王太子殿下にお譲りします

蒼あかり

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あの茶会の後、アリーシャからお小言を十分に賜った。

「私は本当に怒っているのですよ。わかってらっしゃいます?」

そう言って頬を膨らませ、とがらせる唇を見て、それもまた可愛いと思えるようになった。
たぶん、そう、これが普通の婚約者同志のそれなんだろう。

「ずっと、ずーーーっと、孫の代まで言い続けますからね。覚悟なさってください。」

「ん?孫ができるという事はその前に子供が必要になる。君の怒りはもっともだが、こんな僕とも子を成すほど仲睦まじくしてくれると言う事で良いか?」

意地悪な笑みを浮かべると、顔を赤くしたアリーシャが

「そ、それは、そうです。夫婦になるのですから。そういうことですわね。ええ・・・」



「そうか。それは有難い。僕は愛想をつかされたかと思っていたから、自分の子を抱くことはできないかと思っていたよ。君もその気になってくれているようで良かった。
まあ、なんなら今からでも少しずつ仲の良い夫婦になるための予行練習を始めても良いと思っているんだがね?」

「ま!そ、そんなこと!なな、何を!!」

真っ赤になって目をまん丸に驚いているアリーシャの頬に「ちゅっ」っとわざとらしく音を立てて口づけをすると。
「!!!」頭から湯気が出てくるんじゃないかというほど真っ赤になり、手で顔を抑えもだえるアリーシャだった。
そんな姿を見て「ははは」と声を上げて笑うマルクスに、周りの従者たちは驚きを隠せなかった。

それから、マルクスとアリーシャは今までと打って変わって頻繁に会うようになる。
手紙のやり取りも頻繁にしているが、なぜかアルバートの執務室に届く。

「忙しくて家に帰っても寝て起きるだけだから、ここの方が時間が取れるだろ。」

そう言ってニヤニヤしながら手紙を読む姿は、かつて「氷の公爵令息」と呼ばれた面影はない。


「もうすぐ王太子として俺の誕生日の祝宴がある。夜会にはアリーシャ嬢と一緒に来るんだろう?」

「ああ、彼女にも招待状が届いたと言っていた。気を使わせたな。すまない。喜んで一緒に出席させてもらうよ。」

「それはそうと、何か欲しい物はあるか?考えておいてくれ。」

手紙を折りたたみ封筒にしまいながら問うてくるマルクスに

「そうだなぁ。アリーシャ嬢のお仲間で気立ての良い令嬢はいないか?奥手で手が出せないアルバートに紹介してやってくれないか?」

そう言ってルドルフがにやけた顔で言う。

「ちょっ。おまえ何言ってんだ?」アルバートが慌てて叫ぶが

「うん。俺も気にはなっていたけど、さすがに未来の王妃ともなると誰でも良いわけではないだろう?俺がどうこうできる話ではないからなぁ。
それより、お前はどうなんだ?それこそお前になら紹介できる令嬢はいると思うぞ。
なあ、どうだ?今度茶会を開こう。正式に招待状を出すから参加しろよ。」

「え?俺?いや、俺はいい。間に合ってる。気を使わない相手で適当にやってるから大丈夫。気持ちだけもらうわ。うん。」

「それはいいなぁ。ルド、一緒に茶会に参加しよう。俺と一緒に未来の花嫁を探そう。
お前と一緒ならきっと楽しい気がする。ダメでも良いじゃないか。
王太子にも茶のみ友達くらいいても問題ないだろう?
そうか、いやぁ楽しみだなあ。で、いつにする?」

「お前乗り気すぎ。俺は行かないからな。お前ひとりで行けよ。」

「ルド、お前は俺の護衛だろう?俺が参加ならお前も必然的に参加なんだよ。」



その後、氷の公爵令息主催の茶会が開かれたという。
王太子も参加することから王宮内で行われるその茶会は、度々行われることになる。
貴族令嬢達は招待状を手にするためにあの手この手を使って、公爵令息とその婚約者の伝手を得ようと躍起になるのである。
その茶会の招待状をもらう事は、貴族令嬢たち憧れの転売不可のプラチナチケットとなるのだった。

マルクスとアリーシャは無事に婚姻を結び、仲睦まじい姿を王太子とその護衛に見せびらかす日々が続くのだった。

それに感化さえたように二人もまた愛を手にし、三人で愛の深さと幸せの比べっこをする日が来ることになる。

愛に飢えたアルバートと、愛を信じられないルドルフ。
この二人を、愛で溶かされた氷の公爵令息マルクスが見守ることになるのは、また別のお話し。

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