ようこそ、一条家へ

如月はづき

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22.柚子はスパイ①

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 暇だ!暇だ!暇だ!謹慎からもう3日も経った!建物から出られないから、門番さんに捜査状況を聞くことも出来ない。いつ外に行けるんだ、いつお出かけしていいんだ、いつクロワッサン食べられるんだ。




「あ、光くーん」


 2階の廊下をモップで拭いて暇を潰す。目の前を私と同じく謹慎中で暇を持て余しているだろう人物が通りかかった。


「おー、柚子ちゃん。そんな隅っこまで丁寧に掃除してすごいなぁ」


「まぁねー。暇なんだもんっ!光くんだって外に行けないし暇でしょ?」


 そう聞くと光くんは、少し困ったような顔で答えた。


「前より時間はあるけど……そんな大声で暇って言うたらアカン気がするなぁ」


「本当のことじゃん!……あ!柚子いいこと思いついた!」


 屋敷の中で出来る暇つぶし……ずっと考えていらけど、うってつけなことがあるじゃないか。ちょうど光くんもいるし、2人でやればもっと楽しいに違いない。


「光くん、午後は暇?」


「なんや怖いなぁ。時間はあるけど……何するん?」


「うししー。後でね!じゃ、お昼食べてお昼寝したら、ここで待ち合わせね」


 私は要件だけを素早く光くんに伝えると、掃除道具を持ってその場を離れる。誰かに見られたり怪しまれたり、計画がバレたりすると困るのだ。




「柚子ちゃん?」


「シッ!静かに。……光くん誰にもバレなかった?」


「バレたらアカンの?」


 待ち合わせ場所に現れた光くんはいつも通りだ。私とはやや、テンションが違う。あ、そうか!光くんに何をするか伝えるのを忘れていたんだ。


「シッ!柚子たちは今からスパイなの!3階の探検に行こう」


 私が光くんを巻き込んでする暇つぶしは、今は使われていない屋敷の3階を探検することだ。子どもの頃は使用人の数も多かったし、家族で住んでいる人も多かったから、3階の部屋は広い。今は荷物置き場になっていて、危ないし冷暖房もないし、用事もないだろうからあまり行かないように……と言われている。確かに、用事はない!でも、帰ってきてから1度も行っていないから探検にはうってつけだ。


「スパイ!?」


「光くん、静かに!バレちゃうでしょ」


「何の目的でそんなこと……」


「お屋敷の秘密が隠されている!……かもしれないから、真実を暴くの!」


「よぉ分からんけど……。3階って物置なんとちゃうん?」


「もぉー。光くんはロマンがないなぁー、お宝とかあるかもしれないでしょ?」


 スパイごっこを了承してくれたらしい様子の光くんと、辺りを見回しながら3階へと足を踏み入れる。人通りが普段からあまりない空気感はあるけど、廊下に埃がある訳ではないから、お姉ちゃんか誰かが定期的に掃除をしているんだろう。


「手前の部屋から行こう!」


 1番手前はその昔、修斗くん一家が使っていた。そっと扉に手をかけると鍵はかかっていなかった。


「箱ばっかりやなぁ……」


 光くんの呟き通り、中には箱がいっぱい積まれていた。本棚もあって古そうな本がたくさん並べられている。本だけかぁ……つまんなぁい。箱を開けると大量の資料があった。


「光くんっ!!みて!!」


 私が開けた箱には、表紙に極秘とか機密と書かれた紙の束があった。


「……これは!!」


「これは、なんや?」


「わかんない!……けど、機密文章だ」


 表紙にご丁寧にそう書いてあるんだから、そうなんだろう。何が書いてあるんだ……そっと表紙を捲ってみる。


「柚子ちゃん、見たらアカンちゃうん?」


「光くん!大変だっ!!」


「何が大変なん?すごいことでも書いてあるん」


「……達筆すぎて読めない」


 いつ書かれた資料かは不明だけど、あまりにも達筆で解読は難しそうだ。パラパラと紙を捲ると最後の方には王国印が押されている。つまり、国からの正式な極秘資料ということだ。


「ホンマに……ちょっと読めんなぁ」


 光くんも文字を見て困り顔だ。何が書いてあるんだろう。読めないと余計に知りたくなる。でもあまり時間はない。


「光くん、とりあえず次の部屋行ってみよう!」


 名残惜しいけど、あとで部屋に持って帰って解読作業すればいっか!極秘資料は一旦後にして、私は光くんを伴って別に部屋の忍び込んだ。
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