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牙を剥く狼
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柚希を愛するがゆえに、エゴを前面に押し出せず、柚希の全てを奪い去れない。それが柚希が愛した晶の最大の優しさで、同時に弱さでもあった。
寝台から漂う柚希の眩惑の香りが増し、晶は渇きを覚える無意識に喉を抑え呻いた。
「このままここで二人そろってラットを起こしたら、俺とお前は正気のないまま殺し合いだ。膠着している場合じゃない」
「ああ、そうかもね」
それほどのα同士の番をめぐる争いは苛烈だ。抑制剤を服用しているであろう和哉も眉目を顰め、長い舌先で狼のように自らの上唇を撫ぜまわす。
「カズ、賭けをするか?」
「……そんな必要ない、先輩が退けよ?」
「柚希が俺と話しをして俺の元に戻ることになるのが怖いのか?」
「そんなわけないだろ?」
その言い返す口調があまりにも柚希に似て、やはりこの二人は兄弟なのだと晶は苦笑いした。こんなことにはなったが、いやずっとこうなることをどこかで予想しながらも、こうして正面からぶつかり合うことを避けてきたのは、晶にとっては和哉もまた大切な学生時代の後輩の一人だったからだ。
高校時代共にバスケ部に所属していた。練習の合間、お遊び程度だが二人は互いの守るべきゴールを背にして向かい合い、差しの勝負をしていた。
高校一年生の和哉はあどけなさが残る美少年で、三年生で体格差の或る晶との勝負は和哉が勝つことは稀だった。しかしいつでも果敢に挑戦してきて、アイスをかけたりジュースをかけたり。
ゴール下でコーチと打ち合わせをしていると、いつもそれを邪魔をするように小脇にボールを抱えた和哉が嬉しげに手招きし、しょう凝りもなく挑んできた。
『晶先輩!!! ワンオンワン、やろうよ!』
あの埃っぽい日向の匂いのするコートの上が、今は無性に懐かしい。
(まさか恋人まで賭けることになろうとはな?)
「いいだろう? 和哉。俺と、一対一の勝負だ」
寝台から漂う柚希の眩惑の香りが増し、晶は渇きを覚える無意識に喉を抑え呻いた。
「このままここで二人そろってラットを起こしたら、俺とお前は正気のないまま殺し合いだ。膠着している場合じゃない」
「ああ、そうかもね」
それほどのα同士の番をめぐる争いは苛烈だ。抑制剤を服用しているであろう和哉も眉目を顰め、長い舌先で狼のように自らの上唇を撫ぜまわす。
「カズ、賭けをするか?」
「……そんな必要ない、先輩が退けよ?」
「柚希が俺と話しをして俺の元に戻ることになるのが怖いのか?」
「そんなわけないだろ?」
その言い返す口調があまりにも柚希に似て、やはりこの二人は兄弟なのだと晶は苦笑いした。こんなことにはなったが、いやずっとこうなることをどこかで予想しながらも、こうして正面からぶつかり合うことを避けてきたのは、晶にとっては和哉もまた大切な学生時代の後輩の一人だったからだ。
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『晶先輩!!! ワンオンワン、やろうよ!』
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「いいだろう? 和哉。俺と、一対一の勝負だ」
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