緑色に光るボタンのようなものがあることに気がつく。

「缶にボタン?」

躊躇いなく押す。プッシュプッシュ

すると、手にしたスチール缶は突然ガタガタと動き出して、両脇から2本ずつ足のようなものが飛び出した。

スチール缶は俺の手を離れ、自前の4本足で辺りをチョコチョコ歩き出すと、先ほど押したボタンをこちらに向けた。

「ピピッ…スリープモードを解除……既存のデータを修復中……マスターと思しき人物に該当なし……目前の人物を新たなマスターとして認識します……」

「お…オイオイ……」

「ピピッ…新マスターの声帯を登録…ハジメマシテ!私は【自立学習型万能小型ロボット】デス!マスター、私に命名をお願いシマス!」


……なんかよく分からん機械を起動してしまった…


「え~と…?お前は何なの?」

「【オマエ】ではアリマセン!【自立学習型万能小型ロボット】デス!命名をお願いします、マスター」


…なんか命名しないといけんのか?う~ん……


「お前みたいなカンカンにつける名前とかいきなり言われてもなあ…」

「命名【カンカン】……登録完了しまシタ!」

「あ~と?うん?」

なんか勝手に登録されたが…まあよしとしよう…

「で、聞くけどお前は何なんだ?」

「カンカンは【自立学習型万能小型ロボット】デス。マスターの指示に従い、さまざまな機能の展開が可能デス」


……まあ、とにかく便利なロボットが仲間になったってことでいいのか?万能ロボットって、てっきり猫型なのかと思ってたが。


「タビハミチズレ、ヨハナサケー!これからお供しますマスター」


……何だか変なロボットだ…


見た目がスチール缶な万能ロボット、『カンカン』が仲間に加わった。






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