9 / 72
2
7.メイドの仕事 午後
しおりを挟む「柚子、柚子、起きなさい」
んっ……なんだ?遠くから私を呼ぶ声がする。お姉ちゃん?
ガバッと起き上がるとお姉ちゃんがソファーの横に立っていた。時間は14時。30分は寝ていたことになる。
「お姉ちゃん!おはよ!柚子は洗濯物片付けるよ!」
お説教はごめんだ。まだ何か言いたげなお姉ちゃんを尻目に洗濯場に走る。
洗濯物を取り込んでからが1番大変な作業だ、畳んだ物を個別に分けないといけない。似たような靴下履かないでよ、毎日同じことを思いながら仕分ける。
「柚子ちゃん、おやつの飲み物何がえぇ?」
15時が近づくと光くんが現れる。おやつはお姉ちゃんが作るけど、その時の飲み物を淹れるのは執事さんの仕事だ。見習いの光くんは最近お茶を淹れる仕事を任されたらしい。
「何があるー?本当はオレンジジュース飲みたいけど、紅茶でもいいよ」
「オレンジジュースも無いことはないんやけど……俺の練習にならんから、紅茶でもえぇかな?」
申し訳なさそうに光くんは私を見る。練習熱心だなと感心して、紅茶で大丈夫と返事をしてから急いで洗濯物を各部屋に配達する。
2階から降りてくると、ちょうど大雅くんと修斗くんが帰ってきたところだった。
「お帰りなさい!お疲れ様でした」
「ただいま、柚子」
「おぉ、柚子。ちょっと手伝え」
修斗くんは何やら、両手いっぱいの袋を抱えている。王宮に行くとお土産を貰うことが多いようだ。しょうがないので2袋待ってあげる。袋の中を覗くと瓶がいくつか入っている。
「これなぁに?」
「王宮で作ったいちごジャムと、薔薇のシロップだと。今年は大量に出来たからお裾分けだそうだ」
どれだけいっぱい出来たんだろう。すごい量だ。
「お姉ちゃんー!いちごジャムと薔薇シロップだって、王宮の」
キッチンまで、運んでテーブルの上に置く。
「随分たくさんあるのね。ちょうど良かった。今日はスコーンだからいちごジャムを使いましょう」
お姉ちゃんはおやつの準備、光くんはお茶の準備をしていた。
「薔薇のシロップ……?何使うんです?」
光くんがお姉ちゃんが片付ける瓶達を見つめる。確かに薔薇のシロップはこの国でも作ってる所は限られる。
「光くん初めて見る?結構珍しいよね。紅茶に入れたり、お菓子作りに使ったり、ご当主様はワインに入れてたなぁ。今度使ってみようね」
用意されたおやつを持って、ダイニング向かうとみんなが勢揃いだ。みんなの席にスコーンのお皿を置いて行く。私に続いて、光くんがお茶を配る。
「それでは、いただこう」
全員が席に着いたのを確認すると、大雅くんから号令がかかる。王宮での事や、午前中の屋敷の様子などをみんなで共有する。んっ……このスコーン美味しい!王宮のいちごジャムもなかなかだ。そして、光くんの淹れてくれた紅茶も美味しい!今日のおやつも大満足だ。
「なぁ、お茶どうやった?」
お姉ちゃんは大雅くん達とお話し合いがある様で、私と光くんがおやつの片付けを任された。食器を拭きながら、光くんは不安そうな顔で私に尋ねてきた。
「普通に美味しかったよ!……なんでそんな顔してるの」
「良かったぁ。いや、今日いつもと違う種類の茶葉使ったんよ。うまく淹れられるか不安やったから」
ホッとした様子の光くんにこちらも思わず笑顔になる。聞けば紅茶は種類によって、お湯の温度や蒸らす時間が違うらしい……私にはそんな技は無理だ。光くんはいつも偉いな、執事として一人前になろうと努力している。
いつも通りの夕食後だった。食後のお茶タイムを済ませて部屋に戻ると、大雅くんから呼び出された。なんだろう…花瓶を割ったのがバレたか?門番さんとこっそりお茶してるのがバレたか?怒られる……緊張しながら大雅くんの部屋の扉をノックする。
「入れ」
修斗くんが扉を開けた。部屋の中には、修斗くんと光くんの姿もある。
「夜分にすまないね。実は2人に話しがあって」
執務をしていた手を止めて、大雅くんが椅子から立ち上がる。
「実はそろそろ休暇を取って貰おうと思ってる。人員も不足しているから、1日だけになってしまうと思うが……」
そう言って1週間後の日付と休暇と書いてある紙が渡された。……お休みだ!1日だけでも嬉しい。何をして過ごそうか、そんなことを考えながら大雅くんの部屋を出た。
お休みに何をしたいか考えながら、お風呂に入ったらちょっと逆上せてしまった。部屋に戻ってベッドにゴロゴロしながら考える。お屋敷でまったり過ごすか……部屋の隅に重ねられた荷物を片付けるか、思い切って街に出かけるか。
コンコン……時刻は夜10時、こんな時間に控えめなノックだ。誰だろう。はーいと部屋の扉を開けると光くんがそこに立っていた。
「こんな時間にごめんな、ちょっと話しがあって」
どーぞ、と光くんを部屋に招く。こっちのお部屋は片付いてて良かった。向かい合って椅子に座る。
「お願いがあるんやけど……」
見たことないくらい神妙な面持ちだ。私に力になれることなのだろうか……。
「休暇の日、一緒に街に出掛けてくれへん?こっち来て立花さんとは何回か出掛けたんやけど、自分の買い物はしたことないし、街のことも知りたいねん。……柚子ちゃんなら詳しいと思ってん」
「……なーんだ、もっと深刻なことかと思った!いいよ!柚子が案内してあげる」
街は私の縄張りだ!隅から隅まで案内してあげよう。私の休暇は決まった!街にお出掛けだ!
0
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる