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二章:冷たい鳥籠(雛子過去編)
22:溺れる*
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頭からシャワーを浴びて、鷹人が濡れて重くなった栗色の髪を無造作に掻き上げた。
オールバックにするとまた印象が変わるものだ。
先程から抱き竦められていたので、もともと近かった顔が更に寄せられる。
何の為になど、そんなの言うまでもなし。
絡んだ吐息の熱に誘われて互いに唇を重ね合わせた。
情欲のスイッチを押されてから色々と緩んできて、唇の柔らかさに引き込まれる。
キスを深めながらも鷹人の片手は真っ直ぐに金色の陰りを探っていた。
慌てて雛子が太腿を閉じようとしても無駄。
洗い立てで滑らかになった肌はつるりと長い指を受け入れてしまう。
「は……っお前、キスだけで感じ過ぎだろ……」
舌を絡める合間、鷹人に濡れた声で笑われて胸が痛い。
指摘されて何だか泣きたくなる。
意地が悪いと思いつつ、この低音は妙に甘く響く。
雛子が反論も出来ないまま再び塞がれた唇。
息継ぎしようとしても、またすぐ引き寄せられて許されず。
昨日から何度も身体を重ねてきたので、流石に何をしたら雛子が弱いのかは知られていた。
内腿の奥、鷹人の指先が届いた花弁は既に開きかけ。
触れられた羞恥で更に熱くなり蜜が音を立てる。
本当は今朝キスされた時だって同じ。
その後で雄の味を口にして、替えたばかりのショーツが泥々に濡れてしまった。
「……それとも、俺とキスするの好きか?」
どうして、そんなこと訊くの。
まるで、肯定してほしいと願うような言い方で。
官能的に匂い立つ薔薇と、混じり合った唾液ですっかり蕩けていた雛子にも分かること。
自意識過剰で突き付けてくるなら鬱陶しいだけなのに、この声は振り解けない。
「ん……っい、嫌ではないです……」
強がって否定しても良かったが、これだけは事実。
少なくとも当主よりは嫌悪感など無い。
あの人は口腔を蹂躙する為のものでしかなかった。
無理やりされていても、欲望の受け皿として変えられた身体はそんなキスでも快楽として見做してしまう。
それ以外は知らなかったのに。
雛子が頷いてみせると、鷹人の表情に艶を増す。
今度は噛み付く形のキスだった。
隅々まで口腔を探って残さず貪られる。
淫らな舌が音を立てる度、下腹部まで溜まり行く情欲が疼く。
ああ、やはり、鷹人に口付けられると何かが違う。
濡れた熱を重ね合わせて、こんなにも切なくなったのは初めて。
水に潜ったように息苦しくて心臓が五月蝿い。
「あ、んぅ……っ、ふ、くぅ、んんッ……」
相変わらず鷹人は片手で蜜を掻き混ぜながら、もう片手と唇で雛子の上半身を愛でてくる。
果実じみたコーラルピンクの乳首を交互に味わって、その大きな白い膨らみの上で丸まった雫まで舐め取られた。
朝に纏め上げてそれきりだったので軽くほつれてきた金髪。
後れ毛を掻き上げて、剥き出しになったうなじまで甘噛みされる。
その間ずっと雛子の腹に押し当たっていた硬い雄。
中に入りたいと、言葉にされずとも分かる。
水場の濡れた手ではうまく破れず、焦れた鷹人が避妊具の包装を噛み千切った。
残骸を吐き捨てて、冷たく濡れた壁際に雛子を立たせるとゴムに包まれた切っ先を宛てがう。
男の手で白い脚を片方抱えながら、突き刺すように侵入してくる。
「っ……ん、ぁ、うぅ……」
打ち込まれた雛子の唇から小さく呻き声が零れ落ちるものの、まだ浅くてもどかしくなる。
それに立位は足場が安定した場所でなければ危ない。
ましてや濡れた浴室の床なんて。
ゆっくり動くうちは良いが、鷹人もあまり長い時間は向かない体勢だとは承知の上か。
ふと雛子の腰を抱え上げるようにしながら引き摺っていく。
このまま動かれると響くので戸惑っていると、行き先は湯の張られた浴槽。
「やっ……あの、ここでするのは、ちょっと……」
「拒むな」
潤んだ双眸で見上げながら訴えても、むしろ鷹人を煽るだけ。
繋がったまま脚を抱えられて否応なし。
雛子の爪先が浮いた状態から、二人揃って湯船に浸かる。
「うあぁ……ッ、あ、あっ、あぅぅ……っ」
高いところからいきなり腰を落とされて一気に深くなり、串刺しにされる錯覚。
飛び込むように湯へ沈んだ時、雛子の声はほとんど悲鳴に近かった。
一度はシャワーを浴びて暖まったが、この火照りは情欲によるものが大きかった。
急に全身が熱い湯へ浸かってショック状態で痺れる。
今は大きく脚を開いて鷹人と抱き合う対面座位。
力が抜けた不安感で子供のように必死でしがみついてしまう。
こんな風呂で溺れる訳がないのに。
ずぶ濡れで抱き締められると、ぴったり隙間無く重なる感覚。
熱くて堪らないのは水面下の胸辺りまで。
二の腕と頬だけは酷く冷たくて理性を叩き起こし、惚けさせてくれない。
「ほら、イかせてやるから頑張れ」
「やっ、あぁっ、んん……こんな、あ、鷹人様……っ」
嫌だと訴えたかった自分の声はなんて甘いのか。
羞恥で居た堪れなくなった雛子はもうされるがまま。
湯の中では滑りが悪いので抜き差しはしない。
鷹人の両手に尻を鷲掴まれ、最奥まで挿し込んだまま前後左右にと腰が揺さぶられる。
飛沫を上げる激しい水音に、湯船はまるで嵐の海。
水の浮力で重い乳房も荒ぶる勢いで弾む。
風呂に浸かりながら交わるなんて考えたこともなく、まさかこんなにも熾烈だとは思わなかった。
「うぁ、やだ、これやだ……っあぅ、ふ、あぁ……ッ」
内から外から烈火の如き熱で灼かれてしまいそうだ。
快楽でぐちゃぐちゃに荒れ狂う波に呑まれ、鷹人の肩や背中に爪を立てる。
どうか離さないでと縋り付くように。
沈みそうになって、もう訳が分からなくなる。
「はは……っ、お前、今日は凄い声だったな」
「そうですか……誰の所為でしょうね……」
喉で笑う鷹人の声を雛子はどこか遠くで聞いていた。
それでも黙っていられないのは反骨精神。
湯船での交わりは絶頂が目眩と共に来て、あのまま崩れ落ちてしまった。
すっかり逆上せて全身が桃色に茹だった雛子を鷹人がタオルに包み、ベッドへ運んだ後の会話である。
清潔な新しいシーツに点々と落ちる水玉。
身を横たえても、ここにはまだ淡い洗剤の匂いしかしない。
ただでさえ風呂は声が響くので他の使用人にも聴こえてしまっただろう。
そこを考えると羞恥でまた気が遠くなりそうだった。
娼婦呼ばわりは今更の話、きっと「次々と男を籠絡する悪女」なんて思われていそうだ。
実際には欲望の受け皿でしかないのだが。
「可愛かったぞ」
一方、鷹人は風呂で随分と楽しげだった。
乱れ切って気絶しそうな雛子を眺めながら、繋がったままゴム越しに白濁液を吐いて満足げ。
びしょ濡れのまま上がる訳にもいかず彼だけバスローブを羽織っているのだが、撫で肩なのでどちらかといえば浴衣の方が似合いそうなものを。
しかも白や黒ならまだ良かったのだが微妙な色。
あれでもハイブランド物だというのだから、センスが悪いのは誰なのか分からなくなる。
パーソナルカラーと合ってないだけでも事故が起きるもの。
「こっち向け」
「え、あの……ん、んん……ッ」
ふと鷹人に抱き起こされたら、腕の中。
惚けていた雛子の唇にペットボトルの小さい口を当てて、ゆっくり傾けてくる。
熱で浮かされた身体に冷たい水が染み込む。
注がれた分を慌てて飲み干した雛子が濡れた唇を拭うと、鷹人もペットボトルに口を付ける。
上下する喉仏につい見入ってしまった。
裸の胸や腹を重ね合わせながら液体を摂取すると、相手の喉から胃へと真っ直ぐ落ちて行く感覚が伝わってくる。
心音二つの共鳴も鮮やかに。
「……一休みしたら、また続きするからな」
ああ、駄目か。
出来れば今日はこのまま寝かせてほしかったが、一回で勘弁してもらえるほど鷹人は甘くないらしい。
しかし労ってはくれているのだろう、間違いなく。
確かに少し手荒さは否めなくても鷹人に気遣いされているのが非常に意外なこと。
何も言わなくても与えられるのが当然の側だった人が。
好きなだけ弄んだ後は放ったらかしにされてもおかしくないのに。
「相手をしろ」とはそういう関係をお望みだと思っていたのに。
藻掻こうとすると却って深入りしそうで、雛子は静かに浮かぶことにした。
大丈夫だ、まだ息継ぎは出来ているから。
オールバックにするとまた印象が変わるものだ。
先程から抱き竦められていたので、もともと近かった顔が更に寄せられる。
何の為になど、そんなの言うまでもなし。
絡んだ吐息の熱に誘われて互いに唇を重ね合わせた。
情欲のスイッチを押されてから色々と緩んできて、唇の柔らかさに引き込まれる。
キスを深めながらも鷹人の片手は真っ直ぐに金色の陰りを探っていた。
慌てて雛子が太腿を閉じようとしても無駄。
洗い立てで滑らかになった肌はつるりと長い指を受け入れてしまう。
「は……っお前、キスだけで感じ過ぎだろ……」
舌を絡める合間、鷹人に濡れた声で笑われて胸が痛い。
指摘されて何だか泣きたくなる。
意地が悪いと思いつつ、この低音は妙に甘く響く。
雛子が反論も出来ないまま再び塞がれた唇。
息継ぎしようとしても、またすぐ引き寄せられて許されず。
昨日から何度も身体を重ねてきたので、流石に何をしたら雛子が弱いのかは知られていた。
内腿の奥、鷹人の指先が届いた花弁は既に開きかけ。
触れられた羞恥で更に熱くなり蜜が音を立てる。
本当は今朝キスされた時だって同じ。
その後で雄の味を口にして、替えたばかりのショーツが泥々に濡れてしまった。
「……それとも、俺とキスするの好きか?」
どうして、そんなこと訊くの。
まるで、肯定してほしいと願うような言い方で。
官能的に匂い立つ薔薇と、混じり合った唾液ですっかり蕩けていた雛子にも分かること。
自意識過剰で突き付けてくるなら鬱陶しいだけなのに、この声は振り解けない。
「ん……っい、嫌ではないです……」
強がって否定しても良かったが、これだけは事実。
少なくとも当主よりは嫌悪感など無い。
あの人は口腔を蹂躙する為のものでしかなかった。
無理やりされていても、欲望の受け皿として変えられた身体はそんなキスでも快楽として見做してしまう。
それ以外は知らなかったのに。
雛子が頷いてみせると、鷹人の表情に艶を増す。
今度は噛み付く形のキスだった。
隅々まで口腔を探って残さず貪られる。
淫らな舌が音を立てる度、下腹部まで溜まり行く情欲が疼く。
ああ、やはり、鷹人に口付けられると何かが違う。
濡れた熱を重ね合わせて、こんなにも切なくなったのは初めて。
水に潜ったように息苦しくて心臓が五月蝿い。
「あ、んぅ……っ、ふ、くぅ、んんッ……」
相変わらず鷹人は片手で蜜を掻き混ぜながら、もう片手と唇で雛子の上半身を愛でてくる。
果実じみたコーラルピンクの乳首を交互に味わって、その大きな白い膨らみの上で丸まった雫まで舐め取られた。
朝に纏め上げてそれきりだったので軽くほつれてきた金髪。
後れ毛を掻き上げて、剥き出しになったうなじまで甘噛みされる。
その間ずっと雛子の腹に押し当たっていた硬い雄。
中に入りたいと、言葉にされずとも分かる。
水場の濡れた手ではうまく破れず、焦れた鷹人が避妊具の包装を噛み千切った。
残骸を吐き捨てて、冷たく濡れた壁際に雛子を立たせるとゴムに包まれた切っ先を宛てがう。
男の手で白い脚を片方抱えながら、突き刺すように侵入してくる。
「っ……ん、ぁ、うぅ……」
打ち込まれた雛子の唇から小さく呻き声が零れ落ちるものの、まだ浅くてもどかしくなる。
それに立位は足場が安定した場所でなければ危ない。
ましてや濡れた浴室の床なんて。
ゆっくり動くうちは良いが、鷹人もあまり長い時間は向かない体勢だとは承知の上か。
ふと雛子の腰を抱え上げるようにしながら引き摺っていく。
このまま動かれると響くので戸惑っていると、行き先は湯の張られた浴槽。
「やっ……あの、ここでするのは、ちょっと……」
「拒むな」
潤んだ双眸で見上げながら訴えても、むしろ鷹人を煽るだけ。
繋がったまま脚を抱えられて否応なし。
雛子の爪先が浮いた状態から、二人揃って湯船に浸かる。
「うあぁ……ッ、あ、あっ、あぅぅ……っ」
高いところからいきなり腰を落とされて一気に深くなり、串刺しにされる錯覚。
飛び込むように湯へ沈んだ時、雛子の声はほとんど悲鳴に近かった。
一度はシャワーを浴びて暖まったが、この火照りは情欲によるものが大きかった。
急に全身が熱い湯へ浸かってショック状態で痺れる。
今は大きく脚を開いて鷹人と抱き合う対面座位。
力が抜けた不安感で子供のように必死でしがみついてしまう。
こんな風呂で溺れる訳がないのに。
ずぶ濡れで抱き締められると、ぴったり隙間無く重なる感覚。
熱くて堪らないのは水面下の胸辺りまで。
二の腕と頬だけは酷く冷たくて理性を叩き起こし、惚けさせてくれない。
「ほら、イかせてやるから頑張れ」
「やっ、あぁっ、んん……こんな、あ、鷹人様……っ」
嫌だと訴えたかった自分の声はなんて甘いのか。
羞恥で居た堪れなくなった雛子はもうされるがまま。
湯の中では滑りが悪いので抜き差しはしない。
鷹人の両手に尻を鷲掴まれ、最奥まで挿し込んだまま前後左右にと腰が揺さぶられる。
飛沫を上げる激しい水音に、湯船はまるで嵐の海。
水の浮力で重い乳房も荒ぶる勢いで弾む。
風呂に浸かりながら交わるなんて考えたこともなく、まさかこんなにも熾烈だとは思わなかった。
「うぁ、やだ、これやだ……っあぅ、ふ、あぁ……ッ」
内から外から烈火の如き熱で灼かれてしまいそうだ。
快楽でぐちゃぐちゃに荒れ狂う波に呑まれ、鷹人の肩や背中に爪を立てる。
どうか離さないでと縋り付くように。
沈みそうになって、もう訳が分からなくなる。
「はは……っ、お前、今日は凄い声だったな」
「そうですか……誰の所為でしょうね……」
喉で笑う鷹人の声を雛子はどこか遠くで聞いていた。
それでも黙っていられないのは反骨精神。
湯船での交わりは絶頂が目眩と共に来て、あのまま崩れ落ちてしまった。
すっかり逆上せて全身が桃色に茹だった雛子を鷹人がタオルに包み、ベッドへ運んだ後の会話である。
清潔な新しいシーツに点々と落ちる水玉。
身を横たえても、ここにはまだ淡い洗剤の匂いしかしない。
ただでさえ風呂は声が響くので他の使用人にも聴こえてしまっただろう。
そこを考えると羞恥でまた気が遠くなりそうだった。
娼婦呼ばわりは今更の話、きっと「次々と男を籠絡する悪女」なんて思われていそうだ。
実際には欲望の受け皿でしかないのだが。
「可愛かったぞ」
一方、鷹人は風呂で随分と楽しげだった。
乱れ切って気絶しそうな雛子を眺めながら、繋がったままゴム越しに白濁液を吐いて満足げ。
びしょ濡れのまま上がる訳にもいかず彼だけバスローブを羽織っているのだが、撫で肩なのでどちらかといえば浴衣の方が似合いそうなものを。
しかも白や黒ならまだ良かったのだが微妙な色。
あれでもハイブランド物だというのだから、センスが悪いのは誰なのか分からなくなる。
パーソナルカラーと合ってないだけでも事故が起きるもの。
「こっち向け」
「え、あの……ん、んん……ッ」
ふと鷹人に抱き起こされたら、腕の中。
惚けていた雛子の唇にペットボトルの小さい口を当てて、ゆっくり傾けてくる。
熱で浮かされた身体に冷たい水が染み込む。
注がれた分を慌てて飲み干した雛子が濡れた唇を拭うと、鷹人もペットボトルに口を付ける。
上下する喉仏につい見入ってしまった。
裸の胸や腹を重ね合わせながら液体を摂取すると、相手の喉から胃へと真っ直ぐ落ちて行く感覚が伝わってくる。
心音二つの共鳴も鮮やかに。
「……一休みしたら、また続きするからな」
ああ、駄目か。
出来れば今日はこのまま寝かせてほしかったが、一回で勘弁してもらえるほど鷹人は甘くないらしい。
しかし労ってはくれているのだろう、間違いなく。
確かに少し手荒さは否めなくても鷹人に気遣いされているのが非常に意外なこと。
何も言わなくても与えられるのが当然の側だった人が。
好きなだけ弄んだ後は放ったらかしにされてもおかしくないのに。
「相手をしろ」とはそういう関係をお望みだと思っていたのに。
藻掻こうとすると却って深入りしそうで、雛子は静かに浮かぶことにした。
大丈夫だ、まだ息継ぎは出来ているから。
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