狂おしいほど恋しくて  〜完結〜

月夢(らいむ)

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第五章

悪夢の街のその先は

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 公園に、ついた。 みたことのある公園だ。

 少しの遊具と、木登りにちょうどいい木が何本かあった。

 遊んでいる子はそんなにいなかった。

 木登りでもしようと思って木に上り始めた。足をかけることのできるコブが適度にあってそんなに高くないところに太めの枝があった。 よく登った木だ。

 想像よりももっと登りやすくなっている。 

 1番下の枝に腰かける。

 風が気持ちいい。いい風景ではない。上の方にたくさんの枝と、みんなが遊んでいる公園が見えるだけだ。

 気がつくと隣に、マロがちょこんと座っていた。

 「マロちゃん、また来てくれたんだね。」わたしは、うれしくなった。

 ここは、どうやら安全な気がする。そして、そんなに広くない公園の全体を見渡せる。

 公園の外の道路に、あの黒い服を着た男が現れた。わたしを探しに来たのか?

 公園で遊んでいた子供たちの姿もなくなった。また逃げなくてはいけないんだろうか?

 男はわたしに気づくとスーッとすべるように近づいてきた。いつのまにか木の下にいてわたしのことを見上げた。

 絶対絶命だ。 木に登ってこられたら終わりだし、木から降りたら捕まってまた刺されるだろう、黒づくめの男の手には、ナイフがキラリと光っていた。

 この覚めない悪夢の街でまた刺し殺されるのはごめんだ。

 隣に座っていたマロがいつの間にか、またわたしの肩に乗っていた。 今ならできる気がした。

 わたしは、木の幹をつかみながら枝の上に立ち上がると 勢いをつけてジャンプをした。

 フワリ

 気がつくと登っていた木が、自分の下にあった。やっぱりいつの間にか黒づくめの男の姿はなかった。

 わたしは肩に猫のマロを乗せ小さな公園を見渡せる高さの位置にいる。

 悪夢を見続けて、40年以上、あまり自分の思い通りに夢を操れたことはないがとうとう成功した。

 もう少し高く飛べるかなぁ?試してみたがそうはいかなかった。せいぜい2階の屋根ぐらいの高さだ。 

 かっこよく飛ぶどころかフラフラと進まず 平泳ぎのような手の動きで空気をかいて公園をぬけた先の八百屋さんと駄菓子屋のあたりで、地面が顔から20センチほどの高さで 低空飛行歩いている人の足と靴しか見えなくなった。

 でも誰にも気づかれない。

 存在自体がないようだ。

 人の足元 ひざあたりに平行に浮かび歩くのより遅く立つこともできないなんて
肩に乗っていたマロは、背中に乗っていて重いしなんだかこれはこれで最悪な夢じゃないか?

 
お願いもう目を覚ましたい。

首の後ろにすごく汗をかいているのがわかった。

 枕元にあるミニタオルで汗を拭きたい。
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