親友に婚約者を奪われた侯爵令嬢は、辺境の地で愛を語る

蒼あかり

文字の大きさ
11 / 20

~11~

しおりを挟む

翌日の夕方近く、ロベルトがルドー家へ訪れた。

二人は今までの事を語り合い、会えなかった時間の隙間を埋めるように確認しあう。
先の事はわからない。それでも今目の前にいる存在を唯一だと思い、一緒にいられることが幸せだと素直に思えた。
二人の間の障害は自分ではどうしようもないこと。
身分のことを含めても、今はただこの思いに素直に身を任せたい。流されたいと思った。

それからのロベルトは遠征前と同じように、時間が空けばセイラの元に通った。
そして時には二人で出かけたりもして、逢瀬を重ねた。



あの一件からしばらくして、王家主催の夜会の案内状が届く。
今まで夜会に出ることを拒み続けていたセイラも、王家主催ともなると侯爵令嬢としてよほどの理由でもない限り欠席は許されない。
どうしようかと思い悩み、ロベルトにエスコートを頼もうと思ったが

「これからしばらく忙しくなり時間を作ることが難しくなりそうだ。夜会も間に合わないかもしれない。
初めてエスコートできるチャンスを逃すのは残念だが。
どうか、私を信じて待っていてほしい。必ず迎えに来る。必ず」

ロベルトはセイラの手を取り唇を落とし、優しくセイラの髪を撫でる。
今のセイラにとってはその言葉こそが真実で、疑うべくもない。
信じろと言われなくても、自分が信じる者は目の前の人、ただ一人。

「ロベルト様を信じて、お待ちしています」

二人はお互いの想いを確かめると、絡めた指をほどいた。



夜会までの間、セイラは今までよりも少しずつ社交の場を広げていった。
茶会などにも一人で参加するようにし、今まで蔑ろにしてきた人脈の回復を図った。

茶会の席で以前からの友が声をかけてくれた。
約半年ぶりの再会に二人は喜んで話に花を咲かせた。
ふと、彼女の口から思わぬ話を聞かされる。

「ねえ、レインハルド様とアローラ様の婚約が整わないのは、あなたのせいだっていう噂が流れているのは知ってる?」
「え?何のこと?」
「やっぱり知らなかったのね。私はセイラがそんなことするはずないって思っていたけど、そんな噂が流れているのよ」

実は疑問には思っていた。あれから大分時間が経つというのに、未だ二人の婚約が結ばれたという話を耳にしない。
レインハルド親子はすぐにでも婚約を結び直したい勢いだったのに、やはり醜聞を考えて親が反対しているのだろうか?でももう自分には関係ないと考えないようにしていたのだ。

「そんな噂は聞いたことないわ。きっとお父様たちも私に気遣って耳に入れないようにしてくれていたのかもしれないわね?
でも、私のせいって言っても、二人が婚約を結び直すことを反対はしていないのよ。
すぐにでも婚約して良いって伝えてあるのに、今更だわ」

「そう・・・あのね、そのうち耳に入るだろうから言うけど。あなたが二人の婚約に反対して邪魔をしているって。
しかも高額の慰謝料請求をしているから両家とも困窮して、そのせいで婚約が後回しになってるってことらしいわ」

「なんのこと?私は慰謝料などもらっていないし。婚約に反対もしていない。
確かにミラー家に融資をした分と、父が彼に領地経営を教えていた分の費用は支払うようには言ったようだけど。
それだって婚約が無くなった今、返してもらうのが当たり前のはずよ?」

「確かにそうね。ルドー家は間違っていないと思う。
でもね、一度火のついた噂は中々消えないのよ。だからしばらくは気を付けた方が良いと思う。あの二人には関わりにならない方がいいわよ」

彼女の話に嘘はないと思う。二人のためにと思い社交界から遠のいていたのに、まったくの無駄に終わってしまった。
関わりになりたくないのはもちろんだが、下手なことに巻き込まれることだけは避けたい。
まったく頭の痛い話だと、茶会を後にした。

セイラはこのことをロベルトに手紙で相談した。
忙しくて時間が作れないというロベルトに迷惑をかけることになるのは気が引けるが、公爵家として何かしら情報が耳に入っているのでは?と考えたからだ。
ロベルトの返事によると、彼の耳にも噂は届いているらしい。今はまだ静観した方が得策だろうとのこと。ただし、この二人にはくれぐれも注意するようにとの事だった。
そして、エスコートできない事を許して欲しいと書かれ、もうすぐに方が付くから待っていてほしいと締めてあった。

セイラは待つことは嫌ではなかった。その先に二人の幸せがあるのならいくらでも待てた。
夜会に一人で参加することは心もとないが、一人で越えねばならないことだと覚悟を決め、ロベルトを信じ続けることを誓った。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

第一王子様は妹の事しか見えていないようなので、私は婚約破棄でも一向に構いませんよ?

睡蓮
恋愛
ルーザ第一王子は貴族令嬢のミラとの婚約を果たしていたが、彼は自身の妹であるマーマリアの事を盲目的に溺愛していた。それゆえに、マーマリアがミラからいじめられたという話をでっちあげてはルーザに泣きつき、ルーザはミラの事を叱責するという日々が続いていた。そんなある日、ついにルーザはミラの事を婚約破棄の上で追放することを決意する。それが自分の王国を崩壊させる第一歩になるとも知らず…。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

処理中です...