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四月二日:二
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「放課後だよ~~~!!!」
間抜けな声が聞こえてきた。
「間抜けとか言うなよ、悲しんじゃうぜ」
「心の声を読まないで。むしろどうやって読んだの」
「それは企業秘密にさせてもらおう。そんなことより昨日の続きなのよ!」
ひとまず二人は手近な空き教室へ移動した。
「さ、とりあえずここに荷物置いて、作戦会議しよ!」
祭がおもむろに取り出したのはノートだった。
「昨日話した七不思議のうち、既に二つクリアしたじゃん。残るは五つ、それも夜に検証するものが多いのが現状なのよねぇ」
「花子さんはクリアなの・・・」
「桜が散るまでがリミットだと考えると、そんなにゆっくり調査してられないのよ。できることなら今日、明日中に探し出さないと七つ目の話の検証が難しくなるけど、問題があるのよ」
花子さん問題は無視する方針のようだ。
「問題?」
「夜っていうのは日が沈んでからっていう解釈で進めるとして、問題は日が沈んでから先生に見つからずにどの程度動けるか、何時ごろが学校に居座れるギリギリなのかっていうことなのよ」
「確かに、最終下校時刻じゃ間に合わないね・・・」
この学校の最終下校時刻は午後七時である。さすがにその時間までだと、良くて一つ検証するのがやっとだろう。
「そこで!この作戦会議なのよ!」
「なにかいい案あるの?」
彼女は笑った。ニヤリと。まるで策士のように不敵な笑みだった。
華火と祭は空き教室を後にして学校の裏庭の隅に体を隠し、時間が過ぎるのを待っていた。二人は一度別々に帰宅するふりをして、コンビニで夕飯まで買っていた。
「今日は最終下校時刻が昨日より遅いからね。それならある程度遅くまで残ってる教員や生徒はいるんだよ。つまり人がいる環境っていうのが、外からもわかる。安全性も上がる。最悪見つかっても、部活が長引いて、とか忘れ物してしまって、とかの言い訳が使えるのよ」
「ずる賢い・・・」
「ずるは余計なのよなぁ」
二人は残っている先生や警備員に注意しながら小声で話し始めた。
「三つ目の『夜更けまで校舎に居続けると一人閉じ込められる』は一番最後に回そうか。正直、どうすればいいのかよくわからないし」
「じゃあ、四つ目の『夜に音楽室からピアノの音が聞こえてくる』から始める?」
「うん、そうしよう!じゃあ、と・り・あ・え・ず、音楽室に行きますか。・・・音楽室ってどこにあったっけ?」
「五階にあるよ」
「いや~ん、さすが華火!音楽室なんて選択科目取ってないと、なかなか行かないのよ~」
てへっ☆、という効果音が聞こえそうな顔だった。
「じゃあさくさく行きましょう」
「やだ超ドライじゃん。踏んでくださいって言われたりしない?」
「言われたことないし、人をドS扱いしないでほしい」
裏庭を出た二人は、校舎にいる人達に気づかれないよう、注意を払いつつ階段を進んだ。
「ここだよ、ここが音楽室」
音楽室に明かりはなく、鍵がかかっているようだった。
「やっぱ鍵かかってるのよね~、ピアノの音が聞こえれば勝ちだと思ったから、どうにかなるかなぁ~って、思ってたんだけどな~」
ガチャッ
「はやく入ろ?」
「・・・えっ!?どういうこと?!」
「声大きい。早く来て!」
カツカツカツ・・・
二人が音楽室に入るやいなや足音が聞こえてきた。
「なんか聞こえた気がしたけど、こっちじゃなかったかな。う~ん」
おそらくまだ仕事をしていた先生のうちの一人だろう。扉一枚隔てた場所で二人は手で口を押え、必死に、息を潜めていた。指一本までに神経が張り巡らされ、体に力が入っていた。
「一応あとでもう一周りしておくか」
足音が再び聞こえ、今度は遠ざかっていった。
「・・・」
「・・・・・」
「・・・はぁぁぁぁぁぁ~~~~」
華火はふぅ、と一息つき、祭は全身の力が抜け、声にならない声をあげながら床に倒れ込んだ。
「危機一髪だったのよぉ~、ありがと~華火ぃぃ~」
「どういたしまして」
「というか、なんで鍵開けられたの?」
祭は顔をぐいっと華火の顔に近づける。
「あぁ、それはね、昨日学校探索をしてた時にちょうど、音楽の先生が帰るところに出くわしてね。先生、壁にかけてる絵の額縁の隙間に鍵を挟んで帰ってたの。不用心だよね」
「~~~っ!おかげで見つからずに済んだし、音楽室にも入れたのよ~~~!」
祭は華火に抱きつき犬を可愛がるかのように頭を撫で回した。
「ん!やめて、髪グチャグチャ」
華火は口では嫌がっていたが、まんざらでもなさそうだった。
「ただ、音楽室には入れたけど、音楽準備室の方はセキュリティカードが必要だから、生徒が開けるのは無理そうだったよ」
音楽準備室とは音楽の先生が授業の準備をしていたり、ピアノ以外の楽器や楽譜をしまっている部屋である。音楽室にはピアノと黒板、パイプ椅子くらいしか置いていない。
「いやいやいや~、十分なのよ。七不思議的にも夜に【音楽室】からピアノの音が聞こえてくる、だからね。でも、結局何も聞こえないか・・・」
祭は手を顎につけて唸る。
「そううまくはいかないよ。私は夜の学校にいるだけで、ちょっとワクワクする」
「ほんと華火は素直だねぇ~」
再び祭は華火に抱きついた。
「はいはい、ありがとう」
「こーのツンデレ~」
音楽室の中をざっと見渡し、変わっているところも、特にない。強いて言うなら、思っていたよりも狭い造りになっており、奥のほうに段ボールの塔が立っていることくらいだ。ピアノの鍵盤蓋には鍵がかかっており、音が出せる状態ではなかった。
人目につかないのを良いことに、二人は今後の進行について会議を始めた。
「なにもなさそうだし、次の七不思議いこっか」
「次は五つ目だよね?」
「そうなのよ!五つ目、夜になると第二階段が一段増える、っていうやつ!」
「・・・でもこれどこが第二階段かわからないし、そもそも階段の段数もわからないよね?」
「ふっふっふっ、これは私を褒めてほしいのよなぁ」
ごそごそと制服のスカートのポッケから小さな紙切れを取り出した。
間抜けな声が聞こえてきた。
「間抜けとか言うなよ、悲しんじゃうぜ」
「心の声を読まないで。むしろどうやって読んだの」
「それは企業秘密にさせてもらおう。そんなことより昨日の続きなのよ!」
ひとまず二人は手近な空き教室へ移動した。
「さ、とりあえずここに荷物置いて、作戦会議しよ!」
祭がおもむろに取り出したのはノートだった。
「昨日話した七不思議のうち、既に二つクリアしたじゃん。残るは五つ、それも夜に検証するものが多いのが現状なのよねぇ」
「花子さんはクリアなの・・・」
「桜が散るまでがリミットだと考えると、そんなにゆっくり調査してられないのよ。できることなら今日、明日中に探し出さないと七つ目の話の検証が難しくなるけど、問題があるのよ」
花子さん問題は無視する方針のようだ。
「問題?」
「夜っていうのは日が沈んでからっていう解釈で進めるとして、問題は日が沈んでから先生に見つからずにどの程度動けるか、何時ごろが学校に居座れるギリギリなのかっていうことなのよ」
「確かに、最終下校時刻じゃ間に合わないね・・・」
この学校の最終下校時刻は午後七時である。さすがにその時間までだと、良くて一つ検証するのがやっとだろう。
「そこで!この作戦会議なのよ!」
「なにかいい案あるの?」
彼女は笑った。ニヤリと。まるで策士のように不敵な笑みだった。
華火と祭は空き教室を後にして学校の裏庭の隅に体を隠し、時間が過ぎるのを待っていた。二人は一度別々に帰宅するふりをして、コンビニで夕飯まで買っていた。
「今日は最終下校時刻が昨日より遅いからね。それならある程度遅くまで残ってる教員や生徒はいるんだよ。つまり人がいる環境っていうのが、外からもわかる。安全性も上がる。最悪見つかっても、部活が長引いて、とか忘れ物してしまって、とかの言い訳が使えるのよ」
「ずる賢い・・・」
「ずるは余計なのよなぁ」
二人は残っている先生や警備員に注意しながら小声で話し始めた。
「三つ目の『夜更けまで校舎に居続けると一人閉じ込められる』は一番最後に回そうか。正直、どうすればいいのかよくわからないし」
「じゃあ、四つ目の『夜に音楽室からピアノの音が聞こえてくる』から始める?」
「うん、そうしよう!じゃあ、と・り・あ・え・ず、音楽室に行きますか。・・・音楽室ってどこにあったっけ?」
「五階にあるよ」
「いや~ん、さすが華火!音楽室なんて選択科目取ってないと、なかなか行かないのよ~」
てへっ☆、という効果音が聞こえそうな顔だった。
「じゃあさくさく行きましょう」
「やだ超ドライじゃん。踏んでくださいって言われたりしない?」
「言われたことないし、人をドS扱いしないでほしい」
裏庭を出た二人は、校舎にいる人達に気づかれないよう、注意を払いつつ階段を進んだ。
「ここだよ、ここが音楽室」
音楽室に明かりはなく、鍵がかかっているようだった。
「やっぱ鍵かかってるのよね~、ピアノの音が聞こえれば勝ちだと思ったから、どうにかなるかなぁ~って、思ってたんだけどな~」
ガチャッ
「はやく入ろ?」
「・・・えっ!?どういうこと?!」
「声大きい。早く来て!」
カツカツカツ・・・
二人が音楽室に入るやいなや足音が聞こえてきた。
「なんか聞こえた気がしたけど、こっちじゃなかったかな。う~ん」
おそらくまだ仕事をしていた先生のうちの一人だろう。扉一枚隔てた場所で二人は手で口を押え、必死に、息を潜めていた。指一本までに神経が張り巡らされ、体に力が入っていた。
「一応あとでもう一周りしておくか」
足音が再び聞こえ、今度は遠ざかっていった。
「・・・」
「・・・・・」
「・・・はぁぁぁぁぁぁ~~~~」
華火はふぅ、と一息つき、祭は全身の力が抜け、声にならない声をあげながら床に倒れ込んだ。
「危機一髪だったのよぉ~、ありがと~華火ぃぃ~」
「どういたしまして」
「というか、なんで鍵開けられたの?」
祭は顔をぐいっと華火の顔に近づける。
「あぁ、それはね、昨日学校探索をしてた時にちょうど、音楽の先生が帰るところに出くわしてね。先生、壁にかけてる絵の額縁の隙間に鍵を挟んで帰ってたの。不用心だよね」
「~~~っ!おかげで見つからずに済んだし、音楽室にも入れたのよ~~~!」
祭は華火に抱きつき犬を可愛がるかのように頭を撫で回した。
「ん!やめて、髪グチャグチャ」
華火は口では嫌がっていたが、まんざらでもなさそうだった。
「ただ、音楽室には入れたけど、音楽準備室の方はセキュリティカードが必要だから、生徒が開けるのは無理そうだったよ」
音楽準備室とは音楽の先生が授業の準備をしていたり、ピアノ以外の楽器や楽譜をしまっている部屋である。音楽室にはピアノと黒板、パイプ椅子くらいしか置いていない。
「いやいやいや~、十分なのよ。七不思議的にも夜に【音楽室】からピアノの音が聞こえてくる、だからね。でも、結局何も聞こえないか・・・」
祭は手を顎につけて唸る。
「そううまくはいかないよ。私は夜の学校にいるだけで、ちょっとワクワクする」
「ほんと華火は素直だねぇ~」
再び祭は華火に抱きついた。
「はいはい、ありがとう」
「こーのツンデレ~」
音楽室の中をざっと見渡し、変わっているところも、特にない。強いて言うなら、思っていたよりも狭い造りになっており、奥のほうに段ボールの塔が立っていることくらいだ。ピアノの鍵盤蓋には鍵がかかっており、音が出せる状態ではなかった。
人目につかないのを良いことに、二人は今後の進行について会議を始めた。
「なにもなさそうだし、次の七不思議いこっか」
「次は五つ目だよね?」
「そうなのよ!五つ目、夜になると第二階段が一段増える、っていうやつ!」
「・・・でもこれどこが第二階段かわからないし、そもそも階段の段数もわからないよね?」
「ふっふっふっ、これは私を褒めてほしいのよなぁ」
ごそごそと制服のスカートのポッケから小さな紙切れを取り出した。
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