31 / 55
ミント篇
サーシャの身請け
しおりを挟む
サーシャの孤児院は会社の独身寮のような感じの宿舎棟と学校のような教育棟の二つから構成されていた。孤児たちは今、教育棟で勉強したり、遊んでいたりするらしい。
「教会運営の孤児院とは随分違うのだな」
俺は素直に感心した。施設そのものは、日本の全寮制の学校と遜色ない。
リズがキョロキョロしていて、子供らしくて可愛い。アリサは民間の孤児院とのことで、こことよく似ているらしい。
俺たちは宿舎棟の面会室に案内された。伯爵のような貴族が、商品である孤児たちを直接品定めする部屋だ。貴族向けとあって、非常に豪華で、調度品にも金がかけられている。
ちなみに伯爵は医務室で安静にしている。全く歩けないらしい。手加減が足りなかったのかもしれないが、あんな男の尻の調子などどうでもよかった。
俺たちはソファに腰掛けて、院長からの説明を聞いた。
「民間の孤児院は教会の孤児院とは全くの別物です。子供たちを商品として大切に扱います」
院長にはチャームをかけてある。民間の孤児院は完全に営利目的で、商売として運営されており、商品である子供たちの価値を高めるために、しっかりとした教育を行っているらしい。
「我々は孤児を厳選して仕入れます。容姿端麗のもの、身体能力の高いもの、スキルの優れているものなどです」
「高級品を取り扱っているということか。それで、サーシャを身請けするにはどうすればいい?」
「サーシャは伯爵が購入予約をしている状態ですが、先ほどお伺いしたお話によりますと、誘拐を画策したということですので、重大な契約違反でございます。したがって、予約は無効となりますので、ボーン様にて購入が可能です」
「十五歳までは引き取れないのだろう?」
「はい、その通りですが、後ほどご説明しますが、奴隷解放された場合は、奴隷法の対象から外れますので大丈夫です」
「了解した。では、購入契約をしたい」
「購入金が必要となりますが、ランバラル伯爵からお預かりしている購入金をそのまま横流ししましょう」
「それでいいのか?」
「奴隷の死亡や失踪を除いて、返金は一切しておりませんので、大丈夫です。伯爵は誘拐が成功した場合は、失踪による返金要求をするつもりだったと思います」
「悪どいな。だが、横流しして、お前は大丈夫なのか?」
「大丈夫です。誤魔化します。それより、ボーン様こそお気をつけを。伯爵には契約違反を理由に、孤児院からはサーシャの引き渡しを拒否することになります。恐らく伯爵は直接ボーン様からサーシャを取り戻そうとすると思います」
「伯爵から守ればいいのだな。国家権力を相手にする必要はないのだな」
「そうなります。それではこちらにご署名を」
俺は書類にサインをした。このような面倒なことをするのは、国家権力を相手にしたくないからだ。
「あと、先ほど言っていた奴隷解放の手続きもお願いできるか」
「はい、私どもで提出しておきます。奴隷解放は十五歳を待つことなく受理されます」
奴隷解放の申請は、現在の奴隷所有者である孤児院が申請する。孤児院が奴隷のサーシャを保有している状態から、自由民のサーシャの保護者となり、十五歳でサーシャが成人したときに、サーシャは晴れて普通の市民となる訳だ。
奴隷では聖女にはなれないため、サーシャの奴隷解放は早めに行いたかった。
これでサーシャは自由を約束された訳だが、このときのサーシャの嬉しそうな笑顔を、俺は生涯忘れることはないだろう。
「教会運営の孤児院とは随分違うのだな」
俺は素直に感心した。施設そのものは、日本の全寮制の学校と遜色ない。
リズがキョロキョロしていて、子供らしくて可愛い。アリサは民間の孤児院とのことで、こことよく似ているらしい。
俺たちは宿舎棟の面会室に案内された。伯爵のような貴族が、商品である孤児たちを直接品定めする部屋だ。貴族向けとあって、非常に豪華で、調度品にも金がかけられている。
ちなみに伯爵は医務室で安静にしている。全く歩けないらしい。手加減が足りなかったのかもしれないが、あんな男の尻の調子などどうでもよかった。
俺たちはソファに腰掛けて、院長からの説明を聞いた。
「民間の孤児院は教会の孤児院とは全くの別物です。子供たちを商品として大切に扱います」
院長にはチャームをかけてある。民間の孤児院は完全に営利目的で、商売として運営されており、商品である子供たちの価値を高めるために、しっかりとした教育を行っているらしい。
「我々は孤児を厳選して仕入れます。容姿端麗のもの、身体能力の高いもの、スキルの優れているものなどです」
「高級品を取り扱っているということか。それで、サーシャを身請けするにはどうすればいい?」
「サーシャは伯爵が購入予約をしている状態ですが、先ほどお伺いしたお話によりますと、誘拐を画策したということですので、重大な契約違反でございます。したがって、予約は無効となりますので、ボーン様にて購入が可能です」
「十五歳までは引き取れないのだろう?」
「はい、その通りですが、後ほどご説明しますが、奴隷解放された場合は、奴隷法の対象から外れますので大丈夫です」
「了解した。では、購入契約をしたい」
「購入金が必要となりますが、ランバラル伯爵からお預かりしている購入金をそのまま横流ししましょう」
「それでいいのか?」
「奴隷の死亡や失踪を除いて、返金は一切しておりませんので、大丈夫です。伯爵は誘拐が成功した場合は、失踪による返金要求をするつもりだったと思います」
「悪どいな。だが、横流しして、お前は大丈夫なのか?」
「大丈夫です。誤魔化します。それより、ボーン様こそお気をつけを。伯爵には契約違反を理由に、孤児院からはサーシャの引き渡しを拒否することになります。恐らく伯爵は直接ボーン様からサーシャを取り戻そうとすると思います」
「伯爵から守ればいいのだな。国家権力を相手にする必要はないのだな」
「そうなります。それではこちらにご署名を」
俺は書類にサインをした。このような面倒なことをするのは、国家権力を相手にしたくないからだ。
「あと、先ほど言っていた奴隷解放の手続きもお願いできるか」
「はい、私どもで提出しておきます。奴隷解放は十五歳を待つことなく受理されます」
奴隷解放の申請は、現在の奴隷所有者である孤児院が申請する。孤児院が奴隷のサーシャを保有している状態から、自由民のサーシャの保護者となり、十五歳でサーシャが成人したときに、サーシャは晴れて普通の市民となる訳だ。
奴隷では聖女にはなれないため、サーシャの奴隷解放は早めに行いたかった。
これでサーシャは自由を約束された訳だが、このときのサーシャの嬉しそうな笑顔を、俺は生涯忘れることはないだろう。
1
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる