お題箱 集作

セン

文字の大きさ
2 / 3

お題箱消化②

しおりを挟む


 「もうずっと前から消えてしまいたかった」

 学校の屋上で、俺は親友マブダチとも言える目の前の男に向かってそう言い放った。
 本当は”ずっと前から”だなんて嘘だ。今だって、奴が「そうか」と冷たく言い放たない限りは死ぬ気は無い。
 しかし、目の前のソイツは今までに無いくらい青ざめた顔をしている。何時いつもは冗談だろと言ってどついてくる勢いだと言うのに。
 なんというか、(心配してるコイツに対しては失礼だけども)滑稽こっけいだ。いつにも増して滑稽だ。気を抜くとうっかり吹き出してしまいそうな程に。
 そうこう考えていたら奴が口を開いた。

 『ずっと前からって、いつ頃からなんだ?何故僕に言わなかった。いつも隣に居ただろう。…もしかして、僕がお前に何かしたのか?無意識にお前を追い詰めていたのなら謝るし、これからは課題だって見せる。先生に怒られに行くのもちゃんと一緒に行くし、帰りだって、負けたら逃げずにおごるし、それから…』




______堪らず俺は吹き出した。

 目の前のコイツは目を白黒させているがどうにも解釈かいしゃく見当違けんとうちがいで笑わずには居られなかった。同時に”いや、そんな些細ささいな事で死なねぇよ”とツッコミたかったが笑い転げてそれどころじゃ無かった。

 俺が落ち着いた後、流石さすが可哀想かわいそうだと思い本当は死ぬ気は無かった事、それからそんな些細な事では死なない事を簡潔かんけつに、いつも通り笑って言った。
 言い終わった時のソイツの顔は怒気どきを含んでいてお前は般若はんにゃかと言わんばかりだったが、どうやら安堵あんどが勝ったようだ。(正直ここで怒って突き落とされたら、とか思ってしまった事はだまっておこう)


 屋上から離れ校舎を出て、校門をくぐる手前、数歩前を歩くソイツが足を止め、こちらを振り返った。一瞬ドキッとして心臓が飛びねたが、いつもは見ないやわらかい顔をして、


 『お前の事だ。そうぐには死なないだろ?』

 たった一言。その一言だけだったが、何故か自信ありげにそう言われて、ちょっとだけ腹が立ったから脇腹をつついてやった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...