はい、そうです。敗走です

幽零

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ゲタゲタときて、キラキラ

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「……で、だ」

フォルトが廃墟の壁に背を預けつつ話す。

「現状をまとめよう。『勇者候補』の募集など全くの嘘。そして、その女のせいで王国から指名手配された」

「もぐもぐ、ヘェ~大変そうだねフォル兄」

「お前のせいでもあるんだが?」

ミシ……と、五指をハイサルの顔面にめり込ませる。


いまいち危機的状況に陥っている事を理解できていないのか、楽観的なハイサルは顔面上部を鷲掴みにされつつも、モグモグと薬草を食べ続ける。


「それで、フォル兄これからどうするの」

「……王国に着いたらとりあえず鍛治の雇われでもしようと思ったが……」

鋭い目がトキシーを捉える。

「……トキシー、お前は僧侶じゃなかったのか?」

「あらあら~?わたくし僧侶には間違いありませんわ~。ただ、副業みたいなもので~……」

手のひらを合わせて、穏やかに微笑む。

「本業は『ネクロマンサー』ですわね~」

ドロぉっ……という効果音が付きそうな表情を浮かべるトキシー。

「ヘェ~、すごいんだねー」

「……死者蘇生は『不可逆の真理』だろう。教会から真理冒涜で異端にされるぞ」

「それはもうされてます~」

「……されてるのかよ」

フォルトは、がっくりと肩を落とす。

「……で、教会と王国の指名手配は別だろう?何をやったんだお前」

「ん~、死体を拝借しまして~、小綺麗にした後で街に放って~、どれくらいの期間バレないかな~って実験してましたわ~」

「お前、街を生きた死体だらけにしてたのか……殆ど国家反逆罪じゃないか」

「もぐもぐ……で、トキシーは何でそんな事したの?」

ハイサルの質問に、少し間を置いて答えるトキシー。

「それはですね、生き返らせたい人がいたのですよ~」

「……誰を?」

「それは……」


途端に、複数人の声が聞こえる。しゃがれた。荒くれのような声だ。




「ガキと女、それと男……冒険者か?」

先頭に立つ男は品定めするように、視線を順番に舐める。

「……何のようだ」

フォルトが凄むが、男の取り巻き達はゲタゲタと笑う。

「おいおい!団長に凄んでもだぜ?」

「どうする団長?」

(……コイツら、盗賊団か)

二人を庇うようにフォルトが前に出る。取り巻き達は何とかなるかも知れないが、団長と呼ばれたこの男は違う。


フードとスカーフで表情を隠し、全身を覆うローブは体の輪郭を隠している。足捌きや雰囲気からしても、この男だけは異質だ。


「……嫌な世の中になったもんだな」


団長と呼ばれた男は、低い声で続ける。

「王国近辺じゃ、生きる為の盗みも出来ねぇ。その為に……」

暗い雰囲気のまま、ローブの下から剣とナイフを抜刀した。

「こういう所で鉢合わせた女子供も殺さなきゃいけねぇ。恨むなよ」

団長の声に合わせて、他の盗賊も獲物を取り出す。三人は包囲されるように追い詰められる。

「あらあら~……」

「あれ?もしかしてピンチ?」

「……?おいガキ。ずいぶん余裕そうだな」

「えー、だって魔物じゃないしー」

「……お前、盗賊に刃物向けられるより魔物の方が苦手なのかよ……」

相変わらず変な所で図太いハイサル。その態度が癪だったのか、盗賊団長は若干イラついた声色で言い放つ。

「おいお前ら、生皮まで剥いでやれ。」

盗賊団長の言葉で、取り巻きはゲタゲタと笑う。

「え!?このままじゃ剥製にされる!?せめて高く売ってね!」

「どこまで空気が読めないんだお前……」

「あらあら~」

ナチュラルに煽っている事に気が付いていないので、結構冗談抜きで盗賊団はピキっていた。

「……のやろう…」

「……ガキィ…」

このままだと本当に剥製にして売り飛ばされかねない。



……が、そうはならなかった。




「うん、流石に見過ごせないな」

「あん?」

……っと盗賊団長が反応する時には、もう取り巻きは全員地べたを舐めていた。

「ッッ!?」

突然現れたのは、白金の鎧を身に纏った剣士のような男。神々しくてキラキラと光っているようにすら感じる。

「何だおま……」

言い終わる前。


トンッ……と、顎に一回。それだけ。



それだけで、まるで糸が切れたように盗賊団長はバッタリと倒れた。



「大丈夫だったかい?」



この輝く剣士様のおかげで、とりあえず危機は去ったらしい。


「いや誰っっ!?!?」




……ハイサル、ごもっともである。



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