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第Ⅱ章 ミニイベント:月の言霊
2.婚約は慎重に
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「私はロキとノエルの婚約に賛成だ。カーライル家は王家に次ぐ貴族だ。国王も納得するんじゃないかな」
ウィリアムが、とんでもないことを言い出した。
(確かにカーライル家の役割を考えたら、これ以上の適任はないかもしれない)
カーライル家は王族近衛兵団の団長を務める家柄であり、王室直下の間諜だ。ノエルの中和術を国が監視するなら、ロキとの婚約は都合がいいだろう。
(ジャンヌの意図は他にもありそうだから、首を縦に振るかはわからないけどなぁ)
ノエルを追い詰めてレイリーを教育させる。それだけではないような気がする。
「ノエル、俺は本気で考えてるよ」
ロキがノエルの両手を握り締めた。
真摯な眼差しが今は辛い。
「あの、ロキ。そういう話は、今はちょっと」
気まずくて、顔が俯く。
「うん、わかってる。俺もちゃんと準備して、ノエルに伝えるからね」
「待って、準備って……」
思わず顔を上げる。
目の端に、すまし顔のウィリアムが映った。
(まさか、二人して口裏合わせて婚約をウィリアムからロキに変更するつもりか)
それはそれで大変、面倒くさい。
ウィリアムとの婚約なら形ばかりと割り切れるが、相手がロキではそうはいかない。
「あのね、ロキ。私は、……えっと」
言葉がうまく見つからない。普段なら、もっとスムーズに言葉が出てくるのに。
こういう時の自分の不甲斐なさが嫌になる。
(ここにマリアがいてくれたら、助けてくれるのになぁ)
しゅんと肩を落とす。
「ロキ、ノエルの気持ちを、ないがしろにしるな。勝手に話を進めるのは、ノエルに失礼だ」
ノエルの様子に見かねたのか、レイリーが助け舟を出してくれた。
「レイリーだって、俺とノエルが婚約した方が安心できるだろ? リアムを奪われる心配はなくなる」
「私のために、ノエルに意に沿わない結婚を強いる気はない。私が言いたいのは、そうではなくて」
「ノエルは本当は、ユリウス先生を想っているんじゃないのか?」
ロキとレイリーの言い合いに割って入ったのは、アイザックだった。
あまりにもはっきりと言い切られて、顔がどんどん熱くなる。
一言、肯定すればいいだけなのに、何も言えなくなって、俯いてしまった。
「ノエル、素直で可愛いな」
レイリーがノエルの熱い頬に顔を寄せて、頭を撫でてくれる。
何故か、皆が絶句している空気を感じる。
「普段、あれだけスラスラと論理的に話すノエルが二の句を継げなくなる姿を見るとは、思わなかったよ」
心底驚いた声のウィリアムの隣で、アイザックが微笑んでいる。
ロキが大きな溜息を吐いて項垂れた。
「そんな可愛い顔されたら、これ以上、何も言えないよ。もしかして俺、振られたの?」
「残念だろうが、諦めろ、ロキ。ノエルが言葉もなく、これだけ顔を真っ赤にしているんだ。勝ち目はないぞ」
アイザックの言葉に、ノエルは口をハクハクさせて絶句した。
(私は今、どんな顔しているんだ。とりあえず顔が熱いけど)
ノエルを眺めていたロキが、微妙な顔をした。
「いいよ、それでも。たとえノエルが別の人を想っていても、俺はノエルの隣にいたいんだ」
微笑んで、ロキがノエルの手を優しく握った。
(ロキはまた、辛い恋をしたんだ。初恋のレイリーと同じように。私がロキに、そんな思いをさせてしまった)
「ごめん、ロキ。ごめんね」
泣きそうになるのを、ぐっと堪える。
どうするのが正解だったのか、考えてもわからない。
けど、ここで泣くのは狡い気がした。
「そんな顔をしないでよ。俺が惨めになるだろ?」
ロキに頭を撫でられて、顔を上げる。
こくりと、頷いた。
「ノエルに、こんな顔をさせられるユリウス先生が心の底から羨ましいし、恨めしいよ。わかっては、いたけどさ」
言葉とは裏腹に、ノエルを見詰めるロキの顔は穏やかで優しかった。
ウィリアムが、とんでもないことを言い出した。
(確かにカーライル家の役割を考えたら、これ以上の適任はないかもしれない)
カーライル家は王族近衛兵団の団長を務める家柄であり、王室直下の間諜だ。ノエルの中和術を国が監視するなら、ロキとの婚約は都合がいいだろう。
(ジャンヌの意図は他にもありそうだから、首を縦に振るかはわからないけどなぁ)
ノエルを追い詰めてレイリーを教育させる。それだけではないような気がする。
「ノエル、俺は本気で考えてるよ」
ロキがノエルの両手を握り締めた。
真摯な眼差しが今は辛い。
「あの、ロキ。そういう話は、今はちょっと」
気まずくて、顔が俯く。
「うん、わかってる。俺もちゃんと準備して、ノエルに伝えるからね」
「待って、準備って……」
思わず顔を上げる。
目の端に、すまし顔のウィリアムが映った。
(まさか、二人して口裏合わせて婚約をウィリアムからロキに変更するつもりか)
それはそれで大変、面倒くさい。
ウィリアムとの婚約なら形ばかりと割り切れるが、相手がロキではそうはいかない。
「あのね、ロキ。私は、……えっと」
言葉がうまく見つからない。普段なら、もっとスムーズに言葉が出てくるのに。
こういう時の自分の不甲斐なさが嫌になる。
(ここにマリアがいてくれたら、助けてくれるのになぁ)
しゅんと肩を落とす。
「ロキ、ノエルの気持ちを、ないがしろにしるな。勝手に話を進めるのは、ノエルに失礼だ」
ノエルの様子に見かねたのか、レイリーが助け舟を出してくれた。
「レイリーだって、俺とノエルが婚約した方が安心できるだろ? リアムを奪われる心配はなくなる」
「私のために、ノエルに意に沿わない結婚を強いる気はない。私が言いたいのは、そうではなくて」
「ノエルは本当は、ユリウス先生を想っているんじゃないのか?」
ロキとレイリーの言い合いに割って入ったのは、アイザックだった。
あまりにもはっきりと言い切られて、顔がどんどん熱くなる。
一言、肯定すればいいだけなのに、何も言えなくなって、俯いてしまった。
「ノエル、素直で可愛いな」
レイリーがノエルの熱い頬に顔を寄せて、頭を撫でてくれる。
何故か、皆が絶句している空気を感じる。
「普段、あれだけスラスラと論理的に話すノエルが二の句を継げなくなる姿を見るとは、思わなかったよ」
心底驚いた声のウィリアムの隣で、アイザックが微笑んでいる。
ロキが大きな溜息を吐いて項垂れた。
「そんな可愛い顔されたら、これ以上、何も言えないよ。もしかして俺、振られたの?」
「残念だろうが、諦めろ、ロキ。ノエルが言葉もなく、これだけ顔を真っ赤にしているんだ。勝ち目はないぞ」
アイザックの言葉に、ノエルは口をハクハクさせて絶句した。
(私は今、どんな顔しているんだ。とりあえず顔が熱いけど)
ノエルを眺めていたロキが、微妙な顔をした。
「いいよ、それでも。たとえノエルが別の人を想っていても、俺はノエルの隣にいたいんだ」
微笑んで、ロキがノエルの手を優しく握った。
(ロキはまた、辛い恋をしたんだ。初恋のレイリーと同じように。私がロキに、そんな思いをさせてしまった)
「ごめん、ロキ。ごめんね」
泣きそうになるのを、ぐっと堪える。
どうするのが正解だったのか、考えてもわからない。
けど、ここで泣くのは狡い気がした。
「そんな顔をしないでよ。俺が惨めになるだろ?」
ロキに頭を撫でられて、顔を上げる。
こくりと、頷いた。
「ノエルに、こんな顔をさせられるユリウス先生が心の底から羨ましいし、恨めしいよ。わかっては、いたけどさ」
言葉とは裏腹に、ノエルを見詰めるロキの顔は穏やかで優しかった。
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