時ヲ震ワス鐘 ~御嶽山大噴火~

星野 未来

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【 2014年9月26日 】

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「お祖父じいちゃんの家には、何時に着くの?」
「うん、大体21時頃かな」

 2014年9月26日金曜日。
 この日、夫の紫苑は御嶽山おんたけさんに登るために、彼の祖父の実家がある長野県大滝村おおたきむらに向かおうとしていた。

「お祖父ちゃんには、言ってあるの?」
「ああ、明日、御嶽に登ることも言ってある」

「そう。もう、忘れ物はない?」
「うん、多分大丈夫」

 登山用の大きなリュックを背負う彼を玄関先まで見送る。
 いつもだったら、私も一緒にふたりで行くんだけど、今回ばかりは、おあずけだ。
 大きくなったお腹を抱えながら、ゆっくりと玄関まで歩いてゆく。
 すると、私の右手をやさしくそっと握って「大丈夫?」と心配そうに支えてくれる。

「ありがとう、紫苑」
「留守番中、大人しくしてるんだぞ」

「うん」

 私の大好きな彼のやさしい横顔がすぐ近くにある。
 玄関まで来ると、彼が登山用の靴をしゃがんで履いた。

 玄関先で私はスリッパのまま。段差があるけど、それでも彼の方がスッと振り向き立つと少しだけ大きい。
 私はエプロンの前ポケットから、四角いある物を取り出して彼にこう言う。

「これ、忘れてるでしょ」
「あっ、いつものチョコね」

「そう、いつもふたりで山に登る時に持って行く板チョコ」
「ありがとう、桂花」

 私は彼にそのチョコレートを渡すと、少しだけつま先を上げて、まぶたを閉じながら彼にそっと近づいた。


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