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第二章 HOW To ヒート!
22 尊のばかばか
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「わわっ! 急にどした、青葉!」
「みことっ! 全然俺に夢中になってない。俺ばっか尊のこと考えてる。バッカみたいだ」
「おもしろっ、ばっかとバッカで韻踏んでる?」
「おもしろくないし!!」
真っ逆さまに空から落ちるみたいに、お互いもう引き返せないところまで行きついてしまったと、昨晩何度も何度もそう思った。
それでも狂おしい恋の渦に吞まれるのは幸せで、青葉が尊以外考えられないほど、彼に夢中になったように、青葉の全てを尊に根こそぎ欲しがられたかった。
そのまま訳も分からぬうちに牙を、このうなじに突き立てて、彼だけの青葉に作り替えてもらいたかったのに。
「お前、余計にゲロ甘い匂いしてきた。まずいって。ちょっと落ち着けって」
「尊、あいつっ!!!」
それなのに、とむぐむぐむぐっと形よい唇が幼子のようにへの字につぐまれてると、青葉の大きな瞳から、涙がぼろぼろぼろっと零れ落ちた。
「すづくり、上手だってほめてくれたのに、俺の事、つ、つがいにしてくれなかった」
幼げで舌ったらずな喋り方に目つきもなんとなくとろんとしてくる。
頭の中がぐっちゃぐちゃ、ピンクとラベンダーのアイスクリームが渦を巻いてとろとろに溶けて溢れていくような心地になった。抑制剤の効果が薄れるほどに、本格的なヒートが再び始まりかけているのだ。
「うげっ! まじか! あの、青葉が泣いた! ヒートって、お前でもこんなんなっちゃうのな」
腕の中で暴れてばしばしっとこうくんの背中に八つ当たりをしながら、ぐす、ぐすんっと鼻水をすすれば、本格的に泣き出した青葉の顔をこうくんが覗きこんできた。
「青葉、お前さあ、子供の頃から、泣くとむっちゃ、不細工だぞ。ぶちゃ可愛いけども。知ってた?」
こうくんなりに気を紛らわせようとしてきたのかもしれないが、全く面白くない。遠慮のないいじりにもいつもみたいに『はあ? んなわけねぇじゃん。俺は何しててもキレーなの!』なんて頭が軽口を叩く元気がない。
「うっさぃ、うっさいっ……」
確かに髪の毛はぼさぼさ、スキンケアもいまいち、昨日散々啼かされたから、声もガサガサ、その上喉が痛い。散々なのだ。散々。
本当なら、この週末はわくわくドキドキ初デートのはずだった。
SNSに写真をアップした時、反響が良かったお気に入りブランドの新作コーデを着るつもりだったし、今日はカラーのリタッチでサロンの予約を入れていた。
自分の大好きなものを身に着け、煌めいた姿で大好きな人と街を歩きたい。それで告白されたりしたらいいな、なんて「巣作り」までしたお得意の妄想力を発揮してお望みのシーンを再現したりしていたわけだ。
だから今自分の納得いく綺麗な姿で尊の前に立てていないのは哀しい。内心気にしていた部分を突かれるとなんか無性に悔しくてまた泣けてきた。
「みことっ! 全然俺に夢中になってない。俺ばっか尊のこと考えてる。バッカみたいだ」
「おもしろっ、ばっかとバッカで韻踏んでる?」
「おもしろくないし!!」
真っ逆さまに空から落ちるみたいに、お互いもう引き返せないところまで行きついてしまったと、昨晩何度も何度もそう思った。
それでも狂おしい恋の渦に吞まれるのは幸せで、青葉が尊以外考えられないほど、彼に夢中になったように、青葉の全てを尊に根こそぎ欲しがられたかった。
そのまま訳も分からぬうちに牙を、このうなじに突き立てて、彼だけの青葉に作り替えてもらいたかったのに。
「お前、余計にゲロ甘い匂いしてきた。まずいって。ちょっと落ち着けって」
「尊、あいつっ!!!」
それなのに、とむぐむぐむぐっと形よい唇が幼子のようにへの字につぐまれてると、青葉の大きな瞳から、涙がぼろぼろぼろっと零れ落ちた。
「すづくり、上手だってほめてくれたのに、俺の事、つ、つがいにしてくれなかった」
幼げで舌ったらずな喋り方に目つきもなんとなくとろんとしてくる。
頭の中がぐっちゃぐちゃ、ピンクとラベンダーのアイスクリームが渦を巻いてとろとろに溶けて溢れていくような心地になった。抑制剤の効果が薄れるほどに、本格的なヒートが再び始まりかけているのだ。
「うげっ! まじか! あの、青葉が泣いた! ヒートって、お前でもこんなんなっちゃうのな」
腕の中で暴れてばしばしっとこうくんの背中に八つ当たりをしながら、ぐす、ぐすんっと鼻水をすすれば、本格的に泣き出した青葉の顔をこうくんが覗きこんできた。
「青葉、お前さあ、子供の頃から、泣くとむっちゃ、不細工だぞ。ぶちゃ可愛いけども。知ってた?」
こうくんなりに気を紛らわせようとしてきたのかもしれないが、全く面白くない。遠慮のないいじりにもいつもみたいに『はあ? んなわけねぇじゃん。俺は何しててもキレーなの!』なんて頭が軽口を叩く元気がない。
「うっさぃ、うっさいっ……」
確かに髪の毛はぼさぼさ、スキンケアもいまいち、昨日散々啼かされたから、声もガサガサ、その上喉が痛い。散々なのだ。散々。
本当なら、この週末はわくわくドキドキ初デートのはずだった。
SNSに写真をアップした時、反響が良かったお気に入りブランドの新作コーデを着るつもりだったし、今日はカラーのリタッチでサロンの予約を入れていた。
自分の大好きなものを身に着け、煌めいた姿で大好きな人と街を歩きたい。それで告白されたりしたらいいな、なんて「巣作り」までしたお得意の妄想力を発揮してお望みのシーンを再現したりしていたわけだ。
だから今自分の納得いく綺麗な姿で尊の前に立てていないのは哀しい。内心気にしていた部分を突かれるとなんか無性に悔しくてまた泣けてきた。
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