婚約破棄されたので、令嬢辞めてもふもふに生きますわ!

るてぃー

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1.婚約破棄されました。

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「…愛する人が出来た。だから君とは結婚できない。婚約解消させてくれ」



突然訪ねてきた子爵家の婚約者・テッドによる信じがたい言葉により、それまで穏やかだった部屋の空気がピシリ、と凍ったのは気のせいではないだろう。

…いや、実際、ピキピキと小さな音を立てて持っていたティーカップの紅茶が私の魔力によって凍っていた。


「…あの、テッド様、本気でおっしゃっているのですか?」

「あぁ。…冗談でこの様な事を言うわけないだろう」

確かにこの目は本気だ。でもここに来たのはテッド様ご自身のみ。おかしくはないかしら?

政略結婚、しかもテッド様のお父上から声をかけられ、わたくしが三兄弟の末っ子ということもあって特に問題なかった事から結ばれていたのに。その肝心のテッド様のお父上はここにはいない。

家同士の問題なのにテッド様お一人とかおかしすぎる。
まさか、テッド様の独断とかではない、わよね??


「…あの、この事をテッド様のご両親はご存知、ですのよね?」


「まだ両親には言っていない。これから婚約解消した事を伝える。まずは君に言っておこうと思ってな」


「…は?」


思わず目が点になる。
テッド様のお父上がご存知ないですって?
いやいやいや、駄目でしょう!アウトでしょう!事後報告アウト!!

そちらから望まれた婚約なのに、テッド様の独断で解消とか!

…それと爵位、わたくしの家が上だって忘れておりませんか?!大問題ですわよ?!


「そしてリリア・ファブリスク男爵令嬢との婚約を進言するつもりだ。…あぁ、もうこんな時間か。これからリリアを迎えに行くので僕はこれで失礼させて貰う」

心の中で驚き突っ込んでいると、尚も信じられない言葉を続け、ここにいる時間が勿体ないとばかりに早々と話を切りあげ、ソファから立ち上がり部屋から出ていくテッド様。

…はぁあああ!??
リリア・ファブリスク男爵令嬢ってたまにお茶会で一緒になる、あの見てくれだけで中身空っぽ脳内お花畑のリリア??!

これから迎えに行く??!
まさか!リリアも一緒に婚約するとか言うつもり?!!
さすがに貴族としてどうなの…?!

しかも謝罪の一言もなかったんですけど?!!

言いたい事、突っ込みどころはたくさんあるけれど、とにかく、わたくしはわたくしが今すべき事をしなくては。はぁー…頭が痛い。

気を持ち直して持っていたままだったティーカップをテーブルに置き、そばに控えていた執事のブラッドへと目を向け一言。


「ブラッド、至急、お父様とお母様に連絡を。封筒は…緊急案件だから赤色で」

「…はい、お嬢様」


執事のブラッドはいつも通りの返事と共に一礼をするとお父様達に連絡すべく、部屋から退室していった。

…まぁ、いつも通りと言っても纏っている空気はテッド様を殺さんばかりのオーラだったけれども。


この国での連絡方法は基本的に手紙で、案件事によって封筒の色が変わる。

通常→白
緊急→赤
危篤系→黒

今回は家に関わる問題なので赤色。
送る方法は魔法によって一瞬で届くから便利。


あと数ヶ月で16歳でデビュタントだったのに…その前に婚約破棄で傷物とか、笑えなさすぎる。

今まで婚約者のテッド様に恥をかかせないようにと好きではないマナーを頑張って来た。


…1ヶ月前に会ったときは普通でしたのに…リリアの脳内お花畑にテッド様も感化されたのかしら?

楽ですものね、自分達の事だけ考えてあははうふふして、貴族としての責務を果たさないでいるのは。

ただ、その先に待っているのは下り坂のみですが。

この国は貴族としてのあり方に力を入れているので当たり前ですがその責務を放棄した者にはそれ相応の処置がなされる。
…わたくしの傷物扱いは変わらないですが。



時間が経つにつれ、段々と怒りが沸いてくる。

テッド様は勿論、テッド様の変化にも気付かなかった自分にも腹立たしい!

怒りのあまり、膝の上でぎりりと服を掴む手に力がこもる。

それを見て、わたくしのメイド、ナユリーが可愛そうにも凍ってしまった紅茶を下げながら明るめな声で励ましてくれる。

「お嬢様、心中お察し致します。…ですが!これで屋敷でならお嬢様がもふもふを我慢せずとも良くなりましたね!このナユリー、お嬢様はもふもふに囲まれて笑っておられる時が一番輝いていると思っています!どんな花よりも美しく、可憐なお嬢様の笑顔が私は大好きですっ!」


ナユリーはわたくしの二歳年上でいつも親身になって使えてくれている、可愛らしい性格のメイドである。
例えるならそう、小型犬辺りかしら?…あぁ、その笑顔にとても癒されるー


というか、傷物になったとしてもそこまでわたくしは結婚したい意欲があったわけでもないし、結婚したらしたでもふもふ出来ないしで…あれ?これで良かった気しかしない。


「ナユリー、ありがとう。…そうね、もういっそのこと傷心旅行と称した旅にでも行こうかしら?…変装すればわたくしだとばれないし…」

「え?お嬢様…?まさか、旅とおっしゃいましたが…また変装して冒険者になったり、しませんよね?」

「…あは、は?」

そう。また、である。 

わたくしは一年前、社会勉強と称して心配する両親を強引に納得させ、冒険者をしていたのだ。
1ヶ月くらいだったけど。

おかげで令嬢っぽくならない話し方も獲得出来て良い経験だったと思う。

戦闘方法は細身の剣も使えるけれど、魔法と使い魔かしら?

魔法は魔力の質の種類や才能によって使える使えないが別れる。
あとはそれぞれが持つスキルも大切だ。

わたくしの父上が炎、母上が氷の使い手で嬉しい事にわたくしは両方使える。

スキルは6歳になったら貴族は鑑定士を呼び、鑑定してもらう決まりで、わたくしのスキルは珍しいスキルの一つである、「召喚」だった。

召喚というスキルは召喚の儀式を行い、魔力の波長の合う使い魔が召喚される。

そしてお互いに契約しても良いと思えたなら、本契約の儀式をし、使い魔に名前を与えてようやく正式な使い魔となるのだ。

契約出来る使い魔の数は召喚者の魔力の保有量によって変動するし、召喚者と使い魔の絆が深まれば会話が出来る様にもなる。
会話が出来るのは実に便利である。

そんな感じで、スキルが召喚であったのがもふもふ好きの始まりだった。
初めて召喚した使い魔が炎属性のライオンの様な見た目に翼が生えた、赤い艶やかな毛並みを持ったファイアタードという種類だったのだ。

名前をジルという。ちなみに使い魔に性別はない。

瞬く間に仲良くなったわたくしとジルは直ぐに本契約を交わした。
それからというもの、テッド様と婚約するまでは支障がない限り屋敷ではいつも一緒だった。
最悪な事にテッド様がジルを好ましく思わなかったのだ。全く!万死に値しますわ!

それが今日からは自由にいつでもジルを召喚出来るのは幸せである!

むしろデビュタント前に婚約破棄出来て良かったのかも知れない。









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