令和に活きる就活終活のヒント

《２１》１２月２５日金曜日の夜

　絶好調の第３５営業局第３営業部の牟礼部長は、経費で、金髪のカツラを作ってくれた。俺の先月の手取りの倍近くする、普段使いもできる、本格的なカツラだ。バーコード頭の本部長のインプラント手術よりは、ずっと安いんだけど。まあ、髪より、歯優先だよな、やっぱし。
　そのカツラで、宮崎の百貨店でアンキーをやって、東京に戻って直ぐ、伸びた金髪坊主を刈り込んで黒の坊主頭にして、「ＣＯＭチームの営業を担当させて頂く尾崎博昭、独身です」って山田マネージャーに改めて紹介された（勿論メインの業務は日本玩具のイベントのままなんだけど）。で、１２月２５日金曜日の夜、山田マネージャーとアルバイトの女性と牟礼さんと新川さんと俺、それからＣＯＭ横浜店の副店長の６人で「プチ忘年会」をやった。会場は、ＣＯＭ横浜店のそばの「まごころ最中」を持って「お騒がせしてすみませんでした」とお詫びしたドイツ料理の店にした。その日の昼間会った時には黒の坊主頭だった俺がフサフサの金髪になってたから、山田さんも、アルバイトのお上品なお嬢様って感じの天見さんも、結構受けてくれた。山田さんも、気位の高いファッションブランドの広報宣伝マネージャーじゃなくて、饒舌ブスキャラ芸人みたいになってくれた。全員が楽しかったし、仲よくなれた。でも、コムの３人は、２軒目を遠慮して、電車で帰ってしまった。２軒目の店も決めてあったし、タクシーチケットだって、人数分用意してあったのに。
　では、ここで問題です。コムの３人は、何故、電車で帰ってしまったのでしょうか？
　それは、山田摩耶さんが、タクシーが大嫌いだったからです。
　それでは何故、山田摩耶さんは、タクシーが大嫌いなのでしょうか？　
　そりゃそうだよ。乗車した途端、ソフトクリーム頭が折れ曲がるか潰れちゃうし、つまり、地震対策の人間突っ張り棒状態で後部座席に座ることになるんだから、急停車即むち打ち症じゃん。山田さんが窮屈そうにタクシーに乗るのを想像すると……、面白すぎる。シネマのＣ、オペラのＯ、ミュージカルのＭ。ＣＯＭは人生を華麗に演じる主演女優の衣装ってのがブランドコンセプトらしいけど、山田摩耶さんは、ＷＡＨＡＨＡ本舗でも松竹新喜劇でも吉本新喜劇でも、主役を張れるな。名前も、上から読んでも下から読んでも「やまだまや」だし。意地悪で言ってんじゃないよ。そういう側面が愛らしい、愛せるなあってこと。そうそう、ドイツ料理のプチ忘年会で、来春の夜桜パーティーの時は、独り暮らしの山田さんの自宅、日本橋のタワーマンションの５階まで、オープンカーにもなる黄色いダイハツ・コペンでお送りさせて頂くことに決めさせてもらった。そん時は、新川さんの体に「粗品　スーパーエージェンシー」ってのし紙巻いてもらおうかな。ま、それは言わなかったけどね。酔っててもね。