令和に活きる就活終活のヒント

令和宗活(のりかつのりかつ)

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《31》花束

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 和歌山、大阪と日本玩具フェアが続いた。大阪では、関西支社の牟礼さんの元同僚と元上司が歓待してくれた。休みなしで11日間の出張だったから、3連休にして、妹の家(伊豆の別荘)に泊まった。
「おはよう」
 早起きして、額に納まった綺麗な母ちゃんに声を掛けた。和歌山の百貨店で、油絵用の本漆塗りの額縁を売ってたから、赤い方を買ってきたんだ。昨夜、赤いセーターの母ちゃんを入れて、リビングに掛けてやった。墓は要らない、が母ちゃんの遺言だったから、妹は葬儀屋に、高温で焼いてもらって何も残らないようにしてほしい、ダイヤモンドだって高温で焼けば燃えてなくなりますよねってリクエストしたらしいんだけど、それは叶わなかった。火葬場って、どの窯も決まった温度で燃焼させるように自動制御されてるらしくて、燃焼温度を変更させたりできないんだそうだ。因みに、特別室も、母ちゃんを焼いてもらった個室になってなかったフロアも、中の窯は同じなんだって。死んだ方は、平等だった。母ちゃんの骨壺も、赤い本漆塗りの額の横、小さい食器棚の上に置いとくことにした。いつか、新川さんが退社して新川石材工業の社長にでもなれば、尾崎家の墓を造っても、いいのかな。
 母ちゃんが亡くなった時、裏庭の丸い桶に芽吹いてたのは、妹はチューリップじゃないのって言ってたけど、紫のヒヤシンスだった。桶いっぱいに、20本咲いてくれてる。ヒヤシンスの花って、小さい小さいユリの花の集合体だったんだね。甘い香りがする。俺は、霊なんて信じてないけど、今、この丸い桶の上に咲く濃い紫の花々に、母ちゃんの魂を感じてる。ヒヤシンスの花1房1房が、紫のユリの花束に思える。母ちゃんから花束が、20束も届いてた。
「ありがとう。いいお葬式でした。母より」ってメッセージ、かな。
 天国の母ちゃんが、俺と妹を褒めてくれてる。
 総ヒノキ風呂は、壁もやっぱしヒノキにした、母ちゃんの希望通りに。伊豆で、ヒノキの濃い香りがする、総ヒノキ風呂の朝風呂だ。大阪の百貨店で買ってきた、カシスグリーンの香りで加齢臭を消してくれるっていう石けんとシャンプーで洗う。これから、バスで牟礼さんを駅まで迎えに行く。今日は、とってもいい、休日だ。
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