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第九章 心乱れる10月
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しおりを挟む「おっ、燈弥じゃねぇか」
「根暗君が狼とかジョーダンだろぉ?」
なんとも言えない顔で兎君を見つめていると、肩にずしりと重さが加わる。さらに周りとの溝が広がり、委員長の形相がものすごいことになっていることから、僕の背後にはそれはもう邪悪な悪霊が居るのだろう。.....祓ってくれないかな?
「重いですサマ臣k....これはまたイメージに合わない動物ですね」
肩を組んできたサマ臣君の頭にはもふもふの長い白耳が重力に逆らわず垂れている。これはアレだ、ロップイヤーだ(ちなみにロップイヤーとは耳が垂れ下がった兎のことを言う)。
いやいやっ。あんな可愛い小動物の耳を鎖真那双子が着けちゃダメだって。彼らは肉食獣でしょ。間違ってもあんな可愛らしい草食動物ではないはず。
.....まぁイメージ的には合わないけど、見た目はマッチしているが。やはりイケメンは何つけてもイケメンだ。
「おれっちが兎とかウケるよなw」
「イメージに合わないっつったらお前もだろ燈弥。狼?.....いっひひひ、お前は化かすのが上手い狐あたりだろ」
そう言って彼は流れるような動作でキスをしてきた。最後に「狼も似合ってるけどな」と男らしい笑みを添えて。
.....僕が女の子で、彼がまともな性格をしていたら惚れていたかもしれない。
遠い目になりながら取り留めないことを考えていると肩に乗っかっていた重さが消えた。
「─────おいテメェ、今一条に何しやがった?キスしてなかったか!?」
どうやら委員長がサマ臣君の胸ぐらを掴んだため重さが消え.....おっと、今度は弟君に肩を組まれたぞ?
なに?君ら兄弟はどっちかが僕に触ってないと死ぬ呪いにでもかかっているのかな??
「んだよ....キスくらいでギャーギャー喚くな。オレと燈弥の間では普通のことだぞ」
「一条っ!!!お前っ――」
鬼の形相がこちらを向く。
なんで僕が怒られる流れになるのよ.....。
「普通のことではないですから。誤解産むことを言わないで頂きたい」
「えっ、めっちゃ緋賀ちゃん怒ってんじゃん。ならおれっちも根暗君とちゅーするぅ」
「近づくなおい!!」
あれ、兎君どこ行った?
さっきまで隣に居たのに.....もしかしてこの双子を見た瞬間逃げた?
「一条はこっち来い。んで、テメェらはどっか行け」
兎君を探していると隠されるように委員長の背中に匿われた。
────キ、キィィィン....
睨み合う(?)委員長と鎖真那双子を眺めていると、娯楽室に備え付けられたスピーカーからハウリングのような音が鳴った。
『静粛に。静粛に。皆様方が良い縁と癒しを得られるよう只今より合コンを始めます。現在21時00分。これより3時間。24時00分までこの寮を封鎖します。皆様方にはこの3時間の間に少なくとも1人、パートナーを作ってもらい、部屋で2日過ごしてもらいます』
はい?
パートナー探して2日...今日が金曜日だから日曜まで過ごせってこと?いきなりだな。
『強制ではありません。ただ、24:00になれば寮の封鎖は解け、本校舎から生徒達が戻って来ます』
......??
『パートナー作りの助けとしてこちらで事前にとらせてもらったアンケートによる、相性のいい推奨パートナーを定めました。これはあくまで推奨であるため絶対ではありません』
アンケートっていうのはあのモッチー生徒から受けとった心理テストもどきのことか。アレがここで出てくるとは.....。
『もう一度言います。この合コンは強制ではありません。くだらないと言って部屋に帰るも良し、24:00まで友人の帰りを待つのも良し、夜遅いからと睡眠をとるのも良し。君ら次第です。では皆様方にとって良い時間となることを....』
放送はぶちりと切れた。唐突に始まって唐突に終わる。
呆気にとられた。
────プチッ
「痛いっ!?!?」
突然の痛みに思わず首輪を掴む。なにか刺されたような感触。だがその部位を触ろうにも首輪に阻まれ調べることが出来ない。
今の....なに?
「これはヤベェな。何かを体内に入れられた」
「委員長、それはどういう....」
「行くぞ。ここにいるのは得策じゃねぇ」
腕を掴まれ出口まで引っ張られる。
「ひ、緋賀様!!」
聞こえた声に振り向けば、いかにもΩっぽい可愛らしい生徒が委員長を不安そうな目で見つめていた。
「委員長呼ばれてますよ」
「知るか」
知るかって....
「緋賀様待ってください!ぼ、僕はどうしたらいいですか?パートナーを作れって言ったって、そんな....仲良くない人と2日過ごすなんて....できません!」
「俺様にそれを言ってどうする?風紀の管轄じゃないだろ....それに放送でも言ってただろうが。強制じゃねぇって。テメェで判断しろ」
「そんな....!!」
むべもなく切り捨てた委員長は娯楽室のドアに手をかけた。
――ガチャガチャ、ガチャガチャガチャっ
「あ''?」
「開かない.....?」
─────ピィ、ガガガガ
『言い忘れていました。推奨パートナーの紙を送ります。丁度近くに居る緋賀 永利さん、それを受け取り次第皆様方にお伝えください。....ちなみに娯楽室のドアは21時20分に開きます』
ブツンとまた放送が切れる。
21時20分となると、10分後か。
「クソが...」
悪態と共にしゃがんだ委員長が立ち上がる。彼の手には1枚の紙が握られていた。どうやらドアの下から送られてきたらしい。パートナーを記されたものかな?
「チッ......今から名前を読み上げる。1度しか言わねぇからよく聞いとけ!!」
読み上げられていく名前達。放送ではあの悪辣な心理テストを基に相性のいいパートナーを決めたと言っていてたが、あの心理テストでそんなものがわかるのだろうか?
だって人を殺したことあるか?とか聞いてくるテストだ。相性とか嫌な予感しかない。
「──────以上だ。あとは好きに動け」
「あれ?すみません委員長。僕の名前が呼ばれてないような気がするのですが....」
以上と言われてちょっと焦る。一条 燈弥の名前がなかった。もしかして聞き漏らした?
「......お前のパートナーは俺様だ」
眉間に皺を寄せたままそう言うと、委員長は紙をビリビリに破り残骸をそこら辺に投げ捨てた。
散らばる紙切れに非難げな視線を委員長に送る。
....ポイ捨てはダメでしょ。
「へぇ、僕達はあのアンケート(?)の答えが似ていたんですかね」
「かもな」
チッチッチッチ.....
娯楽室の壁に掛けられたアンティーク時計が秒針を刻む。そして待つこと数分。
じわりと滲む汗に思わずジャージを掴み、パタパタと風を送る。
「それにしても暑くないですか?」
「....確かに暑いな」
もう秋だが、それでも夜は肌寒い。寝巻きである黒地のジャージを纏っているが、暖房がついていても脱ぎたくなるほどの暑さは感じなかった。
さっきまでは.....。
今はもう上着を脱いで、下の長袖の腕を捲りたいくらい暑い。それとなんか、ふわふわするような───
「おい!?」
ドアが開くまで残り1、2分のとき、それは起きた。
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