47 / 64
四月九日:濁流
しおりを挟む
真水は一人でベンチに座り続けていた。
どれくらい時間がたっただろうか。だんだんと手先足先が冷えていく。それでも、思いが溢れて止まらなかった。
―――千歳華火に飛鳥祭を譲るのか?飛鳥祭の精神も、体も、唇も、全部譲ると、本当にそう思っているのか?
「譲らない」
―――私の祭が離れていくことを許容できる?
「できない」
手水真水はずっと、飛鳥祭を見守ってきた。執着的に。
飛鳥祭に害をなすような人間は一人残らず消えてしまった方がいいと本気で思っている。そんな人間はゴミだと、心から信じている。
手水真水が初めて殺意を持ったのは小学校三年生の時だった。担任の先生に対してだった。
彼は自分のクラスの子供によくセクハラをしているような人間だった。保護者からの評判も良くなかった。それでも頭だけは良かったらしく、のらりくらりと教師を続けているような、そんな人だった。
二人のクラス担任になった年、祭に手を出そうとした。真水は許せず、その|担任《ルビ》の家に延々と誹謗中傷の電話やメール、手紙を出し続けた。そんな程度じゃ許せないくらいの殺意が溢れていたが、ほどなくして彼は自殺した。身から出た錆と言うのか、真水以外からも同様の電話やメールがあったらしい。そのため、比較的あっさりと決着がついた。
その次は中学二年生の時。祭がクラスの男の子に告白されて、振ったことがあった。それで終わればよかったのだが、相手の男がストーカーのようになってしまった。祭は気にしてなかったようだが、真水は違った。持ち前のスキルで、相手の親の勤め先のデータを操作し、地方に引っ越しをさせた。それでもまだメールが届くと知り、相手の携帯端末にウイルスを流してデータを消した。
いつしか相手は道路に飛び出して死んだと風の噂が流れた。
ネットでの誹謗中傷のダメージは、ちゃんと理解しないといけない。理解して、使えればいいのだ。
―――はぁ。
「・・・本当に気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い」
手水真水は真顔で言う。
「ああ、祭はきっとまだ何もわかっていないんだ。だからわからせてあげないといけないんだ。私といることが一番、祭に取って良い選択なんだって。・・・そして、私から祭を奪った|千歳華火《ルビ》が一番悪いんだ」
どうしようもない思いが、夜の街に溜まる。
どれくらい時間がたっただろうか。だんだんと手先足先が冷えていく。それでも、思いが溢れて止まらなかった。
―――千歳華火に飛鳥祭を譲るのか?飛鳥祭の精神も、体も、唇も、全部譲ると、本当にそう思っているのか?
「譲らない」
―――私の祭が離れていくことを許容できる?
「できない」
手水真水はずっと、飛鳥祭を見守ってきた。執着的に。
飛鳥祭に害をなすような人間は一人残らず消えてしまった方がいいと本気で思っている。そんな人間はゴミだと、心から信じている。
手水真水が初めて殺意を持ったのは小学校三年生の時だった。担任の先生に対してだった。
彼は自分のクラスの子供によくセクハラをしているような人間だった。保護者からの評判も良くなかった。それでも頭だけは良かったらしく、のらりくらりと教師を続けているような、そんな人だった。
二人のクラス担任になった年、祭に手を出そうとした。真水は許せず、その|担任《ルビ》の家に延々と誹謗中傷の電話やメール、手紙を出し続けた。そんな程度じゃ許せないくらいの殺意が溢れていたが、ほどなくして彼は自殺した。身から出た錆と言うのか、真水以外からも同様の電話やメールがあったらしい。そのため、比較的あっさりと決着がついた。
その次は中学二年生の時。祭がクラスの男の子に告白されて、振ったことがあった。それで終わればよかったのだが、相手の男がストーカーのようになってしまった。祭は気にしてなかったようだが、真水は違った。持ち前のスキルで、相手の親の勤め先のデータを操作し、地方に引っ越しをさせた。それでもまだメールが届くと知り、相手の携帯端末にウイルスを流してデータを消した。
いつしか相手は道路に飛び出して死んだと風の噂が流れた。
ネットでの誹謗中傷のダメージは、ちゃんと理解しないといけない。理解して、使えればいいのだ。
―――はぁ。
「・・・本当に気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い」
手水真水は真顔で言う。
「ああ、祭はきっとまだ何もわかっていないんだ。だからわからせてあげないといけないんだ。私といることが一番、祭に取って良い選択なんだって。・・・そして、私から祭を奪った|千歳華火《ルビ》が一番悪いんだ」
どうしようもない思いが、夜の街に溜まる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる