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ミント篇
いざ地上へ:リズの視点
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おじさんはセイントクレア山の岸壁の中腹からダイブして来る。
私たち三人は落下地点に先回りするため、通常ルートでダンジョンから出た。
ほぼ一カ月ぶりの地上だ。人目につかないように夜出て来たが、今夜は曇り空で星も出ていなくてちょうどよかった。しかし、この街の夜は、恐ろしく治安が悪い。
ダンジョンの入り口の周りには露店が並び、軽食やアイテムなどが売られている。ダンジョンのビーストやインセクトを狩る冒険者向けの商売だ。だが、それらの露店はもう閉まっている。
露店街から少し離れたところに、酒類と簡単なつまみを売るお店があり、そこだけ営業していて、屋外に適当に置かれたテーブルで、多くの冒険者たちが酒を酌み交わしていた。
少女三人での行動は目立つため、堕天使を召喚して、引率してもらっているように見せかけているが、酒飲み中の冒険者たちからの視線が痛い。
酒飲みたちで喧騒な場所を通り過ぎて、山の方に向かっていると、堕天使が私に耳打ちした。
「リズ様、先ほどから人間の男が三人ほど我々をつけてきています」
後ろを振り返ると、隠れもしないで、三人が堂々と私たちの後をついて来ていた。
「本当にこの街は物騒ね。しばらく放っておきましょう」
私たちは山道を登り始めた。
(これって、何だか男たちを犯罪に誘っているようなものね。どんどん人目のない方に行くのだから)
少し登ったところで、案の定、男たちが行動に出た。
「おい、兄ちゃん、三人も一人占めするなんて、ずるいと思わないか?」
リーダーだろうか。スキンヘッドの男が堕天使に話しかけてきた。
アリサが振り返って、スキンヘッドの前に出た。
「おじさんたち、レベルいくつ?」
スキンヘッドがニタニタしながら、アリサに近寄って来た。
「へっ、全員レベル50台だ。大人しくしてれば、殺しはしないぞ。ちょっと痛いけどな。へっへっへ」
男は三人ともちょっと格好つけた感じの表情だった。50ってすごい、と思われているとでも思ったのだろうか。
「大人しくしなかったら、殺すってこと?」
スキンヘッドは私たちが全く怯えていないことに気付いたようだ。少し私たちを警戒し始めた。
「そんな簡単には殺さない。十分に楽しんでから殺すが、お前たち、何だか妙に落ち着いているな」
「おじさんたち、奥さんや子供さんはいるの?」
「それは安心しろ。みんな独身だから、これは不倫ではないぞ」
他の男二人が笑っている。面白いとでも思ったのだろうか。
「そう。それは嬉しいわ。じゃあ、持っているスキルを教えてくれる? 誰がお相手するか決めたいから」
スキンヘッドは少し戸惑っているが、答えることにしたようだ。
「お、おう。俺は『睡眠』で、そいつが『記憶』、あいつは変わっていて『霊視』だ」
「それぞれのスキルを簡単に説明して」
「いろいろ面倒だな。『睡眠』は質の良い睡眠をとることができるんだ。『記憶』は写真記憶ってやつだ。『霊視』は幽霊が見えるらしい。さあ、もういいだろう。決めてくれ」
「ちょっと待っててね。相談するから」
私は「睡眠」、アリサは「記憶」、サーシャが「霊視」を選択することになった。
「おじさん、私がおじさん担当です」
私はスキンヘッドのところに歩み出た。
「ちっ、ハズレくじかよ。あっちの白いのが好みなんだが……」
スキンヘッドがサーシャの方を顎で示したが、サーシャは目の前の男の首をへし折るところだった。
「誰が、ハズレくじよっ。堕天使、殺していいわよ」
スキルヘッドは、サーシャが男の首をへし折り、アリサが男を感電死させたところを見た後、恐怖の表情で私を見た。
「お、お前たち……」
堕天使がスキンヘッドを虚空から取り出した槍で突いた。
男たちを片付けたタイミングで、おじさんから思念が届いた。
(お前たち、スキルを覚えたようだが、襲われたのか? 大丈夫とは思うが、気をつけてな)
どうやら、無事にスキルは受け取れたようだ。
「おじさんから、気をつけてって、伝言が来ました」
アリサとサーシャが頷いた。
「時間を無駄にしたね。急ごう」
私たちはおじさんの落下地点に急いだ。
私たち三人は落下地点に先回りするため、通常ルートでダンジョンから出た。
ほぼ一カ月ぶりの地上だ。人目につかないように夜出て来たが、今夜は曇り空で星も出ていなくてちょうどよかった。しかし、この街の夜は、恐ろしく治安が悪い。
ダンジョンの入り口の周りには露店が並び、軽食やアイテムなどが売られている。ダンジョンのビーストやインセクトを狩る冒険者向けの商売だ。だが、それらの露店はもう閉まっている。
露店街から少し離れたところに、酒類と簡単なつまみを売るお店があり、そこだけ営業していて、屋外に適当に置かれたテーブルで、多くの冒険者たちが酒を酌み交わしていた。
少女三人での行動は目立つため、堕天使を召喚して、引率してもらっているように見せかけているが、酒飲み中の冒険者たちからの視線が痛い。
酒飲みたちで喧騒な場所を通り過ぎて、山の方に向かっていると、堕天使が私に耳打ちした。
「リズ様、先ほどから人間の男が三人ほど我々をつけてきています」
後ろを振り返ると、隠れもしないで、三人が堂々と私たちの後をついて来ていた。
「本当にこの街は物騒ね。しばらく放っておきましょう」
私たちは山道を登り始めた。
(これって、何だか男たちを犯罪に誘っているようなものね。どんどん人目のない方に行くのだから)
少し登ったところで、案の定、男たちが行動に出た。
「おい、兄ちゃん、三人も一人占めするなんて、ずるいと思わないか?」
リーダーだろうか。スキンヘッドの男が堕天使に話しかけてきた。
アリサが振り返って、スキンヘッドの前に出た。
「おじさんたち、レベルいくつ?」
スキンヘッドがニタニタしながら、アリサに近寄って来た。
「へっ、全員レベル50台だ。大人しくしてれば、殺しはしないぞ。ちょっと痛いけどな。へっへっへ」
男は三人ともちょっと格好つけた感じの表情だった。50ってすごい、と思われているとでも思ったのだろうか。
「大人しくしなかったら、殺すってこと?」
スキンヘッドは私たちが全く怯えていないことに気付いたようだ。少し私たちを警戒し始めた。
「そんな簡単には殺さない。十分に楽しんでから殺すが、お前たち、何だか妙に落ち着いているな」
「おじさんたち、奥さんや子供さんはいるの?」
「それは安心しろ。みんな独身だから、これは不倫ではないぞ」
他の男二人が笑っている。面白いとでも思ったのだろうか。
「そう。それは嬉しいわ。じゃあ、持っているスキルを教えてくれる? 誰がお相手するか決めたいから」
スキンヘッドは少し戸惑っているが、答えることにしたようだ。
「お、おう。俺は『睡眠』で、そいつが『記憶』、あいつは変わっていて『霊視』だ」
「それぞれのスキルを簡単に説明して」
「いろいろ面倒だな。『睡眠』は質の良い睡眠をとることができるんだ。『記憶』は写真記憶ってやつだ。『霊視』は幽霊が見えるらしい。さあ、もういいだろう。決めてくれ」
「ちょっと待っててね。相談するから」
私は「睡眠」、アリサは「記憶」、サーシャが「霊視」を選択することになった。
「おじさん、私がおじさん担当です」
私はスキンヘッドのところに歩み出た。
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スキンヘッドがサーシャの方を顎で示したが、サーシャは目の前の男の首をへし折るところだった。
「誰が、ハズレくじよっ。堕天使、殺していいわよ」
スキルヘッドは、サーシャが男の首をへし折り、アリサが男を感電死させたところを見た後、恐怖の表情で私を見た。
「お、お前たち……」
堕天使がスキンヘッドを虚空から取り出した槍で突いた。
男たちを片付けたタイミングで、おじさんから思念が届いた。
(お前たち、スキルを覚えたようだが、襲われたのか? 大丈夫とは思うが、気をつけてな)
どうやら、無事にスキルは受け取れたようだ。
「おじさんから、気をつけてって、伝言が来ました」
アリサとサーシャが頷いた。
「時間を無駄にしたね。急ごう」
私たちはおじさんの落下地点に急いだ。
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