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一章:秘密は殻の中(鳳一郎視点)
07:初めての女の子*
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玄関の欄間を挟んで、あちらとこちら。
鍵を締めたら離れ家はもう二人だけの密室となる。
蝉の消えた夏は恐ろしく静かだった。
鳳一郎が雛子の寝室に足を踏み入れたのは引っ越しの時に荷物運びをした時以来。
引っ張り込まれたここはクーラーが効いていて、外で茹だっていただけに温度差で何だか目眩がする。
出掛けるつもりだったので部屋着のジャージからシャツとデニムに着替えていて良かった。
汗だくのまま触れるのも悪い気がして。
鳳一郎が上下を脱ぐと、筋肉で分厚い身体が現れる。
その平たい胸元に遠慮なく触れてくる、雛子の指先。
なんて小さく華奢なことか。
「鳳一郎、なんかいつも良い匂いする……」
指摘に一瞬、怯えに似た困惑。
夜遊びする時だけ使うベルガモットの香水はすっかり最近ご無沙汰だったのに。
それでも匂いとは染み付くもので、目に見えず本人は麻痺してしまう。
残り香に気付いたなら大した嗅覚。
「まぁ、それは、お前もだけど……」
この距離では雛子も長い髪から仄かなラベンダーを感じる。
姉らが好んでよく飲んでいるハーブティーに似ているので、この匂いなら知っていた。
甘過ぎず涼やかな、薄紫に色付いた空気。
「あー……あの、キスしても良いか?」
「ん、お好きにしてどうぞ……」
恐る恐る訊ねながら鳳一郎が雛子の頬に触れると、染まった肌は柔らかい。
身を委ねるなんて簡単に告げて良いのやら。
そんな諦めたような色で笑うくせに。
ここから先は幼馴染の一線を越える。
今までの経験上、大人の男としかしたことがない。
強面で巨漢の鳳一郎は色気のある男前でもあるので、ゲイバーに限れば受け身の男なら幾らでも寄って来る。
反面、普通の女からは怖がられることが多いので自分から距離を取るようにしていたのに。
遊び慣れている筈なのに生まれて初めてキスするような気持ち。
大人の男と交わる時、酒や煙草の匂いや固い身体は確かに刺激的ではあった。
しかし実際、こんなのは鳳一郎が今まで知らなかったこと。
浅く重ねた唇はぷっくりと小さく艷やか。
微かなリップ音を立てて鳥が啄むようなキスから。
障子越しの太陽を感じつつ、明るい部屋では目を閉じても瞼の裏が薔薇色。
女子の中ではやはり背が高く少年のようだった面影を残しながらも、抱き寄せた雛子の身体は柔らかい。
胸に収まる小ささを実感していると、しゃくり上げた気配。
あまり浸っていると苦しくなるので、甘い感覚を断ち切って息継ぎで離した。
やはり先程のは気の所為ではなかったか。
暗褐色の目に長い影を落とす、金の睫毛が涙で濡れていた。
泣かせるつもりではなかったのに。
「悪ィ、やっぱり嫌だったか?」
「違う、から……や、やめないで……」
涙で声を詰まらせながら言われると切なくなる。
優しくしたい、泣いてほしくない。
そう思いつつも抑えきれず、欲が漏れ出すように再びキスを続けた。
唇を挟み込んで軽く噛むと浮遊感が混ざり込む。
雛子の舌は小さいだけでなく苺に似ていて、絡む唾液もやたら甘い気がする。
「んんッ……あ、ふぁ……っ」
唇の隙間から雛子は素直に甘い声を零す。
一歩ずつ反応を確認すれば、瞼を閉じた顔は確かに気持ち良さそうだった。
鳳一郎の裸の腕を掴んで時折猫のように爪を立ててくる。
「嫌ではない」を信じても良いのだろうか。
安堵しつつも、そうやって許されたらこちらが暴走しそうで怖い。
両性愛者というのはそこまで特別な性的嗜好でもないと、個人的に鳳一郎は思う。
例えばAVなんかも、男女ともに好みのタイプならどちらの裸も楽しめるので大変お得。
そう、男女のやり方自体などは見たことならある。
うまく出来るか分からないが。
それにしても改めて感じる体格差は凄まじく、これでは大人と子供である。
布団の上とはいえ雛子に覆い被さると潰してしまいそうなので、今日のところは最初から最後まで向かい合わせで座り込む形の方が怯えさせないで済むだろうか。
壊れ物を扱う手で触れなければ。
雛子が身につけているものといったら大きめのTシャツのみ。
素肌を隔てる布一枚、この下が見たくて下手すると破いてしまいそうだった。
緩い襟首から覗いていた谷間はくっきりと深い。
ショーツを脱ぎ捨てた脚で鳳一郎の太腿を挟み、もうとろりと濡れたものが押し当たっていた。
こちらは下着しか穿いてないのに刺激が強すぎる。
「脱がせても良いか?」
「ん、じゃあ……先に鳳一郎も見せて……」
確かに一人だけ裸になるのは不公平か。
鳳一郎の方も押し込められている下腹部がそろそろ窮屈で仕方ない。
ただ、見せたりしたら怖がらせるだろうか。
そう心配しつつもお互い裸にならねば始まらない。
下着を脱ぎ捨てれば、情欲で張り詰めた下腹部は巨体に見合うだけの凶暴な大きさ。
男女なので子供の頃でも一緒に入浴したことなどは無い。
要求したのは雛子の方でも、初めて鳳一郎の身体を目にして流石に怯んで驚いた顔。
「ちょっと、おっきすぎるかも……」
「入るか分かんねぇな……ゴム無いし……」
「でも……やめちゃ、やだ」
「雛子、触れるか?別に手でも良いんだけど」
男と夜遊びしてきた鳳一郎は挿入に重きを置かないことにしている。
受け身慣れしている玄人なら大きい物でないと満足出来なくなるので喜ばれるが、そうでもなければお断りされることも多々。
セックスというのはコミュニケーションの最上位にあるものであって、どちらかが「NO」を突き付けたら無理に押し通してはいけない。
遊びの上であってもマナーがある。
飽くまでも鳳一郎はそういう考え方でいた。
なので、何度振られても逃げられても腹を立てず気にもせず。
ベルガモットとラベンダーに、体液と発情の匂い。
絡み合うと媚薬になって頭に甘い霧が掛かる。
日頃、薄い夏服なので発育の良い雛子は身体のラインが目立っていた。
子供のように両手を上げさせてTシャツを捲り上げると、顔と同じく鎖骨や肩にも散ったそばかすが色の白さを引き立てる肌。
「あー……やっぱりお前、綺麗だな」
女の乳房をこんなに間近で見るのは初めてだが明らかに大きめの林檎二つ分ほど。
無骨な鳳一郎の手にも余り、重量感のある柔らかさが吸い付いてくる。
先端はコーラルピンクに色付いて本当に果実のようだった。
「んぅ……ッ、あ……ねぇ、噛んでも良いよ……」
喉が鳴って、まるで飢えた赤ん坊。
つい呼吸も忘れて吸ってしまったがまだ足りず。
もっと下も知りたい。
雛子の膝頭をそっと掴むと恥ずかしそうだったが、拒絶せず緩められたのでそのまま脚を割る。
Tシャツの裾から見え隠れしていた濃い金色の翳り。
湧き出る蜜で艶めく、その奥にも顔を寄せた。
嗅ぎ慣れない生々しい雌の匂いがする。
映像などでは鳳一郎がずっと知り得なかったこと。
目にした濃桃の花弁は潤んで開いており、女はこんなにも濡れるものなのか。
こちらにも躊躇わず口付けて、蜜を吸う蝶になる。
今は指一本触れられていないのに下腹部が暴発しそうに熱い。
こんなに小さいのではやはり侵入するのは無理か。
突き刺してしまいたい気持ちは勿論ありつつも、触れ合うだけでも満足だった。
恥ずかしがったり喘いだりする声の甘さ。
かつて少年のようだった雛子のこんな姿を見せられては熱に溺れる。
「も、ちょっと、奥でも良いから……あっ、これ好きぃ……っ」
蜜で蕩けた花弁の奥、深く沈み込んだ鳳一郎の指を締め上げながら腰を揺らす。
腕を巻き付けて積極的にキスを強請るのが可愛い。
「いい、って……そんなことしなくて……出る……ッ」
華奢な指で雄の部分を扱かれていたかと思えば、先端を咥えられて鳳一郎も声が裏返りそうになる。
慣れている舌使いに耐えられず雛子の口腔に吐き出した。
この日、猛暑なのがいけなかったのだろうか。
強い太陽を浴びて夏は開放的になる季節。
一足飛びで関係が変わってしまった。
揃って裸で布団の上に居るのが妙な感じ。
繋がることだけ抜きで、いやらしいことなら沢山した。
相互自慰といったところで相手の全身を知り尽くすように、舐めて触って愛で合う。
そうして、もう何も出なくなる頃には陽が傾いていた。
クーラーの効いた部屋に居たというのに、下腹部から熱くて溶けそうな感覚。
汗だけでなく体液全てが流れ出てしまったようで、ひとっ走り鳳一郎は台所から冷たい水のミニペットボトルを持ってきた。
回し飲みで渇いた喉を潤しつつ、間接キス程度で照れるのも今更か。
体液で泥々なので風呂も二人で。
どうにも気怠いという雛子を太い腕で抱き上げると動揺していたが、体重三桁の巨漢には軽いものだ。
シャワーの雨に打たれてやっと一呼吸。
燃え盛った色事の火を鎮めて、もうお互い裸でも穏やかな気持ち。
打ち明け話はここで、雛子の唇が解けて事情を一つずつ喋り始めた。
引き取られた家の当主に中学生の頃から慰み者にされていたこと。
衣食住などは保証されていたが、ほとんどペットのような扱いだったこと。
それでも性行為自体は嫌いでなかったので、解放された今もまだ衝動が抑えられないこと。
「……引くでしょ、こんなの」
「いや……俺も、似たようなことしてたから」
鳳一郎も欲の捌け口を探して夜遊びしていたので何も言えず。
こちらは自分から飛び込んだ判断とはいえども。
けれど、このまま無言でもいけない。
「……なぁ雛子、夕飯奢るから外行かねぇ?」
鍵を締めたら離れ家はもう二人だけの密室となる。
蝉の消えた夏は恐ろしく静かだった。
鳳一郎が雛子の寝室に足を踏み入れたのは引っ越しの時に荷物運びをした時以来。
引っ張り込まれたここはクーラーが効いていて、外で茹だっていただけに温度差で何だか目眩がする。
出掛けるつもりだったので部屋着のジャージからシャツとデニムに着替えていて良かった。
汗だくのまま触れるのも悪い気がして。
鳳一郎が上下を脱ぐと、筋肉で分厚い身体が現れる。
その平たい胸元に遠慮なく触れてくる、雛子の指先。
なんて小さく華奢なことか。
「鳳一郎、なんかいつも良い匂いする……」
指摘に一瞬、怯えに似た困惑。
夜遊びする時だけ使うベルガモットの香水はすっかり最近ご無沙汰だったのに。
それでも匂いとは染み付くもので、目に見えず本人は麻痺してしまう。
残り香に気付いたなら大した嗅覚。
「まぁ、それは、お前もだけど……」
この距離では雛子も長い髪から仄かなラベンダーを感じる。
姉らが好んでよく飲んでいるハーブティーに似ているので、この匂いなら知っていた。
甘過ぎず涼やかな、薄紫に色付いた空気。
「あー……あの、キスしても良いか?」
「ん、お好きにしてどうぞ……」
恐る恐る訊ねながら鳳一郎が雛子の頬に触れると、染まった肌は柔らかい。
身を委ねるなんて簡単に告げて良いのやら。
そんな諦めたような色で笑うくせに。
ここから先は幼馴染の一線を越える。
今までの経験上、大人の男としかしたことがない。
強面で巨漢の鳳一郎は色気のある男前でもあるので、ゲイバーに限れば受け身の男なら幾らでも寄って来る。
反面、普通の女からは怖がられることが多いので自分から距離を取るようにしていたのに。
遊び慣れている筈なのに生まれて初めてキスするような気持ち。
大人の男と交わる時、酒や煙草の匂いや固い身体は確かに刺激的ではあった。
しかし実際、こんなのは鳳一郎が今まで知らなかったこと。
浅く重ねた唇はぷっくりと小さく艷やか。
微かなリップ音を立てて鳥が啄むようなキスから。
障子越しの太陽を感じつつ、明るい部屋では目を閉じても瞼の裏が薔薇色。
女子の中ではやはり背が高く少年のようだった面影を残しながらも、抱き寄せた雛子の身体は柔らかい。
胸に収まる小ささを実感していると、しゃくり上げた気配。
あまり浸っていると苦しくなるので、甘い感覚を断ち切って息継ぎで離した。
やはり先程のは気の所為ではなかったか。
暗褐色の目に長い影を落とす、金の睫毛が涙で濡れていた。
泣かせるつもりではなかったのに。
「悪ィ、やっぱり嫌だったか?」
「違う、から……や、やめないで……」
涙で声を詰まらせながら言われると切なくなる。
優しくしたい、泣いてほしくない。
そう思いつつも抑えきれず、欲が漏れ出すように再びキスを続けた。
唇を挟み込んで軽く噛むと浮遊感が混ざり込む。
雛子の舌は小さいだけでなく苺に似ていて、絡む唾液もやたら甘い気がする。
「んんッ……あ、ふぁ……っ」
唇の隙間から雛子は素直に甘い声を零す。
一歩ずつ反応を確認すれば、瞼を閉じた顔は確かに気持ち良さそうだった。
鳳一郎の裸の腕を掴んで時折猫のように爪を立ててくる。
「嫌ではない」を信じても良いのだろうか。
安堵しつつも、そうやって許されたらこちらが暴走しそうで怖い。
両性愛者というのはそこまで特別な性的嗜好でもないと、個人的に鳳一郎は思う。
例えばAVなんかも、男女ともに好みのタイプならどちらの裸も楽しめるので大変お得。
そう、男女のやり方自体などは見たことならある。
うまく出来るか分からないが。
それにしても改めて感じる体格差は凄まじく、これでは大人と子供である。
布団の上とはいえ雛子に覆い被さると潰してしまいそうなので、今日のところは最初から最後まで向かい合わせで座り込む形の方が怯えさせないで済むだろうか。
壊れ物を扱う手で触れなければ。
雛子が身につけているものといったら大きめのTシャツのみ。
素肌を隔てる布一枚、この下が見たくて下手すると破いてしまいそうだった。
緩い襟首から覗いていた谷間はくっきりと深い。
ショーツを脱ぎ捨てた脚で鳳一郎の太腿を挟み、もうとろりと濡れたものが押し当たっていた。
こちらは下着しか穿いてないのに刺激が強すぎる。
「脱がせても良いか?」
「ん、じゃあ……先に鳳一郎も見せて……」
確かに一人だけ裸になるのは不公平か。
鳳一郎の方も押し込められている下腹部がそろそろ窮屈で仕方ない。
ただ、見せたりしたら怖がらせるだろうか。
そう心配しつつもお互い裸にならねば始まらない。
下着を脱ぎ捨てれば、情欲で張り詰めた下腹部は巨体に見合うだけの凶暴な大きさ。
男女なので子供の頃でも一緒に入浴したことなどは無い。
要求したのは雛子の方でも、初めて鳳一郎の身体を目にして流石に怯んで驚いた顔。
「ちょっと、おっきすぎるかも……」
「入るか分かんねぇな……ゴム無いし……」
「でも……やめちゃ、やだ」
「雛子、触れるか?別に手でも良いんだけど」
男と夜遊びしてきた鳳一郎は挿入に重きを置かないことにしている。
受け身慣れしている玄人なら大きい物でないと満足出来なくなるので喜ばれるが、そうでもなければお断りされることも多々。
セックスというのはコミュニケーションの最上位にあるものであって、どちらかが「NO」を突き付けたら無理に押し通してはいけない。
遊びの上であってもマナーがある。
飽くまでも鳳一郎はそういう考え方でいた。
なので、何度振られても逃げられても腹を立てず気にもせず。
ベルガモットとラベンダーに、体液と発情の匂い。
絡み合うと媚薬になって頭に甘い霧が掛かる。
日頃、薄い夏服なので発育の良い雛子は身体のラインが目立っていた。
子供のように両手を上げさせてTシャツを捲り上げると、顔と同じく鎖骨や肩にも散ったそばかすが色の白さを引き立てる肌。
「あー……やっぱりお前、綺麗だな」
女の乳房をこんなに間近で見るのは初めてだが明らかに大きめの林檎二つ分ほど。
無骨な鳳一郎の手にも余り、重量感のある柔らかさが吸い付いてくる。
先端はコーラルピンクに色付いて本当に果実のようだった。
「んぅ……ッ、あ……ねぇ、噛んでも良いよ……」
喉が鳴って、まるで飢えた赤ん坊。
つい呼吸も忘れて吸ってしまったがまだ足りず。
もっと下も知りたい。
雛子の膝頭をそっと掴むと恥ずかしそうだったが、拒絶せず緩められたのでそのまま脚を割る。
Tシャツの裾から見え隠れしていた濃い金色の翳り。
湧き出る蜜で艶めく、その奥にも顔を寄せた。
嗅ぎ慣れない生々しい雌の匂いがする。
映像などでは鳳一郎がずっと知り得なかったこと。
目にした濃桃の花弁は潤んで開いており、女はこんなにも濡れるものなのか。
こちらにも躊躇わず口付けて、蜜を吸う蝶になる。
今は指一本触れられていないのに下腹部が暴発しそうに熱い。
こんなに小さいのではやはり侵入するのは無理か。
突き刺してしまいたい気持ちは勿論ありつつも、触れ合うだけでも満足だった。
恥ずかしがったり喘いだりする声の甘さ。
かつて少年のようだった雛子のこんな姿を見せられては熱に溺れる。
「も、ちょっと、奥でも良いから……あっ、これ好きぃ……っ」
蜜で蕩けた花弁の奥、深く沈み込んだ鳳一郎の指を締め上げながら腰を揺らす。
腕を巻き付けて積極的にキスを強請るのが可愛い。
「いい、って……そんなことしなくて……出る……ッ」
華奢な指で雄の部分を扱かれていたかと思えば、先端を咥えられて鳳一郎も声が裏返りそうになる。
慣れている舌使いに耐えられず雛子の口腔に吐き出した。
この日、猛暑なのがいけなかったのだろうか。
強い太陽を浴びて夏は開放的になる季節。
一足飛びで関係が変わってしまった。
揃って裸で布団の上に居るのが妙な感じ。
繋がることだけ抜きで、いやらしいことなら沢山した。
相互自慰といったところで相手の全身を知り尽くすように、舐めて触って愛で合う。
そうして、もう何も出なくなる頃には陽が傾いていた。
クーラーの効いた部屋に居たというのに、下腹部から熱くて溶けそうな感覚。
汗だけでなく体液全てが流れ出てしまったようで、ひとっ走り鳳一郎は台所から冷たい水のミニペットボトルを持ってきた。
回し飲みで渇いた喉を潤しつつ、間接キス程度で照れるのも今更か。
体液で泥々なので風呂も二人で。
どうにも気怠いという雛子を太い腕で抱き上げると動揺していたが、体重三桁の巨漢には軽いものだ。
シャワーの雨に打たれてやっと一呼吸。
燃え盛った色事の火を鎮めて、もうお互い裸でも穏やかな気持ち。
打ち明け話はここで、雛子の唇が解けて事情を一つずつ喋り始めた。
引き取られた家の当主に中学生の頃から慰み者にされていたこと。
衣食住などは保証されていたが、ほとんどペットのような扱いだったこと。
それでも性行為自体は嫌いでなかったので、解放された今もまだ衝動が抑えられないこと。
「……引くでしょ、こんなの」
「いや……俺も、似たようなことしてたから」
鳳一郎も欲の捌け口を探して夜遊びしていたので何も言えず。
こちらは自分から飛び込んだ判断とはいえども。
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