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第8話 追放後ーーエリシアの生活
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王都を離れた直後、エリシアの生活は、驚くほど静かだった。
周囲に騒がしく声を荒げる王太子もいない。
無理難題を当然のように押し付けてくる人間もいない。
追放された令嬢と聞けば、涙に暮れ、先の見えない不安に押し潰される姿を想像する者もいるだろう。
だが、彼女は違った。
辺境の屋敷に落ち着いたその日、エリシアはまず、机と書類棚を整えた。
「……やっと、静かですね」
ぽつりと漏らした言葉に、ロザリーは何も答えなかった。
王宮での日々は、常に音に満ちていた。
人の声、足音、命令、苦情、責任の押し付け合い。
ここには、それがない。
必要なものは、自分で決める。
誰に指示を仰ぐ必要もない。
それだけで、胸の奥に溜まっていたものが、少しずつ抜けていくのを感じた。
生活は、質素だった。
だが、不自由ではない。
エリシアは、王都を出る前から準備していた。
公爵家の財務状況。
無駄な出費。
歪められた帳簿。
それらを一つずつ整理し、誰にも知られない形で、資金を確保していた。
商会を立ち上げたのも、自分が生きるためだった。
誰かに頼らず、
誰かに縛られず、
選択肢を持つために。
「しばらくは、ここで大丈夫ですね」
そう言って微笑んだ彼女の顔に、焦りはなかった。
追放された身であることを、
彼女は正しく理解していた。
だが同時に、失ったものより、手に入れたものの方が多いことも。
時間。
静けさ。
判断する自由。
ロザリーと囲む簡素な食卓は、王宮の豪奢な晩餐よりも、ずっと温かかった。
「エリシア様、今日はよく眠れますね」
「ええ。
誰にも呼び起こされませんから」
その夜、
エリシアは久しぶりに、夢を見なかった。
数日が経ち、辺境の人々は彼女を
「追放された令嬢」とは見なさなくなった。
帳簿の整理。
契約書の確認。
揉め事の仲裁。
彼女が自然に手を伸ばすたび、物事は不思議なほど円滑に進んだ。
「……この方、只者ではない」
そんな噂が、静かに広がっていく。
それは、王宮の名を使わない評価だった。
誰かの婚約者でも、
公爵令嬢でもない。
エリシア・ヴァンローズ個人としての評価。
そして、その噂はやがて、隣国へと届く。
彼女が拾われたのではない。
必要とされたのだ。
エリシアは、今日も机に向かう。
追放された令嬢としてではなく、自分の人生を、自分で選ぶ一人の女性として。
ここから先は、もう誰にも奪わせない。
それが、彼女の新しい生活だった。
周囲に騒がしく声を荒げる王太子もいない。
無理難題を当然のように押し付けてくる人間もいない。
追放された令嬢と聞けば、涙に暮れ、先の見えない不安に押し潰される姿を想像する者もいるだろう。
だが、彼女は違った。
辺境の屋敷に落ち着いたその日、エリシアはまず、机と書類棚を整えた。
「……やっと、静かですね」
ぽつりと漏らした言葉に、ロザリーは何も答えなかった。
王宮での日々は、常に音に満ちていた。
人の声、足音、命令、苦情、責任の押し付け合い。
ここには、それがない。
必要なものは、自分で決める。
誰に指示を仰ぐ必要もない。
それだけで、胸の奥に溜まっていたものが、少しずつ抜けていくのを感じた。
生活は、質素だった。
だが、不自由ではない。
エリシアは、王都を出る前から準備していた。
公爵家の財務状況。
無駄な出費。
歪められた帳簿。
それらを一つずつ整理し、誰にも知られない形で、資金を確保していた。
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誰かに頼らず、
誰かに縛られず、
選択肢を持つために。
「しばらくは、ここで大丈夫ですね」
そう言って微笑んだ彼女の顔に、焦りはなかった。
追放された身であることを、
彼女は正しく理解していた。
だが同時に、失ったものより、手に入れたものの方が多いことも。
時間。
静けさ。
判断する自由。
ロザリーと囲む簡素な食卓は、王宮の豪奢な晩餐よりも、ずっと温かかった。
「エリシア様、今日はよく眠れますね」
「ええ。
誰にも呼び起こされませんから」
その夜、
エリシアは久しぶりに、夢を見なかった。
数日が経ち、辺境の人々は彼女を
「追放された令嬢」とは見なさなくなった。
帳簿の整理。
契約書の確認。
揉め事の仲裁。
彼女が自然に手を伸ばすたび、物事は不思議なほど円滑に進んだ。
「……この方、只者ではない」
そんな噂が、静かに広がっていく。
それは、王宮の名を使わない評価だった。
誰かの婚約者でも、
公爵令嬢でもない。
エリシア・ヴァンローズ個人としての評価。
そして、その噂はやがて、隣国へと届く。
彼女が拾われたのではない。
必要とされたのだ。
エリシアは、今日も机に向かう。
追放された令嬢としてではなく、自分の人生を、自分で選ぶ一人の女性として。
ここから先は、もう誰にも奪わせない。
それが、彼女の新しい生活だった。
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