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第Ⅰ章 ゲーム本編①
39.主人公が成長しました
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シエナの結界の修復は、予定を押しているようだった。
並行して学院内の呪い持ちの管理も行われているが、あれ以来、『呪い』の発動はぴたりと止まった。
(嵐の前の静けさでなければいいけど)
不気味な予感が過る中、朗報もあった。
マリアが中和術の会得に成功したのだ。
「まだ、完璧ではないけど、十回に一回くらい、できるようになったの!」
ノエルの部屋に飛び込んできたマリアが、興奮気味に語る。
これにはノエルも歓喜した。
「マリアなら絶対やれると思ってた! さすが私のマリアだよ」
二人して抱き合いながら、ぴょんぴょん飛び跳ねる。
(やっぱり間に合った。主人公はできる子なんだよ。しかし、裏を返せば決戦が近いって話だ)
国の宰相が動き出した以上、ノアも焦りを感じているはずだ。
いつどんな手段で攻撃を仕掛けてくるか、わからない。
「とりあえず、後は精度を高めよう。確実に使えるようにならないとね」
「そうね、広範囲で使えれば、アイザックだけじゃなく、『呪い』に怯えている人を助けることもできるわよね!」
「できるよ。この国で中和術を使える魔術師は今現在、マリアだけだ。マリアにしか、できないことだよ」
意気込むマリアと手を繋いで、クラブ室に向かう。
「アイザック様には、もう伝えたの? 呪いの中和は試した?」
マリアが首を振る。
「一緒に練習しているから、知ってはいるけど、試してはいないの。まだ『呪い』を消せるほど高密度ではないから」
「そっか。確かに慎重になるよね。マリアは魔力量も多いから、すぐに練度も上がると思うけど。念のため、アイザック様みたいに食べ物も工夫してみる?」
振り返ると、マリアが嬉しそうにニコニコしている。
「ノエルって、前より勤勉になったよね。ユリウス先生の影響?」
びくっと肩が上がる。
前のノエルは魔法にあまり興味がなかったのだろうか。
「んー……そう、なのかな? ねぇ、マリア。前の私って、どんな感じだったっけ? 未だに、よく思い出せないんだよね」
さりげなく探りを入れてみる。
「前のノエルは明るくって元気で、いつも楽しいことを探している感じだったわよ。休みの日は、よく一緒に街に出かけてショッピングしたり、学院でも一緒に庭でお昼を食べたり。おしゃべりも大好きだったな」
(まるで別人じゃないか。真逆ってくらい、違う人だ)
中見が別人なのだから当たり前だが、それでも違い過ぎる。
(私にはない要素を全部持っている人だ。寄せていこうと思って聞いたけど、寄せきれない)
「入学してすぐの頃かなぁ、好きな人と手紙のやり取りをしていたわよね。相手を聞いても、内緒って言って教えてくれなかったけど。もしかしたら、あれがユリウス先生だったのかなーって、今は思っているけど」
どうなの? と言わんばかりにマリアが期待の目を向ける。
(ユリウスとノエルが? 有り得なくは、ないかもな。魔石貰っているし。だからユリウスは、中身が変わった今でもノエルを構うのかな)
執拗に名前を知りたがるのも、そのあたりが理由なのかもしれない。
ユリウスは前のノエルに付いて「魔石を渡した時に会っただけで知らない」と話していたが。ユリウスの言葉が全部事実は限らない。
(教えてくれないこともあるもんな。私が転生して来ること、誰に聞いたんだろ。まだ聞き出せてないや)
他人のことは聞きたがるのに、自分の事情を話さないのは、狡い。
隣でマリアがキラキラの視線を向けているのに気が付いて、そっと目を逸らした。
「いや、どうかな。前のことは覚えていないけど、今は別に何とも思っていないかな」
「そうなの? でも、ユリウス先生からもらった指輪、外さずに大切にしているじゃない?」
「これは、魔石の関係で外せないだけだよ。ユリウス先生も他意はないと思うよ」
「ユリウス先生には他意があると思うなぁ。指輪以外にも魔道具って他に、たくさんあるもの。手作りの指輪を、何とも思っていない子にあげたりしないわよ」
マリアがニコニコと良い笑顔を向ける。
(そんな、何かを期待されても、困るな)
本来ならユリウスと親密になるのはマリアでなければいけない。
ルート外の攻略対象にも愛されてしまうのが、主人公という生き物だ。
(どう考えても、ノエルが邪魔しているよな)
ユリウスの執着が愛やら恋やらとは違っていたとしても、興味が向いている事実には、違いない。
(いい加減、離れなくちゃ。マリアとユリウスの親密度、きっとあれ以来、上がってない)
俯くノエルに、マリアが後ろから抱き付いた。
「でも、ちょっと寂しいかな。ユリウス先生に、ノエルを取られちゃった気分」
ノエルは思い切り後ろを振り返った。
「何言ってんの? 取られてないから! 私の一番は、常にマリアだから!」
言うまでもない。原作者が一番優先して考えるのは、常に主人公だ。
「本当に?」
首を大きく何度も縦に振る。
「私は、一番じゃなくてもいいのよ。ノエルには幸せになってほしいもの。だから、自分の気持ちにもっと素直になってほしいの。ノエルが誰を選んでも、私、応援するわよ」
マリアがノエルの肩をキュッと抱く。
「たとえ前のノエルと違っても、私にとっては大切な友人に変わりないもの」
耳元で聞こえた声に、振り返る。
ノエルから離れて、マリアが先を歩き出した。
「早く行こう。皆、待っているわよ」
振り返ったマリアは、いつものように笑っていた。
(今のって……。もしかして、マリアはノエルの中身が違うことに気が付いているのかな)
この世界でも、一つの体に二つの魂が入れ替わる転生など、ありはしない。
だが、ノエルの変化を一番身近で感じているのも、マリアであるはずだ。
「うん、今行く」
マリアから大切な友人を奪ってしまった自分が近くにいて良いのかと考えると、隣を歩くことはできなかった。
並行して学院内の呪い持ちの管理も行われているが、あれ以来、『呪い』の発動はぴたりと止まった。
(嵐の前の静けさでなければいいけど)
不気味な予感が過る中、朗報もあった。
マリアが中和術の会得に成功したのだ。
「まだ、完璧ではないけど、十回に一回くらい、できるようになったの!」
ノエルの部屋に飛び込んできたマリアが、興奮気味に語る。
これにはノエルも歓喜した。
「マリアなら絶対やれると思ってた! さすが私のマリアだよ」
二人して抱き合いながら、ぴょんぴょん飛び跳ねる。
(やっぱり間に合った。主人公はできる子なんだよ。しかし、裏を返せば決戦が近いって話だ)
国の宰相が動き出した以上、ノアも焦りを感じているはずだ。
いつどんな手段で攻撃を仕掛けてくるか、わからない。
「とりあえず、後は精度を高めよう。確実に使えるようにならないとね」
「そうね、広範囲で使えれば、アイザックだけじゃなく、『呪い』に怯えている人を助けることもできるわよね!」
「できるよ。この国で中和術を使える魔術師は今現在、マリアだけだ。マリアにしか、できないことだよ」
意気込むマリアと手を繋いで、クラブ室に向かう。
「アイザック様には、もう伝えたの? 呪いの中和は試した?」
マリアが首を振る。
「一緒に練習しているから、知ってはいるけど、試してはいないの。まだ『呪い』を消せるほど高密度ではないから」
「そっか。確かに慎重になるよね。マリアは魔力量も多いから、すぐに練度も上がると思うけど。念のため、アイザック様みたいに食べ物も工夫してみる?」
振り返ると、マリアが嬉しそうにニコニコしている。
「ノエルって、前より勤勉になったよね。ユリウス先生の影響?」
びくっと肩が上がる。
前のノエルは魔法にあまり興味がなかったのだろうか。
「んー……そう、なのかな? ねぇ、マリア。前の私って、どんな感じだったっけ? 未だに、よく思い出せないんだよね」
さりげなく探りを入れてみる。
「前のノエルは明るくって元気で、いつも楽しいことを探している感じだったわよ。休みの日は、よく一緒に街に出かけてショッピングしたり、学院でも一緒に庭でお昼を食べたり。おしゃべりも大好きだったな」
(まるで別人じゃないか。真逆ってくらい、違う人だ)
中見が別人なのだから当たり前だが、それでも違い過ぎる。
(私にはない要素を全部持っている人だ。寄せていこうと思って聞いたけど、寄せきれない)
「入学してすぐの頃かなぁ、好きな人と手紙のやり取りをしていたわよね。相手を聞いても、内緒って言って教えてくれなかったけど。もしかしたら、あれがユリウス先生だったのかなーって、今は思っているけど」
どうなの? と言わんばかりにマリアが期待の目を向ける。
(ユリウスとノエルが? 有り得なくは、ないかもな。魔石貰っているし。だからユリウスは、中身が変わった今でもノエルを構うのかな)
執拗に名前を知りたがるのも、そのあたりが理由なのかもしれない。
ユリウスは前のノエルに付いて「魔石を渡した時に会っただけで知らない」と話していたが。ユリウスの言葉が全部事実は限らない。
(教えてくれないこともあるもんな。私が転生して来ること、誰に聞いたんだろ。まだ聞き出せてないや)
他人のことは聞きたがるのに、自分の事情を話さないのは、狡い。
隣でマリアがキラキラの視線を向けているのに気が付いて、そっと目を逸らした。
「いや、どうかな。前のことは覚えていないけど、今は別に何とも思っていないかな」
「そうなの? でも、ユリウス先生からもらった指輪、外さずに大切にしているじゃない?」
「これは、魔石の関係で外せないだけだよ。ユリウス先生も他意はないと思うよ」
「ユリウス先生には他意があると思うなぁ。指輪以外にも魔道具って他に、たくさんあるもの。手作りの指輪を、何とも思っていない子にあげたりしないわよ」
マリアがニコニコと良い笑顔を向ける。
(そんな、何かを期待されても、困るな)
本来ならユリウスと親密になるのはマリアでなければいけない。
ルート外の攻略対象にも愛されてしまうのが、主人公という生き物だ。
(どう考えても、ノエルが邪魔しているよな)
ユリウスの執着が愛やら恋やらとは違っていたとしても、興味が向いている事実には、違いない。
(いい加減、離れなくちゃ。マリアとユリウスの親密度、きっとあれ以来、上がってない)
俯くノエルに、マリアが後ろから抱き付いた。
「でも、ちょっと寂しいかな。ユリウス先生に、ノエルを取られちゃった気分」
ノエルは思い切り後ろを振り返った。
「何言ってんの? 取られてないから! 私の一番は、常にマリアだから!」
言うまでもない。原作者が一番優先して考えるのは、常に主人公だ。
「本当に?」
首を大きく何度も縦に振る。
「私は、一番じゃなくてもいいのよ。ノエルには幸せになってほしいもの。だから、自分の気持ちにもっと素直になってほしいの。ノエルが誰を選んでも、私、応援するわよ」
マリアがノエルの肩をキュッと抱く。
「たとえ前のノエルと違っても、私にとっては大切な友人に変わりないもの」
耳元で聞こえた声に、振り返る。
ノエルから離れて、マリアが先を歩き出した。
「早く行こう。皆、待っているわよ」
振り返ったマリアは、いつものように笑っていた。
(今のって……。もしかして、マリアはノエルの中身が違うことに気が付いているのかな)
この世界でも、一つの体に二つの魂が入れ替わる転生など、ありはしない。
だが、ノエルの変化を一番身近で感じているのも、マリアであるはずだ。
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