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第7章 デモリスの失踪

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 デモリスの名前が出た途端、ラースの毛が逆立つ。

「あいつ、またやばいことするつもりなんだ!」
「落ち着け。今はまだ、任務中の事故である可能性が残ってる」

 鼻息荒く叫ぶラースを、ラウディが冷静になだめる。

「まぁ、僕もあのデモリス隊長が死んだなんて思ってないけどね」

 フーッ、と声にならない怒りが抑えきれずに漏れるラースを横目に、僕は息を吐く。

「ほら、スキアだってこう言ってる! ソルはのんびりし過ぎなんだ!!」
「君は少し落ち着きなよ。僕はスキアじゃないし、ソルももういないんだから」

 ラウディが判断に慎重になり過ぎていることには同感だが、冷静さを欠いたラースも問題だ。スキアも、ソルも、かつての至高の魂クラウン・コア保持者の名であり、今の僕らではないのだから。
 僕は、デモリスの件についてきちんと話し合いをするためにここにきた。

「きちんと話し合いたいから、まずは席に着いてくれる?」

 にこり、と僕は微笑んだ。

「相変わらず、お前の笑い方は心臓に悪い」

 表情を強張らせたラウディは、そう言ってから席に着く。
 ラースはびくりと体を震わせ、おそるおそるといったように座った。
 まったく、心外だね。僕が何をしたっていうのさ?

 何はともあれ、ようやくまともに話せる状態になった。

「とりあえず、デモリス隊長がまだ生きている前提で話を進めようか。どうして姿を消したんだと思う?」

 僕の問いかけに真っ先に答えたのはラースだ。

「また俺たちのコアを使って、世界をめちゃくちゃにする気なんだ!!」
「だから、落ち着きなって。ラウディ、君はどう考えてるの?」

 すでにデモリスがだと疑わないラースとは異なり、ラウディには迷いが見られた。

「俺だって、怪しいとは思ってる。だが、決定打に欠けるだろう。相手は、組織に今まで多大な貢献をしてきた隊長だ。そう簡単に敵だと決めつけるわけにはいかない」
「副隊長としての立場もあるし?」
「それは関係ない。俺は情報が欲しくて副隊長になっただけだ。地位に固執しているわけじゃない」

 それは、僕も知ってる。元々、ラウディは昇級とかに興味があるタイプじゃないからね。

「ただ」
「ただ?」
「ゼロが無事だったのは、デモリス隊長が助けにきてくれたからだ。エイドの洗脳が解けたのも、隊長がディオスを倒してくれたからだしな」

 確かに、それを言われてしまうとね。
 先の戦いで、ファスやラウディにとっては大事な人たちを救ってもらった恩がある。

「でも、それとこれとは話が別だよ。あの戦い以降、デモリス隊長の人が変わってしまったのは事実なんだから」

 あの戦い以降、デモリス隊長はかつてのデモリス隊長ではなくなってしまった。それはラウディも、テンダーから聞いていた。

「何がきっかけになったのかは分からないけど、今のデモリス隊長は、恩人だった隊長とは別人に思えるよ」
「……確かに、疑ってかかるに越したことはないからな。ソルと同じことを繰り返すのはごめんだ」

 かつてのを止められず、仲間の命も救うことのできなかった、唯一の生き残りだったソル。土の至高の魂クラウン・コア保持者は、代々その呪いのような記憶を引き継いできた。

「あのが復活しようとしているとして。僕らにできることは、まずは残りの至高の魂クラウン・コア保持者たちを守ること。絶対に、僕らのコアをデモリスに渡しちゃいけない」

 至高の魂クラウン・コアは、集めるごとに力を増していく。それは阻止しなくてはならない。

「でも、デモリスとまともに戦えるのは俺たちしかいないんじゃないか?」

 ラースが、拳を握りしめる。

「まぁ、至高の魂クラウン・コア保持者くらい魔力をもった戦士でもなければ、あのは止められないだろうな。まして、今代は最強の男とまで謳われた隊長の体を使ってる」

 実際に戦闘になれば、かつて以上の激戦になることが予想された。
 残りの至高の魂クラウン・コア保持者のあてがついているラウディは、実質の戦力になりそうなのはここにいる三人だけだろうと考えていた。

「確実にデモリスを止めたいのなら。俺は、の力が鍵になると思うんだかな」

 ちらり、とラウディは僕の方を見た。
 ああ、そうだね。僕だってそう思う。ファスーー光の至高の魂クラウン・コア保持者は、デモリスにとって特別な存在だ。完全にデモリスを消したいなら、あいつが戦うしかないと、僕も何となくだけど感じてる。

 でも、そうしたら今度こそ僕は最期だ。

「悩んでる場合じゃないよね、もう」

 僕は、ファスを守ることで存在できる。今の僕は、辛い至高の魂クラウン・コア保持者の記憶をファスに思い出させないようにすることで、何とか意識を保っている状態だ。
 ここまで何だかんだといって伸ばしてきたけど、そろそろ決別しないといけないね。

「考えてみれば、あいつに気を遣うなんて僕らしくないしさ」

 どんなに辛い記憶であろうと、僕があいつに遠慮をする必要なんてないんだから。
 最期くらい、僕たちらしいやり方で終わらせようか。
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