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episode 2
望まぬ再会
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「藤瀬くんが間に入ってくれてね。彼の言葉で転職を決めたの。スキルアップしたいんだったら絶対に行った方がいい。飛躍するなら今しかないって」
そうだった。
藤瀬くんは昔からそんな人だった。
大切なアシを失って、きっと負担も大きくなるはずなのに、それでも真鍋さんの為に動ける人。
私は藤瀬くんの気持ちを噛み締めるように頷いた。
「藤瀬くんの仕事は他の社員よりもハードよ。それは彼の能力が高いから、どうしても依頼が集まるからなんだけど。彼自身も自分を追い込みすぎるところがある」
真面目で責任感の強いところは変わっていないのか。
私に対する態度を見るに、疑わしいところだけれど。
「だから仕事上のサポートはもちろんだけど、彼の暴走をセーブするのも仕事になってくるわ。それこそこうやって、彼の食事の面倒とかね」
真鍋さんはカバンに入っている藤瀬くんの財布を指さして肩を竦めた。
「そこまで……するものですか?」
「そこまでしないと、下手したら夜まで何も食べなかったりするんだもの」
「ええっ?」
「プライベートは別として、仕事に対してはストイック過ぎるから。藤瀬くんは」
……プライベートは別として?
それはどういう意味ですか?
思わず出そうになった質問を、私はコーヒーと一緒に飲み込んだ。
何も聞かない。
何も知らなくていい。
私はもう、彼には踏み込まない。
何度も自分に言い聞かせて、私達は店を後にした。
そうだった。
藤瀬くんは昔からそんな人だった。
大切なアシを失って、きっと負担も大きくなるはずなのに、それでも真鍋さんの為に動ける人。
私は藤瀬くんの気持ちを噛み締めるように頷いた。
「藤瀬くんの仕事は他の社員よりもハードよ。それは彼の能力が高いから、どうしても依頼が集まるからなんだけど。彼自身も自分を追い込みすぎるところがある」
真面目で責任感の強いところは変わっていないのか。
私に対する態度を見るに、疑わしいところだけれど。
「だから仕事上のサポートはもちろんだけど、彼の暴走をセーブするのも仕事になってくるわ。それこそこうやって、彼の食事の面倒とかね」
真鍋さんはカバンに入っている藤瀬くんの財布を指さして肩を竦めた。
「そこまで……するものですか?」
「そこまでしないと、下手したら夜まで何も食べなかったりするんだもの」
「ええっ?」
「プライベートは別として、仕事に対してはストイック過ぎるから。藤瀬くんは」
……プライベートは別として?
それはどういう意味ですか?
思わず出そうになった質問を、私はコーヒーと一緒に飲み込んだ。
何も聞かない。
何も知らなくていい。
私はもう、彼には踏み込まない。
何度も自分に言い聞かせて、私達は店を後にした。
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