ようこそ、一条家へ

如月はづき

文字の大きさ
15 / 72
3

13.事件①

しおりを挟む
 

 久しぶりに晴れた日だ!朝起きてカーテンを開けてウキウキする。



「お姉ちゃん、おはよー!今日晴れてるねぇ」



「おはよう。そうね、久しぶりにいい天気そうで良かったわね」



 いつも通りの朝が始まった。朝食の時に大雅くんから、今日は騎士団の行事があるので門番さんはお休みだと伝えられた。

 朝食の食器を片付けながら、お姉ちゃんに尋ねる。



「騎士団の行事ってなぁに?」




「さぁ……お姉ちゃんも詳しくは知らないけれど、技術を披露したり、パレードをしたりするみたいね」



「へぇー!技術って?」



「剣術や馬術、柔術かしら?近頃だと拳銃の扱いも含まれると思うわ」



「ふーん。お姉ちゃん詳しいねぇ」



「いろいろと情報を仕入れておくのも公爵家のメイド長の務めよ」



 お姉ちゃんは物知りだなぁと思いつつ、私はあることに気づいた。



「門番さんがお休みってことは、門番さんのおやつはなし?」



 いつも門番の古林さんが休みの時は騎士団から別の門番さんが来るけど、今日は代わりの人は来ない……私はいつもおやつを分けて貰っているのに、そのおやつが今日は食べられない可能性が出てきた。これは大変だ。



「……柚子。あなたいつも、門番さんの差し入れを分けて貰っているようね」



「いや、あのっ……そのー」



 お姉ちゃんに注意されるのはごめんだ。適当に誤魔化さないと……。



「まぁ、大体予想はついてたから構わないわ。10時のおやつは何か用意しておくから手が空いたら食べてね」



 良かった。怒っている訳ではなさそうだ。



「うん!おやつ楽しみぃ」






 牛乳ゼリーな気がするなぁ、と洗濯物を干しながら思う。久しぶりに太陽と外の空気に当たったシーツは気持ちよさそうだ。おっと、ここでボケっとしている時間はない。お姉ちゃんは、手が空いたらおやつを食べていいと言った……つまり、仕事を早く終わらせないとおやつはなしだ!そんなことは避けなければいけない。


 玄関先を掃き掃除していると、修斗くんがやってきた。



「何してんだ?」



「えっ……」



 ほうきを持って、玄関を掃いている……。何しているって掃除以外に何があるんだろうか。修斗くんってやっぱりおかしい。



「おい!口に出てるぞ、俺はおかしくない!」



「おっとっと、思わず口に出ちゃった!だってさぁー、玄関掃いてるんだから、何してるって掃除以外のなんでもないじゃん?」



「ちっ……。生意気。お前本当に結衣に似てきたな」



「修斗くん、お姉ちゃんのこと生意気だと思ってたの?えーっ、お姉ちゃんに言っちゃおう!」



「ちょっと待て。おい、結衣には言うな。……違う!俺はお前に言うことがあって来たんだ」



 言うこと……?修斗くんの言うことは大体ろくでもない事だけど一応手を止めて話を聞く。



「今日は門番がいないから、門には近寄るな。誰が来てもだ!いいな」



 なんだ、そんな忠告か。顔見知りの郵便屋さんくらいしか来ないし、怪しい人が来れば私だって近寄らない。修斗くんは心配性すぎる所がある。



「はーい。わかってるよ」



 まだ何か言いたいことがありそうだったけど、私はまたほうきを動かす。今日は貴重な晴れの日だ、時間を有効に使わないと。






 門にはあまり近寄らない方がいい、それは分かっていたので必要最低限のところを掃除する。



「すみませーん、郵便ですー」



「あ、はーい!」



 声をかけてくれたのは、いつもの郵便屋さんだ。門を開けないで隙間から郵便を受け取る。送られてきた手紙の束に、自分宛がないかをチェックする。ご当主様宛がほとんどだ。掃除が終わったら立花さんに持っていこうと、とりあえず門番さんがいつも顔を出すカウンターの前に置く。




「お忙しいところ、失礼致します」



 掃除を再開してすぐに、とても丁寧に話しかけられた。顔を上げると門の向こうから、物腰柔らかそうな男の人が立っている。



「はい。何かご用ですか?」



 知らない人は何が目的かわからない。なるべく冷静に、一条家のメイドらしく、お姉ちゃんを真似して返事をする。




「道に迷ってしまいまして……土地勘が無いもので。こちらに行きたいのですが、お分かりになれば教えて頂けますか?」



 なーんだなんだ!困り人か!手に持っていたメモに記載されていたのは、この近くだ。



「あ、ここでしたら。この屋敷沿いを右に曲がって、そのあと……」



 口頭説明は難しいなと思って、門を開けた。



「角まで行けばわかりやすいので、案内しますね」



「ご丁寧にありがとうございます」



 ぺこりと頭を下げられる。人助けは素敵な事だし、お姉ちゃんやみんなも褒めてくれるはず。



「ここを真っ直ぐ行って、三つ目の角を……」



 いきなり口元に白い布が押し当てられて、どんどんぼーっとしてくる。おやつの時間はもうすぐなのに……。何が起きているの?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

処理中です...