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第二章 HOW To ヒート!

23 支離滅裂ハート

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「ううっ。みことぉ! 王子様みたいキラキラな顔してるくせに、てんで、ヘタレ。ヘタレアルファ。俺が一週間うなじ噛むのが番になるの我慢しろっていったら、本当に我慢するし! 我慢すんなよ、番にしろよ。嫌じゃないに決まってるじゃん! そんなこと言われたって、俺の事ほんとにすげぇ好きなら、噛むの、我慢できるはずないだろ!」
「酔っ払いよりタチ悪いな。抑制剤のせいか? 副作用で気持ちが不安定になるあれだな……」
 
 頭を抱きかかえられたので肩口に顔を押し付けて涙でぬれた顔を押し付けると、青葉はぐず、ずずっと鼻をすすり、最後は涙声になった。

「それともさ、俺の事、そこまで好きじゃない、とか……」
 
 日ごろポジティブにものを考えることを癖付けしている青葉も、ヒートの影響か不安がよぎると、とことんしんなり、しゅんっと嫌なことばかり考えてしまう。
というのも、実のところ、昨日のことは思い出すとところどころ靄がかかったように朧げなのだ。朦朧として眠気が出るのは、抑制剤の副作用の一つなのかもしれない。
 もちろん自分で自宅に電話したことも覚えているし、尊が告白してくれて両思いになったことも覚えている。しかし細かいところは色々記憶が曖昧だ。だから尊が丁寧に抱いてくれたことは何となく覚えていても、耳元で囁かれた数々の愛の言葉は半分くらい抜け落ちている。それが不安を煽るのだ。

「青葉さ、その尊?ってやつに、自分で番になるの一週間待てって言ったんだろ?」
「うん」
「なのに相手が噛みつかないって、怒ってんのって支離滅裂だぞ。わかってるのか?」
「……分かってる」

 わかってんのかよ、っとこぼしながらこうくんは青葉の頭をよしよしとしてくれた。
よく似た顔がよく似た表情をして、暫し二人して無言でくっついていたら、思案深げにこうくんが深く息を吐いた。

「はー。まじか、すげぇな」
「……なにが」
「よく考えてみたらさ、ヒートのオメガと一晩過ごして噛まないってさ、なかなかできねぇよな」
  
 取り乱す青葉の代わりにこうくんの方がずっと落ち着いてきた。

「どうでもいい相手なら、やるだけやって無責任に嚙んじまうかもしれないし。すげぇ大事だから、気持ちを一番に優先にしてくれたんじゃね? 愛ってやつ? 同じアルファとして尊敬するかもな。うん。そいつ、いいやつかも」
 

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