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エピソード1
2話 掴めない手掛かり
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それから数日が経った。
真はその間も必死に目撃者などの手掛かりを探したが、何一つと言っていいほど、疑いを晴らすための証拠は見つからなかった。
それどころか、なんと、研一は起訴されてしまい、被疑者ではなく、被告人になってしまった。
真はとりあえず、被害者本人に直接話を聞こうと、被害者のところを訪ねた。
真は被害者の自宅のインターホンを押した。
「はい。」と言う声が聞こえたので、
「すみません。今回、竹田研一さんの弁護をさせていただくことになった高城というものですが、山本さんにお話をお聞かせいただきたく、お訪ねさせていただきました。」と真が挨拶をすると、家の扉が開き中から40代くらいの1人の女性が出てきた。
「どうぞ。」と言われて、中に入った。
真とその女性はリビングにある席に着いた。
「すみません。お茶をお出ししますからちょっと待ってください。」
「いえ、そんなお気遣いなく。」と真は言ったが、その女性は真に紅茶を出した。
その女性は席につくと
「すみません。わたくし、星華の母です。星華はいま、あの事件がかなりトラウマで学校にも行けてない状態なんです。」と言った。
「そうなんですか。僕もこの事件を担当する弁護士ではありますが、娘さんとお母様の心中はお察しします。」と真は落ち着いた喋りで話した。
「弁護士さんは、今日、星華に話が聞きたいとおっしゃっていましたよね。」
「はい。」
「とりあえず、星華を呼んでみますが、もしダメならお引き取りください。」
「わかりました。」
10分くらい真は待った。
すると、山本星華であろうと思われる人物が母親と階段を降りてきて、席に着いた。
「ごめんね。事件のこと思い出させるのは本当に申し訳ないし、とても辛いと思うんだけど、僕も本当の犯人が誰なのか知りたいんだ。多分、星華さんも同じ気持ちなんじゃないかな。」と真が星華に話しかけると、
「犯人はもう捕まったじゃないですか。」と星華は答えた。
「そうなんだけど。犯人は別にいるかもしれないんだ。」
「そうなんですか?」
「まだ、はっきりとはわからない。だからそれをはっきりさせたくて。事件のこと詳しく教えてくれないかな。」
「わかりました。ですが、あの日の記憶はあんまりはっきりとはないんです。だから、必ずしもただしい記憶とは言えません。」
「それでもいいよ。とりあえず、話せることを話して欲しい。」
「私はあの日、近くのコンビニ買い物に行ってました。あそこのコロッケが好きでよく買いにいくんです。小さいこじんまりしたコンビニですが、本当にあそこのコロッケは美味しいんですよ。」
「そんなに美味しいコロッケなら僕も食べてみたいな。ごめんごめん、続きを聞かせて。」
「それであの日は本当にコロッケを買いに行くだけだったので財布を手に持ってただけで、カバンなどは持っていませんでした。すると、前から1人の男の人がきて、私の財布を奪おうと押し倒してきました。あまりの恐怖に顔も全然覚えていません。」
「身長がどれくらいだったとかも覚えてないかな?」
「ほんとにもう何も覚えてないんです。」
「そっかぁ。でも前から人は来たんだよね?」
「はい。」
「ありがとう。じゃあまた、なんか思い出したことがあったら教えてほしい。」
真は星華と母親に感謝を述べ、その場をあとにした。
真は一人で歩きながら、「正面から襲われたなら、被告人が歩いてた方向とも合致するし。これはますます難しくなってきたな。」と思った。
その帰り、真は事件があった現場を通った。
だが、なんの変わり映えもない、ただの一本道だった。
真は事務所に戻り、被告人が犯人であると裏付けた防犯カメラの映像を何度も見返した。
被告人よりも前にその道を通る人物がいないか被告人が通る1時間前から再生し、何回も確認したが、被告人より前に通ったのは被告人の15分ほど前であった。
しかも、被告人はその一本道では誰もみてないと言っているので、その人物がそこに立ち止まっていたこともないということになる。
次の日、真は被告人の研一の家を訪ねた。
真は奥さんに案内され、研一の部屋に入った。
そこには、何枚ものレシートが束になって置いてあった。
「こんなにレシート置いてるんですね。」
「あぁ。これですか、そうなんです。彼けっこう真面目で、レシートをちゃんと残しておいて、暇な日にいくらお金を使ったのかという感じで自分専用の家計簿見たいなものをつけてるんです。」
「そうなんですか。それはすごくきっちりされてる方ですね。事件当日のレシートってあったりしますか?」
「いいえ。事件当日のレシートは警察が持って行きました。ですが、その日のレシートは夜に出かけた外食の時のものとその際によったガソリンスタンドのもののみです。」
「なるほど。わかりました。」
「なんですけど、そのレシート、外食の時は一万円札を出していて、ガソリンスタンドでは5000円札を出したんです。それでさらに警察の方は主人が犯人だと思ったようです。」
真はますます状況は悪くなっていると感じたのであった。
~続く~
真はその間も必死に目撃者などの手掛かりを探したが、何一つと言っていいほど、疑いを晴らすための証拠は見つからなかった。
それどころか、なんと、研一は起訴されてしまい、被疑者ではなく、被告人になってしまった。
真はとりあえず、被害者本人に直接話を聞こうと、被害者のところを訪ねた。
真は被害者の自宅のインターホンを押した。
「はい。」と言う声が聞こえたので、
「すみません。今回、竹田研一さんの弁護をさせていただくことになった高城というものですが、山本さんにお話をお聞かせいただきたく、お訪ねさせていただきました。」と真が挨拶をすると、家の扉が開き中から40代くらいの1人の女性が出てきた。
「どうぞ。」と言われて、中に入った。
真とその女性はリビングにある席に着いた。
「すみません。お茶をお出ししますからちょっと待ってください。」
「いえ、そんなお気遣いなく。」と真は言ったが、その女性は真に紅茶を出した。
その女性は席につくと
「すみません。わたくし、星華の母です。星華はいま、あの事件がかなりトラウマで学校にも行けてない状態なんです。」と言った。
「そうなんですか。僕もこの事件を担当する弁護士ではありますが、娘さんとお母様の心中はお察しします。」と真は落ち着いた喋りで話した。
「弁護士さんは、今日、星華に話が聞きたいとおっしゃっていましたよね。」
「はい。」
「とりあえず、星華を呼んでみますが、もしダメならお引き取りください。」
「わかりました。」
10分くらい真は待った。
すると、山本星華であろうと思われる人物が母親と階段を降りてきて、席に着いた。
「ごめんね。事件のこと思い出させるのは本当に申し訳ないし、とても辛いと思うんだけど、僕も本当の犯人が誰なのか知りたいんだ。多分、星華さんも同じ気持ちなんじゃないかな。」と真が星華に話しかけると、
「犯人はもう捕まったじゃないですか。」と星華は答えた。
「そうなんだけど。犯人は別にいるかもしれないんだ。」
「そうなんですか?」
「まだ、はっきりとはわからない。だからそれをはっきりさせたくて。事件のこと詳しく教えてくれないかな。」
「わかりました。ですが、あの日の記憶はあんまりはっきりとはないんです。だから、必ずしもただしい記憶とは言えません。」
「それでもいいよ。とりあえず、話せることを話して欲しい。」
「私はあの日、近くのコンビニ買い物に行ってました。あそこのコロッケが好きでよく買いにいくんです。小さいこじんまりしたコンビニですが、本当にあそこのコロッケは美味しいんですよ。」
「そんなに美味しいコロッケなら僕も食べてみたいな。ごめんごめん、続きを聞かせて。」
「それであの日は本当にコロッケを買いに行くだけだったので財布を手に持ってただけで、カバンなどは持っていませんでした。すると、前から1人の男の人がきて、私の財布を奪おうと押し倒してきました。あまりの恐怖に顔も全然覚えていません。」
「身長がどれくらいだったとかも覚えてないかな?」
「ほんとにもう何も覚えてないんです。」
「そっかぁ。でも前から人は来たんだよね?」
「はい。」
「ありがとう。じゃあまた、なんか思い出したことがあったら教えてほしい。」
真は星華と母親に感謝を述べ、その場をあとにした。
真は一人で歩きながら、「正面から襲われたなら、被告人が歩いてた方向とも合致するし。これはますます難しくなってきたな。」と思った。
その帰り、真は事件があった現場を通った。
だが、なんの変わり映えもない、ただの一本道だった。
真は事務所に戻り、被告人が犯人であると裏付けた防犯カメラの映像を何度も見返した。
被告人よりも前にその道を通る人物がいないか被告人が通る1時間前から再生し、何回も確認したが、被告人より前に通ったのは被告人の15分ほど前であった。
しかも、被告人はその一本道では誰もみてないと言っているので、その人物がそこに立ち止まっていたこともないということになる。
次の日、真は被告人の研一の家を訪ねた。
真は奥さんに案内され、研一の部屋に入った。
そこには、何枚ものレシートが束になって置いてあった。
「こんなにレシート置いてるんですね。」
「あぁ。これですか、そうなんです。彼けっこう真面目で、レシートをちゃんと残しておいて、暇な日にいくらお金を使ったのかという感じで自分専用の家計簿見たいなものをつけてるんです。」
「そうなんですか。それはすごくきっちりされてる方ですね。事件当日のレシートってあったりしますか?」
「いいえ。事件当日のレシートは警察が持って行きました。ですが、その日のレシートは夜に出かけた外食の時のものとその際によったガソリンスタンドのもののみです。」
「なるほど。わかりました。」
「なんですけど、そのレシート、外食の時は一万円札を出していて、ガソリンスタンドでは5000円札を出したんです。それでさらに警察の方は主人が犯人だと思ったようです。」
真はますます状況は悪くなっていると感じたのであった。
~続く~
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