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四月九日:絵空事でも
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三浦は一度状況を整理するために警察署へ戻ってきていた。一息着いた時に話しかけてきたのは後輩の寒川という刑事だった。
「聞きましたか、このままいけば明日の朝から俺たちの仕事は本部の片付けになるそうですよ」
「本当ですか・・・。まぁきな臭い事件の捜査より、よっぽど人間的ですけど」
「俺は嫌ですよ。片付けなんて、面倒くさい」
「寒川くんはいつも片付けがおおざっぱ過ぎて、小言を言われてますからね」
「また小言を言われるのかと思うと嫌な気分になるので、俺は意地でも犯人をあぶりだしたいところですよ」
寒川は注文したブレンドコーヒーに手をつける。
「そんなわけで、三浦さん。どうですか、捜査の首尾は」
いやぁ、と三浦は言葉を濁す。
「千歳華火が怪しいと思って、いろいろ調べてみたんですが、あまり犯人に近づいている感じがしないんですよ。今から捜査方針を変えるとなると、とても無理そうだと頭を抱えています」
「千歳華火ですか。なんか意外なところですね、女子高生ですよね。まぁ最近の子どもは怖いっすからね。・・・でも子どもが相手ってのは、どうにもやりにくいですね~」
寒川は手帳を取り出し、三浦と情報をすり合わせていく。
千歳華火。十六歳、函嶺高校二年生。一人暮らし。
「先ほど役所に行ってきましたが、家族構成としては父、母と彼女の三人だけですね。両親は離婚済み、最近はどちらも付き合っている恋人あり。同棲しているようです」
「なるほど、では一人暮らしはここ最近ですか?」
「そうですね、恐らくは高校に入学した段階で一人暮らしを開始したのではないかと踏んでいます」
「わかりました。両親の素行もあり、千歳華火の家庭環境はあまり良くなかったようです」
「まぁ、高校生で一人暮らしをしている状況的にそれは伺えますね」
「・・・そのためか、同じく家庭環境が良くなかった忍冬矜とはとても仲が良かったそうです」
「何度かお見舞いに行っていたようですし、そこは頷けますね」
「しかし、高校に上がってからは疎遠になっていたようです。二人が話している印象を持っている人間が高校にはいませんでした」
寒川は千歳華火について聞き込みも行っていた。
「・・・何か理由があったのでしょうか」
「わかりません。それと関係しているかはわかりませんが、高校に入学してすぐあたりから千歳華火に結構な額の収入がありました」
「結構な額、というとアルバイト程度ではない、ということですか?」
寒川がこちらです、と見せてきた資料には二か月に一度ほどだったが、およそ二十万ほどの収入があった。そしてこれとは別に親からの仕送りも確認できた。
「たしかに、高校生がかなり頑張ったとしても、なかなか難しい金額ですね」
「千歳華火はこれといったアルバイトをしていないようでした。なにか隠れてやっているかもしれませんが、そこまでは追い切れてないです。すいません」
「いえ、私ではこんな情報を見つけることすら出来なかったと思います。流石、寒川くんですね」
三浦は寒川の言葉に軽く礼を言う。
「千歳華火は成績も良く、運動も出来たようです」
「それはなんとなく、わかるところですね」
三浦は先日のことを思い出す。
「はい。ただ、あまり過度な話は聞かないので、あえて学校などではセーブしていたのかもしれません」
「確かに、あの運動能力をフルで活用していれば、今頃テレビにでも出演しているか、オリンピックとか目指せそうですしね・・・」
「今まで、優等生としての評判が大きかった千歳華火ですが、ここ最近は学校を急に休んだり、夜中に学校へ忍び込むなど行動に変化があるのが見て取れます」
「・・・反抗期、というわけではないですよね」
「確かに年頃から考えればそうかもしれませんが、考えにくいですね。あまりに唐突で何がしたいのかわかりません。それに誰に反抗しているのかも」
寒川はどこか遠い目をしていた。
「反抗期なんて、反抗する相手がいなければ空しいだけですから」
「・・・そうですか」
三浦は特に何かを言うこともなく、寒川の話の続きを待つ。
「続けます。千歳華火は新学期が始まってからは飛鳥祭と手水真水という同じクラスの女子生徒と仲良くなっていたそうです。千歳華火はあまり人と仲良くするタイプの人間ではなかったようですが、あんなに笑っているのを初めて見た、という声もありました」
「なんだか青春を感じますね」
「優等生ならざる行動はこの飛鳥祭が原因ではないか、という声もあります」
「友達の影響ですか」
「はい。飛鳥祭は空手が得意でインターハイ三位の実力者ですが、もともとの才能が大きかったのか、普段の行動はわりと派手なことが多く、あまり落ち着きはなかったそうです」
「それが千歳華火に作用した、と」
「まぁ、これも推測の域を出ないところではあります」
寒川は一拍あけた。
「ここからの報告が最も重要になります」
三浦は寒川の目つきの変化を見逃さなかった。
「千歳華火の三月三十一日の行動を調査したところ、彼女はその日忍冬矜と会っていました」
三浦は顔をこわばらせる。
「そして忍冬矜が一緒にいたかは不明ですが、その日、千歳華火は何故か函嶺高校にいたことが分かっています。その後、四月一日の朝方、箱根伊予総合病院に現れていたようです」
「そんな情報どこから仕入れたんですか」
「それは企業秘密です。裏も取りました。確かです」
「そうですか・・・」
三浦は考え込む。
「千歳華火が沖峰浄呉を刺し、それを見たショックで倒れた忍冬矜を千歳華火が病院まで運んだ、ということでしょうか。ただ、学校というのがわかりませんね。沖峰浄呉は自宅で死んでいた。函嶺高校は沖峰浄呉の自宅とも箱根伊予総合病院とも特別近くもありませんしね」
寒川もそこは腑に落ちないようだった。
「そうですね。あとその路線でいくなら、忍冬矜の血液は現場で発見されていないでしょう」
そう、忍冬矜は無傷でありながら、致死量とも言える彼女の血液が沖峰浄呉の死体と一緒に発見されている。
「謎が深まるばかりですが、確かに千歳華火は何かを知っているのでしょう。話してくれるかは別として」
「千歳華火がここ最近学校に忍び込んでいたのは、三月三十一日の出来事に関係したなにかを行っていた、からかもしれませんね」
「・・・学校に人間の傷を一瞬で治す魔法がある、とか」
「そんなまさか」
二人は函嶺高校と千歳華火に何かがあると思いながら、致死量の血液を流した少女を健康体にすぐに戻す術を想像するのは難しかった。それはまるでゲームの回復アイテムのようなものだろうか。
「仮に、仮にです」
三浦は前置きを置いて話始める。
「もし函嶺高校になんらかの回復システムがあったと仮定すれば、沖峰浄呉と忍冬矜はどちらも本当ならあの場で死んでいた、ということになりますよね。忍冬矜の命をつなぎとめたのが千歳華火。それならば、千歳華火が現場に着いた時点で二人は倒れていた、ということです。つまり、現段階で全く参考人として挙げられていない人物による犯行か、あの二人はお互いにお互いのことを刺した、本部と同じ自殺または心中という線、またはどちらかの無理心中という推理が出来そうですが、いかがでしょうか」
寒川は表情を変えない。
「三浦さんがそう考えられる、というのであればその可能性もあるのかもしれません。致命傷ほどの切り傷を一晩で治す方法さえあるのであれば」
「そこが問題ですねぇ」
こんな推理、報告書には書けませんし、本部の自殺という路線とでほぼ同じですからねぇ、と三浦は頭を掻く。
「あと今の推理で行くのであれば、もう一点考慮すべき点があります」
「それは?」
三浦は寒川に問いかける。
「全くの第三者の介入です。仮に、千歳華火が忍冬矜を運んだのであればその痕跡がどこかにあるはずです。運んだ際に血液が玄関に垂れていたとか、彼女の服の繊維があったとか、なんなら指紋だって出るでしょう」
そこで三浦も気づく。
「でもあの部屋には被害者の二人分の痕跡しかなかった。それは千歳華火が忍冬矜を運び出した後に、別の人間が証拠を隠滅しにきた、ということです」
まぁ、全て千歳華火が自分で証拠隠滅までやった、という線も残っていますが、流石に難しいのでは、と。
寒川が考える素振りをする。そして急に笑いだす。
「・・・どうしましたか?」
「いえ、もし二人を刺した犯人が別で存在するなら、可哀そうだな、と」
「可哀そう?」
三浦は首を傾げた。
「だって、証拠隠滅のために現場に戻ってきたら死体が一つ消えてるんですから。それはもう焦ったでしょう」
「あぁ、たしかに」
三浦も想像して笑ってしまった。
「すれ違いコントの始まりですよ」
「本当に芸人のネタでありそうですね」
「結構面白いですよ、すれ違いコント。にわかですが、おすすめはアンジャッシュの極秘情報というコントです」
「・・・寒川くん、お笑いとかも見るんですね」
「コミュニケーションツールの一つとして、ですが」
真顔で答える寒川のギャップに三浦は笑いを押えられなかった。
「・・・」
「いや、すいません。失礼しました」
「いえ」
外を見ればすでに日が沈みかけている。
「どんな結果にしろ、日付が変わるまでは捜査しましょう」
「わかりました」
「寒川くんよりは縁があるようなので、千歳華火と函嶺高校には私が向かいます。寒川くんは外部犯と共犯者について調べてみてもらってもいいでしょうか」
「わかりました」
思っていたよりも長居してしまった。急がなければ。ばたばたと準備をする三浦のポケットから音が鳴る。着信だ。登録していない番号だが、組織で働いていると突然番号を交換していない上司からかかってきたりもする。そうした慣れから三浦はあまり気負わずに電話にでた。
『もしもし、三浦仁さんの電話番号でお間違いないでしょうか』
女性の声だった。知り合いの女性にこんな声の人はいただろうかと考えると、相手から名乗ってくれた。
『千歳です。千歳華火です。今、お電話よろしいですか?』
三浦はすぐに手帳とペンを出す。書き記された文字は二十二時に函嶺高校第二校舎前。
「聞きましたか、このままいけば明日の朝から俺たちの仕事は本部の片付けになるそうですよ」
「本当ですか・・・。まぁきな臭い事件の捜査より、よっぽど人間的ですけど」
「俺は嫌ですよ。片付けなんて、面倒くさい」
「寒川くんはいつも片付けがおおざっぱ過ぎて、小言を言われてますからね」
「また小言を言われるのかと思うと嫌な気分になるので、俺は意地でも犯人をあぶりだしたいところですよ」
寒川は注文したブレンドコーヒーに手をつける。
「そんなわけで、三浦さん。どうですか、捜査の首尾は」
いやぁ、と三浦は言葉を濁す。
「千歳華火が怪しいと思って、いろいろ調べてみたんですが、あまり犯人に近づいている感じがしないんですよ。今から捜査方針を変えるとなると、とても無理そうだと頭を抱えています」
「千歳華火ですか。なんか意外なところですね、女子高生ですよね。まぁ最近の子どもは怖いっすからね。・・・でも子どもが相手ってのは、どうにもやりにくいですね~」
寒川は手帳を取り出し、三浦と情報をすり合わせていく。
千歳華火。十六歳、函嶺高校二年生。一人暮らし。
「先ほど役所に行ってきましたが、家族構成としては父、母と彼女の三人だけですね。両親は離婚済み、最近はどちらも付き合っている恋人あり。同棲しているようです」
「なるほど、では一人暮らしはここ最近ですか?」
「そうですね、恐らくは高校に入学した段階で一人暮らしを開始したのではないかと踏んでいます」
「わかりました。両親の素行もあり、千歳華火の家庭環境はあまり良くなかったようです」
「まぁ、高校生で一人暮らしをしている状況的にそれは伺えますね」
「・・・そのためか、同じく家庭環境が良くなかった忍冬矜とはとても仲が良かったそうです」
「何度かお見舞いに行っていたようですし、そこは頷けますね」
「しかし、高校に上がってからは疎遠になっていたようです。二人が話している印象を持っている人間が高校にはいませんでした」
寒川は千歳華火について聞き込みも行っていた。
「・・・何か理由があったのでしょうか」
「わかりません。それと関係しているかはわかりませんが、高校に入学してすぐあたりから千歳華火に結構な額の収入がありました」
「結構な額、というとアルバイト程度ではない、ということですか?」
寒川がこちらです、と見せてきた資料には二か月に一度ほどだったが、およそ二十万ほどの収入があった。そしてこれとは別に親からの仕送りも確認できた。
「たしかに、高校生がかなり頑張ったとしても、なかなか難しい金額ですね」
「千歳華火はこれといったアルバイトをしていないようでした。なにか隠れてやっているかもしれませんが、そこまでは追い切れてないです。すいません」
「いえ、私ではこんな情報を見つけることすら出来なかったと思います。流石、寒川くんですね」
三浦は寒川の言葉に軽く礼を言う。
「千歳華火は成績も良く、運動も出来たようです」
「それはなんとなく、わかるところですね」
三浦は先日のことを思い出す。
「はい。ただ、あまり過度な話は聞かないので、あえて学校などではセーブしていたのかもしれません」
「確かに、あの運動能力をフルで活用していれば、今頃テレビにでも出演しているか、オリンピックとか目指せそうですしね・・・」
「今まで、優等生としての評判が大きかった千歳華火ですが、ここ最近は学校を急に休んだり、夜中に学校へ忍び込むなど行動に変化があるのが見て取れます」
「・・・反抗期、というわけではないですよね」
「確かに年頃から考えればそうかもしれませんが、考えにくいですね。あまりに唐突で何がしたいのかわかりません。それに誰に反抗しているのかも」
寒川はどこか遠い目をしていた。
「反抗期なんて、反抗する相手がいなければ空しいだけですから」
「・・・そうですか」
三浦は特に何かを言うこともなく、寒川の話の続きを待つ。
「続けます。千歳華火は新学期が始まってからは飛鳥祭と手水真水という同じクラスの女子生徒と仲良くなっていたそうです。千歳華火はあまり人と仲良くするタイプの人間ではなかったようですが、あんなに笑っているのを初めて見た、という声もありました」
「なんだか青春を感じますね」
「優等生ならざる行動はこの飛鳥祭が原因ではないか、という声もあります」
「友達の影響ですか」
「はい。飛鳥祭は空手が得意でインターハイ三位の実力者ですが、もともとの才能が大きかったのか、普段の行動はわりと派手なことが多く、あまり落ち着きはなかったそうです」
「それが千歳華火に作用した、と」
「まぁ、これも推測の域を出ないところではあります」
寒川は一拍あけた。
「ここからの報告が最も重要になります」
三浦は寒川の目つきの変化を見逃さなかった。
「千歳華火の三月三十一日の行動を調査したところ、彼女はその日忍冬矜と会っていました」
三浦は顔をこわばらせる。
「そして忍冬矜が一緒にいたかは不明ですが、その日、千歳華火は何故か函嶺高校にいたことが分かっています。その後、四月一日の朝方、箱根伊予総合病院に現れていたようです」
「そんな情報どこから仕入れたんですか」
「それは企業秘密です。裏も取りました。確かです」
「そうですか・・・」
三浦は考え込む。
「千歳華火が沖峰浄呉を刺し、それを見たショックで倒れた忍冬矜を千歳華火が病院まで運んだ、ということでしょうか。ただ、学校というのがわかりませんね。沖峰浄呉は自宅で死んでいた。函嶺高校は沖峰浄呉の自宅とも箱根伊予総合病院とも特別近くもありませんしね」
寒川もそこは腑に落ちないようだった。
「そうですね。あとその路線でいくなら、忍冬矜の血液は現場で発見されていないでしょう」
そう、忍冬矜は無傷でありながら、致死量とも言える彼女の血液が沖峰浄呉の死体と一緒に発見されている。
「謎が深まるばかりですが、確かに千歳華火は何かを知っているのでしょう。話してくれるかは別として」
「千歳華火がここ最近学校に忍び込んでいたのは、三月三十一日の出来事に関係したなにかを行っていた、からかもしれませんね」
「・・・学校に人間の傷を一瞬で治す魔法がある、とか」
「そんなまさか」
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「仮に、仮にです」
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「それは?」
三浦は寒川に問いかける。
「全くの第三者の介入です。仮に、千歳華火が忍冬矜を運んだのであればその痕跡がどこかにあるはずです。運んだ際に血液が玄関に垂れていたとか、彼女の服の繊維があったとか、なんなら指紋だって出るでしょう」
そこで三浦も気づく。
「でもあの部屋には被害者の二人分の痕跡しかなかった。それは千歳華火が忍冬矜を運び出した後に、別の人間が証拠を隠滅しにきた、ということです」
まぁ、全て千歳華火が自分で証拠隠滅までやった、という線も残っていますが、流石に難しいのでは、と。
寒川が考える素振りをする。そして急に笑いだす。
「・・・どうしましたか?」
「いえ、もし二人を刺した犯人が別で存在するなら、可哀そうだな、と」
「可哀そう?」
三浦は首を傾げた。
「だって、証拠隠滅のために現場に戻ってきたら死体が一つ消えてるんですから。それはもう焦ったでしょう」
「あぁ、たしかに」
三浦も想像して笑ってしまった。
「すれ違いコントの始まりですよ」
「本当に芸人のネタでありそうですね」
「結構面白いですよ、すれ違いコント。にわかですが、おすすめはアンジャッシュの極秘情報というコントです」
「・・・寒川くん、お笑いとかも見るんですね」
「コミュニケーションツールの一つとして、ですが」
真顔で答える寒川のギャップに三浦は笑いを押えられなかった。
「・・・」
「いや、すいません。失礼しました」
「いえ」
外を見ればすでに日が沈みかけている。
「どんな結果にしろ、日付が変わるまでは捜査しましょう」
「わかりました」
「寒川くんよりは縁があるようなので、千歳華火と函嶺高校には私が向かいます。寒川くんは外部犯と共犯者について調べてみてもらってもいいでしょうか」
「わかりました」
思っていたよりも長居してしまった。急がなければ。ばたばたと準備をする三浦のポケットから音が鳴る。着信だ。登録していない番号だが、組織で働いていると突然番号を交換していない上司からかかってきたりもする。そうした慣れから三浦はあまり気負わずに電話にでた。
『もしもし、三浦仁さんの電話番号でお間違いないでしょうか』
女性の声だった。知り合いの女性にこんな声の人はいただろうかと考えると、相手から名乗ってくれた。
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