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二章:冷たい鳥籠(雛子過去編)
20:アフタヌーンティー
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《毒婦め、よくも父を色仕掛けで絡め取ってくれたな》
石造りの塔に甲冑の足音が冷たく響く。
奥の一室、ドレスと宝石を身に着けた女は椅子から動かないまま静かな視線だけを向ける。
冷や汗を浮かべながらも決して取り乱さず、凛とした面持ち。
これは父親の愛人のもとへ、血濡れの剣を携えた息子が乗り込んで行く緊迫した場面。
年齢制限のある映画なので気軽に観られるものではないが、歴史物で手堅い名作らしい。
確かに、ここへ辿り着くまでにも鮮血が画面を染めることなら何度か。
男は女の首を落とすつもりでここに来たが気が変わったそうで、ふとカメラワークが切り替わる。
《脱げ》
「……お前もか」
画面に向かって思わず苦々しい声が出る。
ドレスを脱ぎ捨てた女が四つん這いで乳房を揺らすベッドシーンが始まったところで、雛子は画面をそのまま放置してポットの湯を沸かしに行った。
ああ、まったく馬鹿みたいだ。
憎い相手を前にして欲情することしか出来ないのか。
どんな御大層な言動をしていようと、支配欲から来るものだとしても、股座を熱り立たせている時点で無様としか感じず。
昼食で膨れた腹も落ち着いて眠くなりそうな午後。
自室として与えられている客室で雛子は一人、メイド服のままパソコンで映画鑑賞中である。
画面の中の血腥く激しい戦と対照的に、部屋は非常に平和そのもの。
湯を注ぐと深い暗褐色のコーヒーが満ちるカップ。
踊る白い湯気は優雅な香ばしさに変わって、雛子の胸に安堵を与えた。
ここは小さな風呂場とトイレ付きで水なら出るので、長いこと閉じこもれる。
電気ポットとインスタントコーヒーとハーブティーを買い込み、こうして好きな時に飲んでいた。
お茶くらいなら女中の手を煩わせずに済む。
性欲処理の相手が居るからといって鷹人は別に一日中ベッドで過ごすつもりなど無いと言う。
仕事で必要な資格があるとかで、もともと連休は勉強する予定だったそうだ。
とりあえず鷹人が屋敷に居る間、食事は三食ともあの部屋で共にする約束。
夕食の後にベッドへ移動しやすいだろうし。
今日は「夜まで何もしない」の約束。
呼び出しが無い限り、雛子は自室で待機していても良いことになった。
こちらも勉強やら読書やら色々とあり、自由時間が無いと厳しいのでその方がありがたい。
あまり成績が下がると当主から「お仕置き」という口実でハードな調教をされることもあった。
正直、思い出したくない内容なので記憶に蓋をするが。
不意にスマホからの着信音。
雛子の肩が跳ねたのは驚きによるものだったが、視線を落として心臓まで一つ跳ねる。
表示された名前は、鷹人。
屋敷内なら内線電話でも事足りるのだが、外から連絡する時のことも考えてスマホの方でメッセージアプリのIDを交換した。
周囲に溶け込むのが得意な雛子も学園内でそれなりに広く浅くの友人は居るので、日頃から連絡を取り合ったりする相手なら複数人。
とはいえ鷹人相手では勝手が違うので、こちらからはおいそれと送り難いとばかり思っていたのに。
さて、それより御用件は。
メッセージを改めて読んで思わず訝しむ。
「……はい?」
初めて雛子が最上家に来たのは雪が舞う日だった。
あの時はあんなに物々しかった屋敷も、春の陽気の下では不気味さが洗われて落ち着いた高級感すらある。
中庭のテラス席も黒を基調としてシンプルなデザインに纏めた涼しげな造り。
この辺りは濃い緑が青空を柔らかく遮り、光の粒が零れ落ちる。
明るい場所だとやはり鷹人の髪は赤みを増してどことなく燃えるような色にも見えた。
少し眩しいらしく、切れ長の目を細めて顰め面。
用件というのはアフタヌーンティーのお誘い。
良い天気なので今日は庭で一服入れる、指定の時間に雛子も来いと。
いつも食事時はただ口に運ぶだけで退屈そうに見えていたので、鷹人にそういう感性があったことに少し驚いた。
アフタヌーンティーといえば女子会のイメージが強いので何だか意外だが、確かにそれは偏見か。
本場ではかつて貴族の嗜みだったので男女も無い。
皿が三段重なるお馴染みのアフタヌーンティースタンドに、スイーツは苺と抹茶。
春らしい色でピンクとグリーンの組み合わせ。
普通の女子なら喜ぶところだろう、これは。
共にする相手がクラスメイトだったら甘味と会話をそれなりに楽しめるのだが。
テーブル上の可愛らしさと、椅子に掛ける顰め面。
あまりにもアンバランスでいっそ笑える。
悟られないようにしつつ、それよりも質問が一つ。
「これ本当に私もいただいて宜しいのですか?」
「一人じゃ食べ切れないだろ」
鷹人が毎食雛子を同席させるのは何なのか。
会話を楽しむ訳でもなく、ただ黙々と食べるだけなので居なくても変わらないのでは。
或いは単に、一人では寂しいのか。
昨日のこともあれど、どうやら憎まれてはいないようだった。
鷹人からの視点なら雛子は「父親を色仕掛けで絡め取った毒婦」と思われていてもおかしくない。
にも関わらず、性行為以外のことも求めてくる。
そんな鷹人と二人きりで緊張するかといえば、何だか雛子はもう慣れてしまっていた。
確かに半ば強引に身体を暴かれて激しいこともされたが、別に彼のことは恐ろしいなど感じない。
一応は行為の前に了承したので合意の上と思うことにしておいた。
逆らえない立場であり未成年だけに、あれは問答無用で暴力のうちになると分かっていつつも。
薄っすらと不機嫌そうな鷹人の雰囲気も、そういう人なのだと広い心で受け止める。
いちいち気にして怯えていたら並の神経では持たず、こちらが疲れてしまう。
ただ、なんて恐ろしく静かなアフタヌーンティーか。
こんなにも陽気は麗らかだというのに。
自分から望んだという割に鷹人はあまり楽しんでいないように見えた。
折角なのだからもっと穏やかにしても良いだろうに。
日頃は無表情の雛子ですら喜怒哀楽くらいある。
今も指摘された通り、美味そうにスイーツを味わっている最中。
というか、この人はどういう時に楽しいと思うのか。
鷹人の愉悦なんて、いやらしいことをしている時の意地悪な笑い方くらいしか雛子は知らない。
そこは父親と違った。
あの人はもっと獣のような欲を滾らせていたから。
ふと、鷹人がカップの紅茶を飲み干して一息。
お代わりを注ごうかと雛子もポットに手を伸ばしたところ、席を立ち掛けた彼に腕を引かれた。
「ハーブティーも飲みたい……どれ使うのか教えてやるから、お前も来いよ」
ああ見えて、お茶はきちんと味わっているらしい。
鷹人なりに楽しんでいるのだろうか。
そう思いながら数歩、目的地に到着。
ガラスの温室は広々とした物置くらいの大きさ。
光を集めて逃さず、中は暖かい。
雛子も存在自体は認識していたが、中へ入るのは初めてだった。
ガラスの向こう側には花よりも緑の方が圧倒的。
青々と鮮やかに伸びた無数の葉。
食卓に並ぶハーブの鉢が一同に揃っていた。
もともと雑草だったハーブは生命力や繁殖力が強く、地植えだと辺り一面を占領されてしまう。
物によっては種子を飛ばし地下茎を伸ばして思わぬところに芽吹き、他の植物が育たぬ程。
それこそ様々な分野でその名を知らしめた最上家のように。
ホテルのような最上家の食事はハーブをよく使う。
昨夜は和牛のローストにローズマリー、バターソースにタイム、ミントは飲み物や添え物として。
今朝のオムレツもバジル風味。
摘み立てを使っているからこそ鮮やかに香る。
そういう訳で上記外にも温室内は種類が豊富。
お目当てを探すにもどれがどれやら。
ハーブの海を進みながら、お茶に適する物の鉢を見渡す。
鷹人の好みはミントとレモンバームだという。
ああ、ようやく好きな物を一つ知った。
「違いは分かるか?」
「本での知識くらいならありますけど」
ハーブに関する本は好んで読んだ。
ミントとレモンバームは一見すると似ている。
全体的な葉の形は共通点が多いものの葉先で違いが分かりやすい。
ミントは丸みがあり、レモンバームは尖っている。
何だか梅、桃、桜の見分け方をふと思い出す。
それぞれ似ていても特徴があるのだ。
「……これは本じゃ分からないだろ」
そう言いながら鷹人が二つの葉を千切ってみせる。
確かに、何より両者はそれぞれ香りが違う。
ミントはよく知られる清涼感。
レモンバームは名前の通り柑橘系に似ている。
そして長い指で摘んだ葉を雛子の口に運ぶ。
いや、正確には押し込むような形か。
「っん……」
食べさせるだけなら眼前に差し出すだけで良いのに。
舌を押されて、思わず声が漏れてしまった。
瑞々しく生々しい香りが口腔を満たして鼻に抜ける。
柔らかな頬の内側を撫でる、やはり冷たい男の指。
噛んでやろうかと思う間にするりと出て行く。
鮮烈な涼やかさと相まって、妙に息苦しさを残した。
こんなことをしておきながら鷹人の方は素知らぬ顔。
彼も小さく千切った葉をウサギのように齧る。
どこか野性味がありつつ可愛らしい仕草は手慣れたもの。
もしかしたら、以前からこうして盗み食いしていたのかもしれない。
取り澄ました雰囲気もある鷹人の意外な面。
今だけは少し、楽しそうに見えた。
さて、それを雛子に晒したのはどういうつもりか。
石造りの塔に甲冑の足音が冷たく響く。
奥の一室、ドレスと宝石を身に着けた女は椅子から動かないまま静かな視線だけを向ける。
冷や汗を浮かべながらも決して取り乱さず、凛とした面持ち。
これは父親の愛人のもとへ、血濡れの剣を携えた息子が乗り込んで行く緊迫した場面。
年齢制限のある映画なので気軽に観られるものではないが、歴史物で手堅い名作らしい。
確かに、ここへ辿り着くまでにも鮮血が画面を染めることなら何度か。
男は女の首を落とすつもりでここに来たが気が変わったそうで、ふとカメラワークが切り替わる。
《脱げ》
「……お前もか」
画面に向かって思わず苦々しい声が出る。
ドレスを脱ぎ捨てた女が四つん這いで乳房を揺らすベッドシーンが始まったところで、雛子は画面をそのまま放置してポットの湯を沸かしに行った。
ああ、まったく馬鹿みたいだ。
憎い相手を前にして欲情することしか出来ないのか。
どんな御大層な言動をしていようと、支配欲から来るものだとしても、股座を熱り立たせている時点で無様としか感じず。
昼食で膨れた腹も落ち着いて眠くなりそうな午後。
自室として与えられている客室で雛子は一人、メイド服のままパソコンで映画鑑賞中である。
画面の中の血腥く激しい戦と対照的に、部屋は非常に平和そのもの。
湯を注ぐと深い暗褐色のコーヒーが満ちるカップ。
踊る白い湯気は優雅な香ばしさに変わって、雛子の胸に安堵を与えた。
ここは小さな風呂場とトイレ付きで水なら出るので、長いこと閉じこもれる。
電気ポットとインスタントコーヒーとハーブティーを買い込み、こうして好きな時に飲んでいた。
お茶くらいなら女中の手を煩わせずに済む。
性欲処理の相手が居るからといって鷹人は別に一日中ベッドで過ごすつもりなど無いと言う。
仕事で必要な資格があるとかで、もともと連休は勉強する予定だったそうだ。
とりあえず鷹人が屋敷に居る間、食事は三食ともあの部屋で共にする約束。
夕食の後にベッドへ移動しやすいだろうし。
今日は「夜まで何もしない」の約束。
呼び出しが無い限り、雛子は自室で待機していても良いことになった。
こちらも勉強やら読書やら色々とあり、自由時間が無いと厳しいのでその方がありがたい。
あまり成績が下がると当主から「お仕置き」という口実でハードな調教をされることもあった。
正直、思い出したくない内容なので記憶に蓋をするが。
不意にスマホからの着信音。
雛子の肩が跳ねたのは驚きによるものだったが、視線を落として心臓まで一つ跳ねる。
表示された名前は、鷹人。
屋敷内なら内線電話でも事足りるのだが、外から連絡する時のことも考えてスマホの方でメッセージアプリのIDを交換した。
周囲に溶け込むのが得意な雛子も学園内でそれなりに広く浅くの友人は居るので、日頃から連絡を取り合ったりする相手なら複数人。
とはいえ鷹人相手では勝手が違うので、こちらからはおいそれと送り難いとばかり思っていたのに。
さて、それより御用件は。
メッセージを改めて読んで思わず訝しむ。
「……はい?」
初めて雛子が最上家に来たのは雪が舞う日だった。
あの時はあんなに物々しかった屋敷も、春の陽気の下では不気味さが洗われて落ち着いた高級感すらある。
中庭のテラス席も黒を基調としてシンプルなデザインに纏めた涼しげな造り。
この辺りは濃い緑が青空を柔らかく遮り、光の粒が零れ落ちる。
明るい場所だとやはり鷹人の髪は赤みを増してどことなく燃えるような色にも見えた。
少し眩しいらしく、切れ長の目を細めて顰め面。
用件というのはアフタヌーンティーのお誘い。
良い天気なので今日は庭で一服入れる、指定の時間に雛子も来いと。
いつも食事時はただ口に運ぶだけで退屈そうに見えていたので、鷹人にそういう感性があったことに少し驚いた。
アフタヌーンティーといえば女子会のイメージが強いので何だか意外だが、確かにそれは偏見か。
本場ではかつて貴族の嗜みだったので男女も無い。
皿が三段重なるお馴染みのアフタヌーンティースタンドに、スイーツは苺と抹茶。
春らしい色でピンクとグリーンの組み合わせ。
普通の女子なら喜ぶところだろう、これは。
共にする相手がクラスメイトだったら甘味と会話をそれなりに楽しめるのだが。
テーブル上の可愛らしさと、椅子に掛ける顰め面。
あまりにもアンバランスでいっそ笑える。
悟られないようにしつつ、それよりも質問が一つ。
「これ本当に私もいただいて宜しいのですか?」
「一人じゃ食べ切れないだろ」
鷹人が毎食雛子を同席させるのは何なのか。
会話を楽しむ訳でもなく、ただ黙々と食べるだけなので居なくても変わらないのでは。
或いは単に、一人では寂しいのか。
昨日のこともあれど、どうやら憎まれてはいないようだった。
鷹人からの視点なら雛子は「父親を色仕掛けで絡め取った毒婦」と思われていてもおかしくない。
にも関わらず、性行為以外のことも求めてくる。
そんな鷹人と二人きりで緊張するかといえば、何だか雛子はもう慣れてしまっていた。
確かに半ば強引に身体を暴かれて激しいこともされたが、別に彼のことは恐ろしいなど感じない。
一応は行為の前に了承したので合意の上と思うことにしておいた。
逆らえない立場であり未成年だけに、あれは問答無用で暴力のうちになると分かっていつつも。
薄っすらと不機嫌そうな鷹人の雰囲気も、そういう人なのだと広い心で受け止める。
いちいち気にして怯えていたら並の神経では持たず、こちらが疲れてしまう。
ただ、なんて恐ろしく静かなアフタヌーンティーか。
こんなにも陽気は麗らかだというのに。
自分から望んだという割に鷹人はあまり楽しんでいないように見えた。
折角なのだからもっと穏やかにしても良いだろうに。
日頃は無表情の雛子ですら喜怒哀楽くらいある。
今も指摘された通り、美味そうにスイーツを味わっている最中。
というか、この人はどういう時に楽しいと思うのか。
鷹人の愉悦なんて、いやらしいことをしている時の意地悪な笑い方くらいしか雛子は知らない。
そこは父親と違った。
あの人はもっと獣のような欲を滾らせていたから。
ふと、鷹人がカップの紅茶を飲み干して一息。
お代わりを注ごうかと雛子もポットに手を伸ばしたところ、席を立ち掛けた彼に腕を引かれた。
「ハーブティーも飲みたい……どれ使うのか教えてやるから、お前も来いよ」
ああ見えて、お茶はきちんと味わっているらしい。
鷹人なりに楽しんでいるのだろうか。
そう思いながら数歩、目的地に到着。
ガラスの温室は広々とした物置くらいの大きさ。
光を集めて逃さず、中は暖かい。
雛子も存在自体は認識していたが、中へ入るのは初めてだった。
ガラスの向こう側には花よりも緑の方が圧倒的。
青々と鮮やかに伸びた無数の葉。
食卓に並ぶハーブの鉢が一同に揃っていた。
もともと雑草だったハーブは生命力や繁殖力が強く、地植えだと辺り一面を占領されてしまう。
物によっては種子を飛ばし地下茎を伸ばして思わぬところに芽吹き、他の植物が育たぬ程。
それこそ様々な分野でその名を知らしめた最上家のように。
ホテルのような最上家の食事はハーブをよく使う。
昨夜は和牛のローストにローズマリー、バターソースにタイム、ミントは飲み物や添え物として。
今朝のオムレツもバジル風味。
摘み立てを使っているからこそ鮮やかに香る。
そういう訳で上記外にも温室内は種類が豊富。
お目当てを探すにもどれがどれやら。
ハーブの海を進みながら、お茶に適する物の鉢を見渡す。
鷹人の好みはミントとレモンバームだという。
ああ、ようやく好きな物を一つ知った。
「違いは分かるか?」
「本での知識くらいならありますけど」
ハーブに関する本は好んで読んだ。
ミントとレモンバームは一見すると似ている。
全体的な葉の形は共通点が多いものの葉先で違いが分かりやすい。
ミントは丸みがあり、レモンバームは尖っている。
何だか梅、桃、桜の見分け方をふと思い出す。
それぞれ似ていても特徴があるのだ。
「……これは本じゃ分からないだろ」
そう言いながら鷹人が二つの葉を千切ってみせる。
確かに、何より両者はそれぞれ香りが違う。
ミントはよく知られる清涼感。
レモンバームは名前の通り柑橘系に似ている。
そして長い指で摘んだ葉を雛子の口に運ぶ。
いや、正確には押し込むような形か。
「っん……」
食べさせるだけなら眼前に差し出すだけで良いのに。
舌を押されて、思わず声が漏れてしまった。
瑞々しく生々しい香りが口腔を満たして鼻に抜ける。
柔らかな頬の内側を撫でる、やはり冷たい男の指。
噛んでやろうかと思う間にするりと出て行く。
鮮烈な涼やかさと相まって、妙に息苦しさを残した。
こんなことをしておきながら鷹人の方は素知らぬ顔。
彼も小さく千切った葉をウサギのように齧る。
どこか野性味がありつつ可愛らしい仕草は手慣れたもの。
もしかしたら、以前からこうして盗み食いしていたのかもしれない。
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