鳳凰の巣には雛が眠る〜かつて遊び人だった俺と慰み者だった君が恋人になるまで〜

タケミヤタツミ

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二章:冷たい鳥籠(雛子過去編)

28:隠し物*

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鷹人が机の一番下の引き出しを開けた時、雛子の心臓が跳ねた。
ここに隠されているのはホールケーキが入りそうな大きさの箱。
どうして、それを知っているの。

「雛子、お前これが何だか知ってるよな?」

鷹人はどうやって箱を見つけたのか。
もうその時に開けて、既に中身なんて分かっているのだろう。
雛子の喉は詰まって返事も出来ず、震えそうになりながら外された蓋を黙って見ていた。


鉛筆グリップの装着された筆ペン。
電動歯ブラシ、小型のマッサージ機。
羽ペンにメイクブラシ、その他にも色々と。

これら単体なら一般家庭によくある物であり無秩序。
とはいえ書斎に置かれているのは妙。
その答えは一緒に入っていたローションと避妊具の包装で、全ての点と線が繋がってしまう。

要するに、当主が雛子の調教用に揃えた品々である。

性行為の為に作られたアダルトグッズを使えば良いものを、日用品の方が却って興奮すると好んでいた。
腕などを拘束する時も、当主は身に着けているネクタイやベルトをその場で抜き取って使う。
服を着たままでも、どうせ性行為の際には首も下腹部も寛げるのだし。

考えてみれば、引き出しの奥なんて物隠しの基本。
ドアに鍵を掛けるだけで適当なところに置いたりするから、鷹人に見つかってしまうのだ。


「使い方なんか大体分かる……今日は俺がこれで可愛がってやるよ」

古傷の上書きとはそういう意味か。
当主に刻み込まれた痕を、鷹人が塗り潰そうとしているのだ。



鷹人から最初に下された命令は机に座れというもの。
冷えた天板に尻と爪先つまさきだけ着けて、立て膝の格好。

雛子が脚を閉じようとしても無駄なこと。
靴下を脱がされれば、露わになる素足と金の鎖。
アンクレットの隙間に鷹人の指が潜り込んで引っ張られると、滑るように開いてしまう。

黒いリボンタイだけそのままにされると猫の首輪のようで妙な感じだ。
奴隷じみたアンクレットといい、鷹人はそういう趣味なのやら。
制服の胸元が開かれて、フロントホックを外されると重い乳房は弾けるようにブラから溢れる。

クリーム色を溶かした白い肌に、鷹人がまず宛てがったのはメイクブラシ。
細い毛が密集した筆が首筋や指の間など薄い肌を這い回る。
からかっているような動きでくすぐったく、笑わせたいのか何なのか。
内腿や乳首を毛先で磨くようにされると流石に雛子も微かに震えながら俯いた。
それでもこれはまだ序の口、挨拶代わり。


俯いたまま小さく溜息を吐いたところで雛子は動けなくなった。
理由は、近付いてくる電動歯ブラシの振動音。

「鷹人様……それ、こっち向けないで下さい……」
「どうした、そんなに怯えて」

日頃無表情で何を考えているか分からない雛子だからこそ、目や声に狼狽が見えるのは珍しい。
対して歯ブラシを構える鷹人は加虐的に笑う。

一見すると、歯磨きを嫌がる子供と保護者の構図。
そんな微笑ましいものではないが。


メーカーによって違いはあるのだろうが、これは単に高速で振動するだけの安物。
耳にした途端、蜂が寄って来るような警戒が走る。
ただ羽音よりもずっと無機質で低い。

何年も掛けて慣らされた雛子は悍ましく思う反面、身体はその快楽を知っていた。
パブロフの犬が目を覚まして涎を垂らし始める。

当主はこれで雛子が自慰に耽る姿を好んで眺めていた。
清楚で上品な菫色の制服は淑女の証のようなもの。
ランプに照らされた机の上、娼婦の面を曝け出すと獣めいた情欲を滾らせた視線を向けてくる。
あちらもまた下腹部の屹立を自ら扱き、途中で堪らなくなって覆い被さってきたものだった。

しかし「忘れろ」と言われたばかりだ、もう思い出すのはやめておこう。


ブラシで秘部に直接触れると痛むので使う前には避妊具を着けてから。
鷹人の片手はアンクレットを引っ張って離さず、もう片手で歯ブラシを握っている。
スカートを捲り上げて開かれた脚の付根はまだ下着で覆われていた。

ずっと焦らされている花弁が布越しに切なく戦慄く。
自覚すると、期待しているようで恥ずかしい。

「ッん……」

触れた瞬間、零れた雛子の声は既に甘かった。
自慰なら自分のペースで出来るものを、こうして男の手でされるのは初めて。
最初は先端で軽く触れたり押し付けたりと強弱をつけながらの刺激。
それから徐々に動きが容赦なくなっていく。

電動歯ブラシは通常の物より柄が倍以上太くなっており、幅だけでも指二本分といったところか。
それを薄布越しに浮き出る筋に合わせ、密着させられると逃げ場が無い。

「やぁ……ッ、あっ……ンン、あぅ、あぁっ……」
「……もうかなり濡れてるな、女の匂いがする」

堪えきれず、切れ切れながらも喘ぎが漏れてしまう。
机の上に座り込んでいるので、椅子に腰掛けている鷹人の顔が近い。
感じていることを指摘されて羞恥がまた快楽を煽る。

ショーツのサイドを引っ張られたら拒めない。
腰を浮かせて素直に脱がされると、薄布の間に蜜の糸を紡ぐ花弁が姿を現した。


「もっと?」
「ッひ……くぁ、あっ、うぅ……ッ」

濡れた花弁に小さなブラシの頭が潜り込むと、雛子がしゃっくりに似た声を上げた。

つるりとしたプラスチックの表面はゆっくり押し込むと何の抵抗もなく進み、奥へ呑み込んでしまう。
ブラシを支える細い部分を越えて、太くなった柄まで。
そのまま前後に抜き差しされると、振動に加わりゴム越しにブラシの部分で内壁を擦られて堪らない。

身体の真ん中から芯が解されて柔らかくなる錯覚。
高い熱を持った蜜がとろとろに溢れてきた。

「歯ブラシで犯されてるの、そんなにイイか?」

蜜で指先を濡らしながら鷹人が意地悪に笑う。
その低い声だけでなく、動かされる度ぐちゅぐちゅ音を立てて酷く淫ら。

熱が上がる、それこそ真っ白に灼けるような。


「や、あぁっ、すごいの……っ、くる、キちゃう……ッ」

達した瞬間、高い声で跳ね上がった身体。

伸びた雛子の爪先に金の鎖が揺れる。
数え切れないくらい当主に穢されてきた机の上、これだけが以前と違う。
冷たく光る、鷹人に嵌められた所有の証。


雛子の意思や身体と無関係で尚も続く振動。
やっと引き抜かれると、大量の蜜が流れ落ちた。

目眩でふらついた雛子の身体を鷹人がサンダルウッドの匂いで抱き留める。
そうして向かい合わせで椅子の上。
男女二人分の体重で重々しく軋みつつも壊れたりしない。
緩められたスラックスの下腹部、硬くなった雄が互いの腹に当たっていた。

「乗れよ、早くお前のナカに入りたい」

口元を解くように笑って鷹人が誘う。
もう全身が薔薇色に火照った雛子は虚ろに頷いた。
泥々に蕩けてしまっていた芯の代わり、深々と突き刺さっていく。


「……雛子、お前がここで親父に何されてたのかなんて、どうでもいい……だから、もう俺の物になれよ」

舌を絡めるキスの合間、ふと囁かれる。
焦点の合わない至近距離では鷹人がどんな表情をしていたのか雛子には分からず。

ただ、その声は酷く切なげだった。
    
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